いたづら秋子さん エッチな下着です(前編)
F.coolです。
もうタイトル通りです。
エッチ路線はそろそろ終わりにしたいものです。
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そろそろ寒さも厳しくなってきた十一月の午後――
いつもの居間から見える風景にも、緑は消え、段々と冬めいて寂しげな雰囲気が漂います。
この間初雪も降ったことですし、今年の冬も寒くなりそうです。
名雪の強い要望で物置から引っ張り出されたおこたに入りながら、
私は婦人雑誌をぺらぺらと読んでいます。
向かいでは祐一さんが、何でしょう、難しい小説を読んでいるようです。
私の左側には名雪もいるのですが、おこたのぬくぬくとした暖気に包まれて、
――いえ、説明は不用ですね。
うふふ、そのぽんやりした寝顔は、見るだけで微笑みを誘います。
さて、私の読んでいる雑誌ですが、
この冬の新しいスタイル特集――そんな見出しにつられて購入したものですが、
ブランドもののコートなど眺めていると、手が届かないものとは知りながら、
ついつい欲しくなってしまいます。
このコート、シックで素敵ね……ハンドバッグも格好良いし……
次のページは……と……
ぺら
『厚着をする冬だからこそ、中身におしゃれをしたい――新作モデルランジェリー』
きゃぁ
ぱたん
はぁ はぁ はぁ
な なな なにぬねの
えっと び びっくりしました 突然 こんな その
思わず雑誌を閉じてしまいました
「……秋子さん どうしたんですか」
祐一さんが小説から顔を上げて不審気に私の方を伺います。
「え あの 何でもありません」
祐一さんは少しいぶかしげな表情をしてましたが、すぐに本に集中し始めました。
……それにしても
こんないやらしい特集をするなんて
いえ
これはあくまでファッションであって そう言った感情を持ってはいけないのではないでしょうか
ええ そうね きっとそうそう
ファッション ファッションなのよ
だから私も 見て良いのよ 見て良いのよね
よぅし
ドキドキしながら 再び先ほどのページを開きます
きゃぁ……
す 凄いです
最近の下着は こんなに綺麗なものまで
でもこれくらいなら私の持ってるクリムゾンレッドの方が
違います
はぁ はぁ
むぅぅっ
思わず見入ってしまいます
それにしても 段々と 露出が激しい下着になって行きますね
クリムゾンレッドでも敵いませ
違いますよ
きゃあ このブラなんて 全体がレースで その あの これでは 先端部分が 見えて
何を言わせるんですか
はふぅ 激しいです
ひう これなんて その 穴が はきゃ これ以上 言えません
はぁ はぁ 凄いわぁ……
ピンポーン
「ひや!?」
びくっ
「……あれ お客さんかな」
はぁ はぁ ドキドキ
突然のインターフォン
びっくりしちゃいました
「俺、行ってきましょうか?」
と、祐一さんが身を乗り出します
「いえ、私が行ってきます」
そうね おこたから出て 少しでもこの火照った肌を鎮めないと
私 私 ヘンになっちゃいます
はふぁ
*
「突然の訪問、大変失礼いたします――」
玄関に行ってみると、そこには一見してセールスマンと分かる、少々胡散臭そうな男性が立っていました。
彼は私が出てくると深く一礼し、前口上を喋り始めました。
「私、エイチアイディエーと言う会社の者ですが、貴女様の様な綺麗な若奥様に喜んでいただけるような品物を――」
綺麗とか、若奥様とか、この手の訪問販売にはありがちな殺し文句ですね。
騙されないように、毅然とした態度を……
綺麗…… 若奥様……
へにゃ
ダメですっ 頬をゆるませちゃダメですっ
「……それで、一体どういった商品を取り扱っていらっしゃるんですか?」
私が気を取り直してそう訪ねると、その人は再び丁寧にお辞儀をして、
「――これは失礼いたしました。百聞は一見に如かずとも申しますし、まずはご覧にいれましょう」
そう言って傍らの鞄を開けると、中から出てきたのは……
ふらっ
一瞬意識が遠のきました
そんな そんな あの その
その中に入っていたのは いわゆる その 大人のおもちゃ ……きゃっ
具体的に言うと たとえば
たとえばはいりません
いやぁ そんな えっちなセールスマンさんだなんて
大人のおもちゃの実演販売
実演と言うことは 実際に試して
違いますっ そんなっ やめてください 私には大事な家族が ああー
「……あっ? ああっ、大変失礼いたしました、こちらはまた別の商品で御座いまして」
あたふたとその鞄をしめるセールスマンさん
ああん もっと見せてくだ
違います
「失礼いたしました、正しくはこちらを……」
と、新たに開かれた鞄の中には、沢山の本が並んでいました
「こうして玄関先に居座られていてはお邪魔でしょう、総合ファッションのカタログをお渡ししますので」
そう言って彼は私にその中の冊子を手渡し、
「この中からお好きな商品を、お電話でご注文下さいませ。それでは、失礼いたします」
間違えて大人のおもちゃを見せたことが恥ずかしかったのか、それとも単にそういう性格なのか、
セールスマンさんはそれだけを言い残すと、さっさと帰っていってしまいました。
それにしても このカタログ
まさか 大人のおもちゃのカタログではないでしょうね
ぱらぱら
あら 普通の婦人服です
ほっ
ちょっとがっかり してませんったら
とりあえず 居間に戻って 見てみましょうか
*
ぱらぱら
あら うん これは
先ほどの雑誌では値段までは書いてませんでしたが
このカタログならお値段がいかほどか明瞭ですので 幾分 現実味が増してきたように思えます
でもやっぱり 割高なのには変わりありませんが
やっぱりバーゲン品で
はっ その 私 いやです バーゲン品なんか買ってません
はぁ それにしても どの服も素敵で ため息が出ちゃいます
ぱらぱら
きゃ また
ランジェリーのカタログです
流行っているんでしょうか
最近は 下着にも凝る風潮が
はぁ はぁ
私はいつともしれず またも下着のカタログに見入っていました
「お母さん 何見てるの わ」
ひぅ 名雪っ 起きたかと思ったら いきなり覗き込まないで
「きゃあ お母さん えっちだよ〜」
その発言に祐一さんが飲みかけのお茶をむせこぼしました
「エッチな下着だよ〜」
顔を真っ赤にしてぱたぱた暴れる名雪
うふふ 名雪もまだまだ子供ね
え あ 別にその 私がもうオバサンだなんてことじゃ
その そう言うことに 鈍感になってるとか
枯れ果ててるとか いやぁ いやです
違います
落ち着きましょう 私
「名雪、落ち着いて」
ついでに名雪も押さえましょう
「びっくりしたよ〜」
私もです
とりあえず、私たち二人は平静を取り戻しました
小説を読んでるはずの祐一さんが 心なしか目がうつろで顔が真っ赤なのですが
あの 祐一さん なにかイケナイ想像をしてませんか
「ねぇ お母さん」
あら
「なにかしら」
私は名雪ににっこり微笑みます
「お母さんはこういう下着 欲しいの?」
ガツンっ
私と祐一さんは同時にテーブルに頭をぶつけました
な なな なんてこと言うんですか 名雪
祐一さんもっ 盗み聞きするなんて酷いですっ
「そ そんなことないわよ」
「でも 欲しそうな目つきだったよ」
う 名雪 酷いです
私 そんな 欲求不満……じゃ……
え あ その ああん 否定しきれな
……違います
「あ そーか」
名雪は何か一人納得していました
何でしょうか
興味の対象がそれたのなら嬉しいのですが
「お母さん もっと凄い下着持ってるから いらないんだよね」
どごんっ
テーブルが痛いです…… ね 祐一さん……
*
夕食を食べ終え 自室に戻ってきた私は
昼間の名雪の言葉を反芻していました
私 そんなエッチな下着を持っているようなお母さんに見えるのかしら
いやです そんな 私が周囲に色気を振りまいてる妖女だなんて
あら でも なんだか 男を惑わす妖婦なんて素敵
違いますよぉ
それにしても このカタログに載っていた下着の数々
ぺら 再び私はそのページを開きます
エッチ と言う点を抜きにしてみると 細やかなレースのあしらいなど とっても綺麗で
有る意味 そのごく限られた布地の中で表現された芸術品 と呼べるのかもしれません
その 何というか 殿方を誘うようなデザインも エロスと言う名のアートであって
……私 何か無理に理由付けしてませんか
それはそれとして
はぁ 私も こういう下着 一着くらい
……一着くらい?
あらっ? ひょっとして
私は有ることに思い当たり、タンスの中を探索します。
ええと、これでもない、あれでもない……
あっ
こ これは
み 見つけてしまいました
やっぱりあったんですね
若い頃に興味本位で買った その……
縁にあしらわれたフリル――
大事なところが見えてしまいそうなほど薄い布地――
そしてまるで締め付けるかのごとく小さく細いデザイン――
漆黒に彩られた 扇情的な――
……エッチな下着がっ
(続く)
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プロットが破綻してますが勘弁してくださいm(_ _)m
ではまた、続きで
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