いたづら秋子さん 正体は秘密です(前編)


お茶目な性格の秋子さんのシリーズ。
今回の秋子さんは、ちょっと足りないです(^^;

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 少々蒸し暑い初夏の午後。
 私は、お夕飯の用意をととのえ、汗を拭いながら家事に勤しみます。

 外は遥か遠くの空までガラスのように透き通り、湿度は高くてもどこか清々しい印象を与えてくれます。

 ……と、あら?

 ふと気がつくと、居間から聞こえる、僅かなざわめき。

 何かしら。
 祐一さんも名雪も留守なのに、変ね……
 不審に思い、様子を伺ってみると、居間のテレビがつけっぱなしになっていました。

 あらあら。
 多分、祐一さんでしょうか。
 出掛けるときに、ついつい消すのを失念していたのでしょう。

 ふふ、そそかっしいわね。

 私は穏やかに微笑みながら、テレビのスイッチを消そうとします。

 その時。


 どかーーーん!


「きゃぁっ!?」

 突然、近くから爆発音がしました。

 いやぁ 何事ですか
 びっくりです

 まさかこの近辺にテロリストが潜伏していたなんて、私、気づきませんでした

 私は頭を抱えてしゃがみ込み、ふるふると震えます。

 怖い 怖いです

 ぶるぶる

 ちら

 木々は風に揺れています。
 小鳥は楽しそうにさえずります。
 ……辺りは、何事も無かったかのように平和です。


 あら?


 ……不思議です。
 一体、何が起きたのでしょうか。

 そしてまたテレビに目をやると、そこではけばけばしい怪物が宇宙服の様なものを着込んだ人と激しい格闘を演じていました。

 あら、これは懐かしい、子供向けの特撮番組ですね。

 まだやってたんですね……

 ……あら?

 と、すると。

 ひょっとして、さっきの爆発音は、この番組の……

 まぁ、私ったら……

 こんな事で取り乱してしまって、とっても…… 恥ずかしいです

 やんやん

 私は急に体温の上がった頬を両手でぴとっと押さえます。


 それにしても。

 懐かしいですね、この手の番組も。

 うふふ。

 意外に思われるかも知れませんが、私は子供の頃、この手の番組がだぁいすきだったのです。

 それにしても、最近の特撮は手が凝ってますね……

 演出も、ずいぶん派手になっています。

 さっきの爆発音も、ずいぶんリアルでした。

 リアルでした。

 リアルだったんです。

 だから、私がびっくりしたのもしょうがなかったんです。

 信じて下さいっ!

 ……あ、危ない!

 ヒーローの一人が、やられそうになっています。

 あ、あ、あー……

 ふぅ、間一髪でした。

 あ、またピンチですか!?

 だめよっ、そうっ、そこっ、ええいっ、やったーっ!


 ……何を私は見入ってるんでしょうか。

 はぁ…… 思わず、手に汗握りしめ、熱くなってしまいました。

 でも、でもでも。

 久しぶりに見たら、何だか身体が……

 うふふ。昔、みんなでヒーローごっこをしたときの事を思い出します。

 正義の味方は、永遠に不滅なんですね。

 昔は、囚われのヒロイン役しかやらせて貰えませんでしたが、今なら……


 うん、決めました。

 今日から私は、正義の味方です!

 世界の平和を守るため……

 大きすぎます……

 じゃあ、日本の平和を……

 ううん、まだ大きいです。

 うーんと
 うーんと

 あ 決めました

「家庭の平和を守るため、私は頑張ります!」

 うん 実に私らしくて 素敵なヒーローですね

 さぁ 悪の手先は何処ですか

 きょろきょろ
 きょときょと

 ああん おうちは今日も平和です

 つまんないです

 家庭内暴力とかないかしら
 それはそれで困ります

 どうしましょう

 あ
 ぴーん

 ひらめきました

 うふふ、とってもいい方法です


 と、私は一目散に二階に駆け上がり……

 ……るんるん気分で、手にあるものを抱えて戻ってきました

 これを自分のお部屋に隠して

 ごそごそ

 はい おっけーです

 準備完了

 でも それから後は暇です

 とりあえず、夜まで待ちましょう

 それまで、お昼寝でもしましょうか

 正義の味方にも休息は必要です

 ソファに横たわって、ふああ

 お休みなさい







「ただいまー」

 元気な声

 ぐしぐし 重い瞼を擦って 私は起きあがります

「あら名雪 お帰りなしゃい」

 あら 変な声

「……お母さん、お昼寝してたの?」

「うん しょうなの」

 んみゅ まだねむいれす

「祐一が先に帰ってるはずだけど」

「え?」

 おかしいですね

 私は祐一さんを見てません

 もう、帰ってきてたのなら起こしてくれてもいいじゃないですか

 あら?

 気がつくと 私の上には暖かな毛布が掛かっていました

 おかしいですね

 私 毛布なんか掛けましたっけ

 ……あ

 ひょっとして 祐一さんが掛けてくれたのかしら

 私を起こさないように そぉっと……

 ううん もう 祐一さんったら

 とっても嬉しいです

「……お母さん、何くねくねしてるの」

 ……気がつくと、名雪に不審な目で見られてました

「こほん」

 私は気まずそうに咳払いをします。

「お母さん、私、おなかすいたよ」

「はいはい 用意は出来てますよ」

「わーい」

 そう言うと名雪は、荷物を置きにとてとてと二階へ向かいました

 ……ふぅ、とりあえず第一段階は成功ですね……







 夕食後、私が一息ついていると。

 二階から、なにやら騒がしい声が聞こえてきました。

 そろそろ、正義の味方の出番かしら。

 では、早速…… あ、だめです

 正義の味方たるもの、正体がばれてはいけません。

 私もうかつですね

 私は急いで自分の部屋に戻りました。

 まずは、正体がばれないように、そうですね、目を隠しましょう。

 目隠し
 違います。
 それじゃ変態さんです。

 たまにはそう言うプレイも
 もっと違います。

 えっと、その……

 あ

 そう言えば、メガネがありました。

 老眼鏡
 違いますっ!

 学生の頃に愛用していた、近視用のメガネです。

 かちゃり 装着

 うるとらあいですぱーく、です。

 しかし、メガネを掛けるのも久しぶりですね

 それから、髪の毛も解いて…… 

 んしょ んしょ

 ふわり 広がる髪の毛

 うふふ まるで学生時代にタイムスリップしたようです

 鏡の前で くるり 一回転

 まだまだ私も若いです

『メガネがきゅーとなアキちゃん』と呼ばれていた時代が懐かしいです


 どすん ばたん


 あ いけない

 二階の騒ぎを忘れてました

 後は、とりあえず防災用のヘルメットもかぶって……

 さっき二階から持ってきたものを小脇に抱えて、

 準備完了、正義の味方 発進です!




(後編へ続く)

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ううむ、さっぱり面白くないですね……
そろそろ限界でしょうか。

あ、それと、今回も海原玲さんからネタの提供を戴きました。
深く感謝いたします。

それでは、また。

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