加賀さんは鼻フックしてオナニーするようです

 加賀は自室の棚に飾ってあった大型のオナホールをさりげなく手に取った。
 お茶を飲むために湯飲みを持つときのような、まったく迷いのない動作だった。
 シャワーを浴びたばかりの彼女は、モデルもかくやと思うほどの均整の取れた八頭身の肉体を見せびらかし、温かそうな湯気だけをまとった姿のまま、赤いオナホールを手に持って、続いて洋服箪笥へと向かう。
「そうね。今日はこれにしましょう」
 寝間着に着替えるのかと思いきや、彼女が手に取った衣服は薄い布、否、フリル付きの蒼い紐と呼んでも差し支えないような代物であった。まだこの段階では、それが如何なる衣服であるのか、見当も付かない。
 彼女はこれまたためらいもなく、その紐を慣れた手つきで身につけ始める。しゅるしゅるとした衣擦れの音も僅かに、瞬く間に彼女の肢体は扇情的な下着に包まれた。
 便宜上ブラジャーと呼ぶべきパーツは、大きなハート型を二つかたどっており、加賀の濃桃色の乳首をいやらしく目立たせる。少々サイズが小さめであるのか、乳房が圧迫されて歪んでおり、見るものの思考を繁殖欲求へと誘うような、ひたすら下品な印象だ。
 ショーツの部分に至っては四本の紐しか無く――足を通してしまえば、股間を隠すものは一切無い、といった有様だった。
 その、股間――股間に生えている男根を、加賀はいつしか大きく隆起させていた。血管が張り詰めて脈打ち、先端からはとろりと蜜の雫が滴っている。その鉄面皮からは窺い知れないが、淫靡な衣装を身に纏った自分に、彼女は大いに興奮しているのだ。
「これでよし」
 大きな姿見の前に立ち、自分の格好を確認する加賀。彼女の肉体は、最強の正規空母の二つ名にふさわしく、ほどよく筋肉質で引き締まっている。そのせいで逆に、大きな乳房の描くまろやかな曲線が際だって魅力的だ。しかし今や、その触れることすらためらわれるような美しい身体は、はしたない衣装とだらしない男根のによって全てが台無しになってしまっていた。否――そのアンバランスさが、途方もない淫らさを醸し出していた、と言い換えた方が適切であろう。
「さて」
 淫靡極まりない肉体の上に乗った、無口無表情冷静沈着な顔が僅かに動き、次の行動への契機となる言葉を発する。
 彼女はオナホールを手に取り、蓋を開ける。新品であったのか、中からどろぉりとした透明のローションが垂れ落ちてきた。
「ん」
 それを見て慌てたのか、それとも気にしていなかったのかは分からないが――彼女は短く息継ぎをすると、その入り口を自らのいきり立った剛直の先端にあてがった。
 そして左手でオナホールの先端にある空気穴のシールを剥がす――と、ぬぶぬぶと湿った音を立てて、ビンと張り詰めていた彼女の逸物はホールの中へ飲み込まれていった。
 すると同時に、加賀は身体を震わせて口を開く。
「ん。お。んぬほおぉ」
 これがあの艦隊のクールビューティ、加賀があげた声であろうか。
 姿見に映った彼女の顔は醜く歪み――口は「ほ」の字に固定され、目は僅かだが喜悦に緩み、鼻は大きく開いている。
「冷たくて心地良いわ」
 そう呟いて、彼女は二度三度とオナホールを前後させる。感触を確かめるような、ゆったりした動作だ。
「これは、当たりね」
 オナホールの使い心地のことを指しているのか――ともかく彼女は、しっかりとオナホールを掴み直し、本格的に前後運動を開始する。
「ほ。オ゛。お゛っ。ほっ。おおぉっ。お゛ほっ。お゛っ」
 彼女の声帯から聞くに耐えない喘ぎ声が漏れ出でる。その間も彼女の視線は姿見に映る自分の顔に固定されており、加賀が、自分の痴態を――身も蓋もない言い方をすれば、オカズにしていることは明白であった。とはいえ、彼女が殊更に自己愛が強い性質というわけではなさそうだ。どちらかと言えば、はしたない真似をしている自分の状況に性的興奮を覚えるのだろう。
 ローションまみれの人口膣穴は、彼女の熱く滾った剛直に摩擦されて濁った水音を立てる。
 ずっぽ。ずっぽ。ぶっぽ。ぶっぽ。ぐっぽ。ぐっぽ。
「ふ。うふ。お゛。お゛オ゛オ゛。ほぐっ。う゛っ。う゛う゛っ」
 加賀は、くぐもった声を上げながら、腕を筋張らせて、オナホールをまるで親の仇かのように自分の男根に叩きつける。
「お゛う。ふう。う、オ゛オ゛、お゛、オ゛オ゛。チンポに来ました。ん、あ゛。あ゛あ゛う、ふう」
 時折、最奥まで男根を突き入れたまま、ぐりぐりとホールを回転させてみっともなく刺激を貪っている。感情の表れが乏しいきらいはあるが、それは十二分に派手で下品な自慰であった。
「そろそろ、これも必要ね」
 口から軽く舌を出したしどけない表情のまま、彼女は手を伸ばし、化粧台の上から何やら金属と紐で構成された器具を掴んだ。彼女はそれを左手で持ち、二つに分かれた金属部分を自分の鼻の穴の中に入れると――紐を掴み、思い切り上に引っ張る。
 見事、加賀の鼻の穴は、器具――鼻フックによって無惨に引き上げられ、情けない豚鼻姿を晒すこととなる。
「あああ。ああ」
 鼻フックのせいで少し上向きになってしまった首はそのままに、彼女は目線を正面に向け、姿見の自分の顔を確認する。途端に、彼女の瞳が恍惚に輝いたのは気のせいだったろうか。
「う゛っ。ふうっ。んうっ。ふうっ。ふうっ。ふぐっ、ぐっ、ぐうっ、ぐ。ぐ」
 やや苦しそうに呼吸を繰り返しながら、彼女はホールを前後させる。ぬらりとしたローションが溢れて滴り、陰影の濃い、白くたっぷりとした陰嚢に絡まり落ちる。
 やがて彼女はしばし動きを止めて、考え事をするように目を少し動かすと、やがてこう言った。
「私は誇り高い一航戦の加賀。こんな辱めには屈したりしない」
 真顔である。そして鼻フックをより強く引き、鼻息を漏らす。
 そしてまた少し間を置いて、
「こんな情けない豚鼻姿では、一航戦の誇りも完全に失ってしまったわ」
 足を少し開き、オナホールを固定したまま、腰を小刻みに振り始める。
「誰よりも浅ましく品性の低劣な淫乱メス豚であることが、一航戦の誇り」
 ――詰まるところ彼女は、より自慰行為に没入するために、自分の置かれているシチュエーションを思いつくまま代わる代わる口にしているのだ。彼女の無表情さも相まって、他人から見ればあまりにも奇妙に見える光景ではあったが。
 さて今現在の彼女は、捕らえられて辱めを受ける女戦士であろうか、媚態と共に男根を振りたくる淫奴であろうか。ともかく加賀は、その鍛えられた肉体を大きくくねらせ、手にした偽女陰を相手に豚鼻姿で懸命に性交を開始した。
「ああ。はあ。ああ。醜い。情けない。はしたない。恥ずかしい」
 そう自虐しつつも腰の動きは全身を波打たせるようなそれから尻を小さく前後に揺らすような、性欲を貪るのにより適した動きに近づいていき、ぐちゃぐちゃぐぽぐぽとローションの粘音を響き渡らせる。膝をやや曲げて開かれた脚は如何にも不格好で、うねる腰つきのなまめかしさとあわせて蠱惑的なダンスを踊っているかのようであった。
「はあ。へっ。はあっ。お゛っ。お゛ほ。ほっ。おお。オ゛っ、お、オ゛。お」
 フリル紐下着の尻をリズミカルに揺らして、加賀は倒錯的な自慰行為に耽る。くいくいと定期的に鼻フックを引っ張ることで、自らの浅ましさを自覚し、興奮のスパイスとしているのだろうか。大きく開かれたままの口からは舌を伝って涎が糸を引き、あろうことか鼻水まで垂らしている。
 それを気にするそぶりもなく――むしろ気にすることで発情しているのか。
「あ゛ぁあ゛」
 嬉しそうに彼女は一声鳴き、余計な思考を麻痺させて目を濁らせ、腰の前後運動に没頭する。
 ずぽん。ずぽん。ぐぽん。ぐぽん。ぶぽん。ぶぽん。
 オナホールが壊れてしまうのではないかと思える程の勢いで腰を叩きつける加賀。絶頂が近いのか、ホールを持つ手が時折震えている。
「オ゛う。うう。ぶうっ。ぶひ。ぶひい。ぶっひっ。ぶひ。ふご、ふごごごっ。ぶひっ、ぶひ。ぷぎい」
 ついに高らかに鼻を鳴らして豚声まで披露しだす加賀。
「ぶひふっ。ぶっひぃ。ぶふっ、ふご。ふごっ。おおお。ああ。ちんぽ。チンポ。ぶぎっ、チンポ豚。豚。豚っ。金玉。ああ、ああ、精子。精子。一航戦。ちんぽ。ぶひい。ぶふふ、ふごごっ。ちんぽ」
 腰を振り、舌を躍らせながら、支離滅裂な言葉を発し始める。他人に聞かせるわけではないのだから、わざわざ意味を組み立てる必要などないのだろう。発した声と言葉を耳で聞いて睾丸で解釈して発奮する。加賀の自慰とはそういうものだった。
「んほ。んほお゛。うっ。う、ぐ、あ゛。あ゛あ゛っ、あ゛。あ゛。ぶひっ。う。あ゛。出る。出ます。お゛。ちんぽが。出ます。あ゛ぁ、ぁ」
 加賀の動きが止まった。
 と同時に、どぶり、ぼぶり、と例えようもなく汚らしい、くぐもった濁音が聞こえる。硬く分厚いホールの中からも音が聞こえるほど、猛烈に射精しているのだ。
 重そうな陰嚢を収縮させ、加賀はややのけぞり気味になって絶頂している。その間も、鼻フックは強く引っ張られたままであり、鼻穴を大きく拡げながら加賀は変態的な射精快感を享受していた。
「ふう。お゛。う、ふ、ぶひ。ぶひい。う、あ゛。豚。ぶひい。おお、お。チンポ。汁。汁。お。はあ。ああ。汁。おお」
 オナホールを小刻みに前後させて、射精後の敏感な肉竿を念入りに扱きあげる。それは傍目からも意地汚く見え――
「チンポスケベ。チンポスケベ。チンポスケベ」
 自らにぴったりの呼称を口にすることで尚更快感を貪る。その行為からは、加賀の隠し持った、ギトギトに煮詰まった性欲の濃さを思い知らされる。
「ふうっ。うう、う。う、ふう、う、う、うう。う。う、う」
 声を小さくしながら、ようやく彼女は長い長い射精を終えた。ゆっくりとオナホールを抜き、すぐに縦にする。そうしなければ、彼女の排泄した黄濁の汚汁が見境無くこぼれ落ちてしまうからだろう。
「ヤりました」
 ほこほこと濁った湯気を立てるオナホールを眺めて、加賀は満足そうに呟く。いつしか鼻フックも外しており、少々鼻穴が広がって見える以外は、普段のクールな美人顔に戻っていた。
「射精は大事」
 赤らんで充血した彼女の男根はローションに濡れてぬらぬらと妖しく輝いており、未だ力強く屹立して震えている。ひょっとしたらこの後、連戦へと移行する気なのかも知れない。
「赤城さん」
 あっ。
 はい。気づいてましたか。
「見られていると、気が散るから」
 そうですよね、ごめんなさい。それでは、おやすみなさい。
「あの」
 おやすみなさい。
「いえ、なんでもありません。おやすみなさい」
 と言うわけで私は、加賀さんに怒られる前に誤魔化して去ることにした。
 ああ、それにしても、凄いものを見てしまったわ。これは私も、負けていられませんね。


(終わり)