とりとめもない淫夢 イバラ その2
「双月堂家の跡継ぎたる者、国際交流もおろそかにしてはなりません」
生徒会室でイバラと六花が紅茶を飲みながら楽しく談笑しているところに突然水女が現れ、藪から棒にそんなことを言ったものだから二人はそれはもう唖然とした。
ぽけっと口を開けたまま、イバラは水女に問いかける。
「あの……まあ……もっともだとは思いますけれど、いきなり何をおっしゃるの?」
「と言うわけで、アメリカからの留学生、フローレンスさんです。親交を深めてくださいますよう」
「ヘーイ! ユーがイバラね! ないすとぅみーちゅぅ♪」
「な……ないすとぅーみーちゅー……」
イバラと六花が事態を飲み込む前に、水女の後ろからブロンドヘアの派手な美少女が現れたものだから、二人はすっかり気圧されて、何やら理不尽な場の雰囲気に流されるままとなってしまった。
ボリュームたっぷりの金髪は外向きにカールし、頬にはうっすらとソバカスが残っている。
目はぱっちりと大きく、ブルーの瞳は吸い込まれそうなほどに深く鮮やかだった。
しかし何よりも目を引くのは、堂々と丸出しにされたその巨根である。ギン、と反り立ったそれは実に1メートルほどもあろうか、太さもそれに見合った丸太のような代物であり、まさに圧巻であった。
張り詰めた血管が、欧米人特有の白い肌に浮き上がる様はグロテスクでさえあり、陰嚢もまた地面に擦れるかと言うほど垂れ下がっている。
余りの重量故に巨根の先端は垂れ下がり気味であり、それがさらに淫猥な雰囲気を作り上げていた。
「す……すごい、わぁ……」
六花は、両手を口に当てて、目を見開いたまま無意識に感嘆の声を上げてしまう。
おおよそ人間離れした巨根を持つ六花であるが、さすがにフローレンスのものと比べると、だいぶ見劣りしてしまう。イバラのような常識サイズの男根であれば、なおさら、だ。
「それではごゆっくり」
さも、自分の役目はこれで終わったと言わんばかりに、水女は場の面々にそれぞれ頭を下げると、足早に部屋から出て行ってしまった。
残されたイバラと六花は、この珍客をどう扱ったものかと、顔を見合わせてあわあわと戸惑うばかりであった。
しかし当のフローレンスはそんなことを気にも留めていないようで、チューインガムを噛みながら部屋の様子を物珍しげに眺めている。
二人はそんなフローレンスの様子をただじっと眺めているばかりであったが、やがてフローレンスが巨根をぶるんと揺らしながらこちらに振り向くと、緊張して思わずぴしっと直立不動の姿勢を取ってしまう。
「ヘーイ、イバラ?」
「な、なんですの?」
まるで十年来の友人のように気さくに話しかけてくるフローレンス。呼び捨てにされることに慣れていないイバラは、その態度に少しムッとするが、なるべく平静を装って答えた。
「ユーはブルジョワジーだと言うのにご挨拶がなってないね? 初対面の相手と会うときは、自分のペニスを見せるものよ? これ、アメリカでは常識ね」
「はぁ?」
今度こそイバラは、大げさに顔をしかめて面食らった。そんな常識、聞いたこともない。
大体、初対面の相手にいきなり自分の秘部をさらけ出すなど、正気の行為ではない。いくら国際交流をしろと言われたところで、そんなことに気軽に従えるはずもない……の、だが。
「ほうら、恥ずかしがってないで見せてよ♪ イバラのペニス……きっと、とってもビッグね♪」
突然、フローレンスがイバラの股間に手を差し込む。余りに唐突な動作だったものだから、イバラも抵抗できず、しっかりと男根を彼女の手に握られてしまった。
「や、やめてくださいましっ! 何をなさいますのっ……おおっ
んほおおぉぉ
」
しかも、フローレンスがそのままやわやわと手を揉み動かし始めたものだから、イバラは完全に脱力してしまう。何故かいつも以上に敏感に感じてしまう自分の男根に違和感を覚えながらも、イバラは甘い声を発して股間揉みの快楽に身悶えた。
「あ……や、ちょ……イバラさん、いやがって、そのぉ……」
そして六花も、何とか止めたいという意志はあるようだが、生来の気の弱さから全くそれを表に出せず、ただ不安げな面持ちでことの成り行きを見守るだけであった。
「んふ
段々大きくなってきたね♪ 日本人は膨張力が凄いって聞くよ、どれだけ大きくなるのかなぁ?」
「おひっ
おおおぉひ
やめ、おやめくださいましいぃ
ひいいぃぃっ
どうしてこんな、オタマ揉みだけで感じてしまいますのおおぉ
お、オボッキ
オボッキしてしまいます、わあぁっ
」
フローレンスに刺激され、イバラの男根はむくむくと膨らんでゆく。そしてとうとう、その切っ先がショーツからはみ出して、スカートをひらりと舞い上げて露出してしまった。
「ひいいぃっ! わ、わたくしのオチンボがっ
ひぃ、いや
恥ずかしいですわあっ……
」
「出てきたよ、イバラ
まだとってもキュートね
んっふふふふ
」
目を細めて楽しそうに呟き、フローレンスは続いて竿部分を握り、こしゅ、こしゅと上下に摩擦し始めた。スタンダードな手淫ではあるが、それだけに、イバラに避けようのない甘美な感覚を与える。
羞恥と快感に喘ぎながら、イバラは目を固く閉じてフローレンスの愛撫に身をよじる。しかし、楽しげに男根をまさぐっていたフローレンスが手を止めると、イバラは恐る恐る目を開けた。
にじんだ涙にぼやけた視界の中では、フローレンスが不思議そうな表情でこちらを見つめていた。
「イバラ? イバラのペニス、いつエレクトするの? 硬くはなったけど、いつまでたっても大きくならないよ?」
フローレンスの無邪気な態度に、イバラは歯を食いしばる。この化け物じみたオチンボと張り合えるほどのものなど最初から持っておりませんわ、と言う喉まで出かかった言葉を飲み込んで、きぃ、とだけ唸った。
自分の男根の大きさには満足していたイバラであったが、勃起状態を見られたあげくにまだ大きくならないのとまで言われると、さすがに頭に血が上る。誇りを傷つけられ、思わず吐き捨てるように言い放った。
「これで……もう、十分にオボッキしていますわっ! ふんっ……あなたのオチンボに見合う大きさじゃなくて、お生憎様ですわっ……!」
ぷい、と顔を逸らしたイバラであるが、しかして次にフローレンスが見せた態度には、思わず顔を戻してしまった。
「ぷっ……くっ、ははははっ、あはははは、ははははははっ! ひぃっ、おかしい!」
なんとフローレンスは、吹き出したかと思うと、いかにも我慢できないといった様子で生徒会室のテーブルをバンバンと叩いて哄笑を始めたのだ。
「な、なんですのあなたっ!? 失礼でしてよ!?」
「失礼? は〜ぁん? こんなミニペニスでご挨拶する方がよっぽど失礼よ、イバラ?」
顔を真っ赤にして憤慨するイバラであったが、それを見返すフローレンスの顔は嘲りに満ち満ちていて、先ほどとは一変し、相手を侮る雰囲気が感じられる。
「日本人は小さいってダディに聞いてたけどさ、まさかここまでだなんて、ぷぅっ♪ ベイビーの方がまだマシよ、あはははは♪」
巨根をぶるんぶるんと震わせながら、フローレンスは未だ笑い続ける。
自分の男根を悪し様に罵られ、しかし相手の大きさと全く違うのが事実である以上強くも言い返せず、ただ拳を握ってじっと耐えるばかりであった。
「イ〜バ〜ラ〜? ユーのペニス、アメリカじゃ成長障害よ? そんなんでオジョーサマだなんて、あはは、ソーゲツドーもたかがしれるわ♪」
しかし元々気が短いイバラである、フローレンスの相手を小馬鹿にしきった雑言の嵐に、ついつい、こんなことを言ってしまった。
「あ、あまりバカにしないでいただきたいですわッ! わ、わたくしはともかく、こちらの六花さんのオチンボはずっと立派でしてよっ!?」
「はへえぇ!?」
どうなるかとはらはらしながら二人を見守っていた六花であったが、いきなり話題を自分に振られ、驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。
「は〜ぁぁん? リアリィ?」
今まで全く六花には興味を示さなかったフローレンスであるが、そう言われて初めてその存在に気づいたかのように六花を見る。しかしその表情は斜に構えられ、明らかに相手を侮っている。
「い、イバラさん、ひどいわぁ……ウチだって、こんな……そのぉ……」
頬を赤らめながら、両手で股間を隠してもじもじとする六花。両腕に締め付けられた乳房がにょんと前に突き出され、膨らみが強調されている。この点においては、フローレンスよりもやや勝っていた。
イバラも、六花を巻き込んでしまったことに少々ばつの悪そうな顔をしていたが、言ってしまったことは仕方ないとばかりにそのまま強引に押し通そうとする。
「ご、ごめんあそばせ、六花さん……で、でも、どうか、わたくしを助けると思って、見せてくださいませ……」
「何でやねんなぁ〜!」
思わず六花は目をきゅっと閉じて、そう叫んでいた。何がどうして、イバラが助かるのか分からない。
しかし、そうまで言われては、生来気の弱い六花である、頑として断ることも出来ない。羞恥に口をとがらせつつ、ショーツに手を掛けてゆっくりとそれを降ろしてゆく。
「んぅ……あんまり、見ぃんといてぇ?」
たちまちフローレンスの視線に晒される、50cmほどの六花の巨根。ぶっくりと膨れあがった淫らな幹と、重そうに垂れ下がった陰嚢は普段であれば周囲を圧倒するかの如き迫力を持っているはずなのだが――
「ふうん? まあ、まあ、ね?」
まるで別の生き物のように、ぶるぶると上下に揺れ動いているフローレンスの化け物巨根の前では、子供同然であった。
「せやから言ったのにぃ……」
フローレンスの男根の発する淫気に当てられてか剛直こそそそり立たせていた六花であったが、彼女に軽くいなされると恥ずかしさに顔を隠し、哀れなほどに小さくなってしまった。
さて、それっきり六花には興味を失ったようで、フローレンスは太い幹でぐるりと部屋の中の空気をかき混ぜてイバラに向き直る。切っ先を改めて突きつけられ、イバラはヒッと短く叫んで息を呑んでしまう。
「それで、どーしたのイバラ? 自分がミニチンポだからってフレンドに頼って、情けなぁいなぁ? さすがミニチンポだけあって、ハートもミニサイズなのね♪」
「はあぁ
んぉっ
お、お止めになってぇ……」
気づいてみれば、自分の行為はまさに言われたとおりであり、言い返すことも出来ない。
イバラを罵りつつ、フローレンスは赤黒い亀頭でイバラの男根をからかうように撫で回す。気色の悪さと心地よさがない交ぜになった感覚に、イバラは弱々しく腰を退かせるばかりであった。
「なぁ〜にぃ、イバラ? ビッグなチンポにミニチンポ叩かれて、感じちゃってるのぉ? あははははははっ♪ 最低♪ ほらほらほらぁ、こうして大きいチンポにバカにされるのが気持ちいいんでしょ?」
嗜虐的な笑みを浮かべて、フローレンスは自分の根本を掴み、うねうねと巨根を揺らしてみせる。ぺちっ、ぺちっと情けない音を立ててイバラの男根は亀頭に叩かれ、じんと痺れるような衝撃にイバラは甘い声を上げる。
「そ、そんなことありませんわっ……んひぃぃ
」
否定はしてみるものの、男根を常識外の巨根で嬲られる感覚は、屈辱と同時に快感であり――
一度弱みを見せてしまったイバラは、すっかり被虐の悦びに捕らえられてしまい、フローレンスに侮蔑の言葉を吐かれるたびに男根を張り詰めさせ、それを叩かれて腰を震わせるのであった。
「あ、あのぉ、その辺にしといたげて……?」
親友が追いつめられるのを見かねて、六花が遠慮がちに声を掛けるが、調子に乗っているフローレンスはそんな声など聞こえていないかのように振る舞い続ける。
「ポールもちっちゃければボールもミニサイズね♪ ほう〜ら、潰しちゃうよぉ? こぉんなちみっこいザーメンタンク、簡単に潰れちゃうよぉ?」
垂れ下がったイバラの陰嚢を巻き込みつつ、股間に赤ん坊の頭ほどもある亀頭を差し入れると、フローレンスは腰に力を入れて巨根を持ち上げる。
さすがに、イバラの身体が浮き上がるほどの力はなかったが、それでも睾丸に圧迫感を与えるには十分であった。ぷりっと垂れ下がった睾丸を、自分の女陰に押し当てられて圧される感覚に、イバラは歯を食いしばって呻く。
「ぐひいいいぃい
やめ、やめてくださいましぃっ! お、オキンタマが、へしゃげてしまいますわぁ……くぅぅ、へぐううぅぅ
」
「いやーだイバラ、チンポビンビン♪ キンタマ潰されて感じちゃうんだあ? この国の人ってみんなドマゾなのかなぁ? あはははは
」
「あ、は、はっひぃ
やめへえぇ
オキンタマぐりゅぐりゅ、くひいいぃ
デカオチンボに、んぉおぉ
ごりごりされてへえぇ
」
「や、やめたげてぇなぁ……堪忍しといたげてぇ……?」
いよいよ必死な声を上げ始めるイバラに、六花はおずおずと近づいてフローレンスの袖を掴むが、五月蠅そうに無言で振り払われてしまう。六花は最早フローレンスにとってただの邪魔な置物のような存在らしい。
そして、フローレンスの執拗な睾丸潰しから逃れようと、足を開いた不格好な姿で後じさっていたイバラだが、ついには壁際に追いやられてしまう。
「も、もう、もう許してくださいましぃいぃ
わたくひ、わたくひいいぃ
オキンタマはダメなのですわぁ……」
「やーだよ。ホント、こんな情けないのがソーゲツドーの娘だなんて笑わせるね♪ 所詮はちっちゃい島国の財閥、ステイツに来たら田舎者扱いされるよ♪ ほうら、情けないミニチンポでごめんなさいって言ってみなよ♪」
「い、家は関係有りませんわっ! それに、そんな、情けないだなんてっ……くはへえぇぇぇ……! キンタマ、おっ、おうううぅ
むにむにぐりぐりぃ
オキンタマがきついのですわあぁぁっ!」
さすがに双月堂家のことを馬鹿にされては黙ってはおられず、言い返そうとするも、フローレンスがぐりっと巨根を捻れば、すぐに泣き叫んでしまう始末。なじられ、嬲られ。イバラは次第に身体を弛緩させ、涙ぐみながら睾丸圧迫に耐えている。
「あ、あの、あのぉ」
「イバラ、早く言ってよ
フローレンス様のオチンポ様に比べるべくもない、恥ずかしいミニチンポでごめんなさい、って
日本のチンポはアメリカ様に遠く及ばないベイビーチンポ揃いです、って
」
六花の静止を完全に無視し、フローレンスは高笑いをしながら巨根を揺さぶってイバラを追いつめてゆく。嗜虐的な笑みを浮かべた表情はまさに征服者のそれであり、イバラに対する容赦は一片たりとも無かった。
「ひっ、ひいいいぃ
あひっ、へひいいぃ
こ、こんなドデカオチンボでオタマを潰されたらぁ
おかしくなってしまひますわぁぁ……
硬すぎず柔らかすぎず……絶妙にオキンタマをぐにぐにしてきますのぉ
助けて、オキンタマ助けてぇ
このままではわたくし、生徒会室で巨チンポにぐりぐりされて
オキンタマアクメ
してしまいますのおおぉ……
ひいいいぃ
い、言わないとダメですのおおぉ
」
「ダメだよ、ほら。そんな情けない顔して、ホンットゴミね〜
ステイツのチンポには敵わない癖に、オジョーサマなんて顔して、ミニチンポをフリフリして威張ってるからそーゆー目に遭うのよ
許して欲しかったら、早く謝りな? セーシンセーイ、ドゲザでもしてもらおっかあ? あははははははっ
」
「くうううううぅぅぅぅっ! ひ、ひはあぁあぁぁっ
オチンボもうぐりぐりやめてぇえぇ
」
勝ち誇ったように高笑いをするフローレンス。イバラは涙をこぼしながらその無邪気な顔を睨み付ける。何もしていないのに謝罪を強要され、さらに土下座まで請われるとは、屈辱の極みであった。しかし、この肉体的な快感と苦痛には耐えがたく、プライドの高いイバラであっても屈してしまうのは時間の問題と見えた――
が。
「げひゅっ!?」
突然フローレンスは珍妙な声を上げ、動きを止めた。何やら巨大な衝撃に襲われたかのようで、歯を食いしばり、目は見開かれている。
「お……おおお……おぉ……ノォ……」
フローレンスはその表情のまま、ずる、ずると崩れ落ちるように膝を着き、尻を高々と上げてその場にうつぶせになる。驚愕の表情のすぐ横に、彼女の巨根の亀頭がにゅるりとはみ出しているのが一種間抜けな光景であった。
「あ、あら……?」
何事かと目をぱちくりさせていたイバラであるが、ふと前を見る。と、
「やめて、って言ったよなぁ? ウチ? 聞こえへんかったぁ? ウチのこと無視してイバラさんいぢめたりするから、キンタマを膝蹴りされるんよ? わかるかぁ?」
首を傾げさせて口を半開きにし、腕を力なく垂らし――倒れ込んだフローレンスを見下す瞳は虚ろで、深淵の闇のように濁っている――
今までイバラが見たことのない、六花の姿がそこには有った。
「り、六花さん……?」
変わり果てた友人の姿に恐る恐る声を掛けるも、六花はその表情のままにたぁっといやらしく唇を歪ませて微笑む。そこには、普段の細川六花の、穏やかで優しい少女の面影はどこにもない。
「ごめんなぁイバラさん、痛かったやろぉ……? このヤンキー娘、イバラさんになんてことしてくれるん? あぁ?」
そう言って足を持ち上げ、目の前でぶら下がっているフローレンスの睾丸に上履きのつま先で遠慮のない蹴りをぶつける。
「んノォォォォォォォっ!」
イバラも思わず目を背けたくなるほどの痛烈な一撃であり、見ているだけで睾丸がズキズキと痛む思いだ。それを実際にされたフローレンスはたまったものではなく、ケダモノのような叫びを上げて、全身をびくびくと痙攣させている。
「調子に乗るのもいい加減にしぃよぉ……? この、デカいだけでジャマくさい、何の役にも立たないキンタマ、潰してまうよ? ん〜?」
肉感的な尻を優しく撫で回しながら、六花はフローレンスを恫喝する。
「ノォ……ノオオォ……!」
フローレンスは衝撃の余りに、まともにコミュニケーションが取れない状態であった。ただただ否定の言葉を呻き続けるばかりであり、白目を向いて涎すら垂らしている。しかし六花は、そんな相手にも全く容赦しない。
「ノォノォと、それしか言えんのかぁ? ウチのこと馬鹿にしとるん? さっさと謝らんかいなぁ!」
太股の間で揺れている巨睾丸に、びしゃっと容赦のない平手を一撃。
「ひんぎいいいいいいいいぃぃぃぃっ! ソーリー、ソーリー、ソーリいいいいいぃぃぃぃっ!」
「ここは日本やっちゅうの。日本語に決まっとるやろぉっ!?」
「ひやあぁあぁぁっ! ごめんなさい、ごめんなさいいいいぃ、ごめんなさい、ごめんなさいいいぃ、ひーっ、ひぃ、ひっぐっ、ひいいぃぃぃぃっ! ごめんなさいいいぃ!」
さらにもう一撃、びしゃりと睾丸ビンタを加えられ、放心状態だったフローレンスは完全に泣き出してしまう。
「あ、あのぉ? 六花さん、さすがに、やりすぎてはなくって……?」
それを見て顔を青ざめさせていたイバラであるが、さすがにおずおずと六花をたしなめる。
「んぅ? そんなことないよぉ? イバラさんの方がもっと痛かったやろ、苦しかったやろ……?」
口調こそ穏やかだが、表情は完全に虚ろである。一切の道理をシャットアウトした、狂気じみた六花の表情。この顔を見ては、イバラもさすがに二の句が継げなくなる。
だが、その表情を見ていないフローレンスは、涙に咽びながらも必死に主張する。
「ひーっ、ひぐっ、んぐううぅぅ……そこまでしてないよぉ……こんなに痛いことしてないいいいぃぃ……」
「誰がお前に聞いたっ!? ヤンキーは黙っとらんかぁっ!」
「ひっいいいいいぃぃぃっ
」
眉をぐっと八の字にひそめた六花に、睾丸ではなく今度は尻を強かに叩かれる。
と、フローレンスはやや違った声音を発した。
それを耳さとく聞きつけた六花は、唇を皮肉に歪めて、フローレンスのショーツの中に掌を差し込む。朱に染まった尻肉を優しく――逆に恐ろしく感じてしまうほどに優しく撫ではじめた。
「何を一人でええ声出してるん? デカッ尻に仕置きされて、気持ちよくなってしもうたん?」
「お、オゥゥぅぅっ……それはぁ……」
「はっきりせんかぁっ!」
「ひゃっひいいぃぃぃァ
」
余りにも間隔の短い飴と鞭。両手で桃尻を挟み込まれるように叩かれ、フローレンスはいななき、肉が弾けるような音を立てる。
未だ睾丸がじんじんと痛む中、尻にまで衝撃を加えられて、フローレンスは涙混じりの声でいよいよ観念した。
「イェス、イエスぅ……き、き、気持ちよくなってましたァ……」
「仕置きで感じてしもうたん? はぁん……この白豚ァ、どうしようもないドマゾの変態やな?」
「ど、ドマゾォ……!?」
「文句、あるんか……?」
余りの言われように、生来の負けん気の強さからキッと眉をひそめたフローレンスであったが、尻をぺたん、ぺたんと叩かれつつ、六花にドスのきいた声でそう言われては子犬のようにきゅんと縮こまるしかなかった。
「い、イエス……ミーは、ドマゾ……です……」
「せやろ、せやろぉ……
」
声音だけは優しく響かせつつ、六花はフローレンスの尻を鷲掴みにし、その白く豊満な肉を歪ませる。痛みはさほどでもなかったが、フローレンスの心中では、これから何をされるのだろうかという恐怖が渦巻いていた。
「はぁ
豚の泣き声聞いとったらぁ、ウチもよう辛抱たまらんわぁ……
」
はふぅ、とため息の後で六花はそう呟いて、おもむろにフローレンスのショーツをズリ下ろす。
いきなり肛門、果ては女陰までをも冷たい空気中に晒されて、フローレンスは思わず素っ頓狂な叫びを上げた。
「ひいっ!? の、ノーッ!」
「ノーや無いやろう……? こんな淫売尻をフリフリさせとんのやから、オメコはいつでもチンポを食いたがって濡らし放題なんとちゃうんか?」
そう言って六花は、相手の意志を完全に無視し、すっかり屹立している自身の先端を、ピンク色に濡れそぼったフローレンスの女陰へとあてがう。そしてそのまま、ぐい、と腰を前へと突き出す――
「ひィおおぉぉぉっ! オウウウゥゥ
そんなっ、いきなりいぃぃ……
ミーのヴァギナがあぁ……」
「ほ〜……
さすがは外人さんやわぁ
ウチの……恥ずかしい
ドーテー
チンポぉ……ずっぷり飲み込んどるよぉ
暖かくて、なんやチンポにぞわぞわ肉がまとわりついてくるわぁ
アメリカオメコはほんまにやーらしぃわぁ……
はふぁ……こんな豚オメコでウチの童貞を食べられるんよ? 感謝しぃ?」
「ひっ! んぎっ……くほおおぉぉぉ! 太いィィィっ
ノォォォ……ぶっといペニスううぅ
ミーの中がいっぱいに……んおおぉぉ、裂けるううぅぅ
」
「これっくらいで裂けるわけないやろぉ? はふううぅ
こんな豚でも性欲の処理くらいには役立つやんなぁ? ふあああ
腰振ってまうよぉ
おほっ
人間以下の白豚にチンポ突っ込んで、んふううぅ
イバラさんの目の前で、恥ずかしくヘコヘコ腰振るううぅ
デカチン気持ちようなるよおぉ
」
逃げられないようにフローレンスの尻をがっちりと掴んだまま、六花は前後に腰を振り始める。
二人の結合部からずちゅずちゅと淫らな水音が溢れて、時折泡だった愛液がしたたり落ち、二人の巨睾丸を濡らしてゆく。
「んほあぁ……
牝豚オメコでも、ホンマ気持ちええわあぁ……
今までこのデカチンをハメられる子もおらんかったし、そもそもそんな機会もあらひんかったけどぉ……ちょっとだけ感謝してやってもええよお?」
「くっ……んおあっ、苦しいいいぃぃ……!」
未だ狂気の色は消えずとも、多少なりとも恍惚とした雰囲気を見せてきた六花であったが、自分の問いかけを無視してフローレンスが悶え続けるのを見ると、すぐに機嫌を損ね、腕に力を入れる。
「ぐひいいぃっ!? 光栄ッ、光栄ですううっ! ノーッ、やめてへえぇぇぇぇっ! 許してっ、くひいいぃ
」
両手、合わせて十指を、跡が残るほどに尻に食い込まされて、フローレンスはぶんぶんと首を振って謝罪する。六花の余りの暴力性に、彼女の意識はすっかり屈従の道を選んでしまったようだ。
「ウチのチンポ、ずぅぅっぽり飲み込まれてくわぁ……
おほっ、キンタマ疼くううぅ
ほうらあ、ウチのキンタマが、豚のデカタマにぶつかってええ音立ててるよぉ? くうっ、んほおおぉぉぅっ
」
言いつつ、ぐっと腰を引いた後大きく打ち付ける六花。振り子のように揺れる睾丸はさらに巨大なフローレンスの陰嚢へとぶつかって、ぱちぃんと小気味よい音を立てている。
フローレンスの腹部では、六花の巨根の形状がくっきりと浮き出ており、カリ首のくびれまで伺えるほどであった。腰を動かすたびにそのシルエットが前後に蠢く光景は余りに異様であり、フローレンスが今どれほどの苦痛に悶えているか、分かろうというものであった。
「んほおぉぉ……
小生意気なヤンキーをガチハメレイプするのってホンマ気持ちええわぁ……
んふぅ……
ほうらあ……遠慮せんと、自分もよがりまくったらええやろ? マゾ豚らしく、下品にド派手になぁ
」
そんな身勝手な理屈を振りかざされても首肯はしかねようが、それがフローレンスの秘められた性癖であったか、あるいは神経が多大すぎる苦痛を快楽へと変換したか、彼女は言われるがままに浅ましい喘ぎ声を上げ始めた。
「オオゥ……ぶっといの、グゥレイトね……
アオオオオ〜ゥ……一突きごとに、頭が弾けそうヨゥ……
んッほお
」
「はぁ。アメリカ産白豚の声はホンマに品が無いなぁ? んふ、ううぅ
もっと楚々とした音色を聞かせんもんかな……
」
「んはぉぉ……
んぅ? ソソ……? くひいいっ!? おうっ、オウウウぅっ、オッフゥ
んふぅぅぅ、おおおおぅぅ
」
六花の発した聞き慣れない日本語に眉をひそめるも、すぐに彼女の思考は膨大な快楽の波へと押し流されてゆく。その荒々しい喘ぎを聞きつつ、六花は皮肉そうに唇を歪めながら、多少がに股気味に開いた脚をしっかりと踏ん張り、自分勝手に腰を振る。
「んっほぉぉ
はあぁ、セックスゥ……ホンマ気持ちええよぉ
デカチンずっこずっこ振ってェ……ぐつぐつの熱いキンタマ、べたべた叩きつけるの最高やわぁ
へああおぉぉ……
自分、ウチ専用の便器にしてやってもええよぉ? いつでもウチのエロチンポの猛りを鎮めさせられる、白豚便器にィ……
」
「べ、便器ィッ……!? ノォォゥっ! ミーはこれでもセレブな……あひっひっひぃいぃぃぃ
ヒィ
ヒイぃぃはあぁあぁ
んお゛お゛オオォ……オチンポぶっといヨォ
オマンコゴリゴリ擦られまくってへえぇ……
日本人のチンポに逆らえないいいぃぃぃぃっ!? 日本人にレイプされて、エクスタシーヨオオオォォっ
んっへあぁ
ミーのチンポっ、熱ゥゥ
」
ついに床に突っ伏したフローレンスは、自らの巨大な亀頭を抱くようにして、蕩けきった顔で涎を垂らす。六花の巨根が膣内を荒らすたびに、彼女は大仰に目を見開いて叫びを上げる。
「あ゛へえぁあ゛あ゛あ゛……
来る、来るヨォォォ
カミング、カミングうぅっ
でっかいアクメが来ちゃうううぅぅ
便器に、便器なんかにされてっ、ぐひいいぃ
ぐちょぐちょに掻き回されて来るううぅぅっ
」
「へえぇ……ガイジンさんはイクんやなくて来るんやなぁ? んっふ
ウチもイクぅ……イッてまううぅ……
あ゛ふぅぅっ……白豚のデカケツ、がっちり掴んでチンポハメまくり
かなわんわぁ
キンタマが爆発しそうなほどやわぁ……
んんんおおおぉぉぉっ! イグッ
イッグうううぅ
」
六花は、その華奢な身体に不釣り合いな野太い声を上げ、ばんっと腰を押しつけると、フローレンスの尻をしっかり捕まえたまま大きく天を仰いだ。その表情は来るべき歓喜の期待に満ちて、恍惚に白目を剥いている。
どぶぅぶびゅるるるううぅぅっ! ごびゅぶびゅるううぅぅっ、ぶびびゅううぅ!
「へお゛ッ
おっ、んっひぃ
イッてるうぅ
ウチイキまくってるううぅぅ
キンタマ汁ううぅ
子宮に遠慮無くどぼどぼ注いどるよおおぉ
んひいいぃ……あっついオメコ肉に包まれてチンポ射精ィ……ええわぁ……ほんまええわぁぁ……
中出し気持ちよすぎるわあぁぁあぁ……
」
「んあっ! のっ、ノォォォォォォっ! 中に、中にいいいいぃぃぃっ! んお゛お゛お゛おおおぉぉぅ
濃いのが、熱いのが、たっくさん……んひいいいぃぃぃっ
ミーの中がザーメン漬けにされるううぅぅっ! 子宮が全部ザーメンで埋まるうううぅぅっ……オオオォォ……ノオオオぉぉぉ……
」
ぶる、ぶると身体を震わせながら、際限が無いかと思われるほどに射精をし続ける六花。そして、悦楽に満ちあふれた六花の表情とは対称的に、フローレンスは悲壮感に満ちた顔でその凌辱を受け入れる。
熱く、として重い液体――自らが卑下していた民族の子種を自分の胎内に注がれる感覚。それは快楽でもあり、同時に絶望となってフローレンスの心にのし掛かる。
しかし、それでも何とか絶頂を堪えたのは、彼女に残された最後の矜持といえよう。とはいえ――
「ふぅううぅ〜
仰山出したわぁ……
ウチのどっろどろのザーメン……こんなに出してもろうて、有り難うも言えんのかぁ?」
そう言って、六花はフローレンスと繋がったままの腰を無造作に落とす。と、その下にあったフローレンスの巨睾丸が、六花の尻と床に圧迫され――
「お゛へえぇえええぇえぇぇえぇぇぇっ
」
ずん、と全身に走る衝撃。フローレンスはおおよそ人間離れした声を発して、最後の壁をも陥落させられてしまった。
ぶびどぼびゅぶるるううううぅぅぅぅっ! どぶっびゅうううぅ! ぶびゅうるるるっ、ぐぶびゅっ、どっびゅるううぅぅ!
ヘドロのような黄白色の塊が、生徒会室の床にぶちまけられる。フローレンスは理性を失った顔をして、強烈な睾丸絶頂にのたうち回りながら射精を続けた。
「お゛うああああああぁあぁ
キンタマ潰れるうううぅぅぅううぅっ
オウッ、オオオウウウ
ミーのザーメンボールっ、ぐにってしちゃダメヨオオォォォ
ひいいっ、ひーっ
ペニスが射精いいぃぃっ、おっほぉ
キンタマアクメッ、ビッグキンタマが射精いいいぃぃぃ
い゛ひいいいぃぃっザーメン臭いッ、臭いザーメン止まらないいいいぃぃぃっ
おぅおっ、おっほおおぉぉぉ
」
「お礼は、どないしたぁ?」
ひたすらに叫び続けるフローレンスに対して、六花はごく冷静に――穏やかさすら感じさせる口調で、さらに腰を上下させて柔らかな肉の玉をたゆませる。
「ひィおおおおおおおっ
せ、センキュゥぅぅ
中出しザーメンセックスアリガトウゴザイマスうううぅぅぅっ
んっふうううぅぅおおお
チンボアクメが止まらないいいいぃぃっ
んお゛ぉお
デカチンカミングがブリリアントねえぇぇっ
はあ゛あ゛あ゛ッ、キンタマキンタマキンタマああ゛あ゛あ゛ッ
ミーの、アメリカンセレブの、でっかいだけで役に立たない、下品で最低のキンタマを虐めてくれて、サンキューベリーマッチいいいぃぃぃぃっ
んっひいいいいぃぃぃっ
」
さて――六花が豹変して以後、あまりの展開に一言たりとも言葉を発せ無かったイバラは、ついにへたへたとその場に座り込んでしまった。フローレンスに馬鹿にされたことは、確かに許せないことである。しかしだからといって、あの優しい六花がここまでやるなんて――自分の尻がフローレンスの精液にぬちゃりと浸かるのも気にせず、イバラはあわあわと口を開閉させるばかりであった。
「ほぅらぁ白豚ァ? 自分がそないにどびゅどびゅ汚い汁漏らすから、イバラさんのお尻が汚れてまうやないのぉ? ちっとは我慢できんのかぁ? あっ!?」
腰を小刻みに振り続けつつ、六花は両腕をだらりと下に伸ばして、フローレンスの陰嚢の皮を掴む。と、それをぐっと持ち上げて重そうな睾丸を浮かせ、そしてまた床にたたき付けた。
「んごっお゛お゛お゛お゛ッ!? ノーッ、ノオオオオオ! ミーのキンタマ許してえへえぇえぇっ
ヘルプ、ヘルプミィぃぃっ
イバラ、イバラあぁぁ、助けてへえぇぇぇえぇっ
んぐうううぅぅ
キンタマ痛すぎてまたイッグうううぅぅっ
」
勿論そんなことで射精が止まるはずもなく、一層強烈に白濁汁を出し続けるフローレンス。その様子を見た六花はわざとらしく肩をすくめて、こう口にする。
「しゃぁないなぁ、この豚はァ……
まぁだ反省が足りんようやな? イバラさん……
そんなら、この豚のチンポに栓してくれるかな?」
「……えっ? は、せ、栓ですの?」
突然話しかけられ、イバラはようやく我を取り戻して、どもりながらも返答する。
しかし栓とは何のことか――周りを見渡せど、そのようなものは見あたらない。狂気にまみれた親友の真意が見えずに慌てるイバラに対して、六花はくふくふといやらしい笑みを浴びせる。
「そこにあるやろぉ? 立派な、イバラさんの、肉の栓がァ……
」
「えっ……えええええっ!?」
六花の視線の向く先を追い、ようやくイバラは理解する。六花が栓と指し示して居るもの――即ち、イバラの肉根である。
「そ。イバラさんの、高貴なオチンボで、ゲスなアメリカデカチンに、ぬっぽりと栓してやってぇなぁ……
」
「あっひいいいいいぃぃぃっ!? 尿道イヤアあぁあぁぁぁぁっ! イバラ、ノーッ、許して、許しッ、ひいいいいいいぃぃっ
そんなことされたら、ミーのペニスが弾け飛んじゃうヨォォォォオっ! イバラごめんなさい、馬鹿にしてごめんなさいっ、ミーが悪かったヨォォ! イバラだから許してッ、チンポファックは止めてっ、お願い、お願いしますっ、んひいいいぃぃぃごめんなさひいいいいいぃぃぃぃっ
」
まるで悪魔が囁くがごとく、常識を越えた淫らな行為を焚きつける六花。フローレンスは、恐怖の余りに顔を引きつらせて謝罪の言葉を絶叫している。
「わ、わたくし、わたくしはぁっ……!」
男根に男根を挿入するなど、イバラの発想を遙かに超えた異常極まりない行為である。その恐ろしさにイバラは何とも答えに窮してただ自分の身を抱きしめて震えていたが、股間の肉棒はビンッ、ビンッと硬く張り詰めていて――
*
そして、得てして良いところでとぎれるのが夢というものである。
「はああっ!?」
思わず気の抜けたような声をあげて飛び起きたイバラは、残念なような、ホッとしたような、妙な心地で寝覚めの頭をぶんぶんと振り回した。
さて、自分の猛りを世話役のメイドに見つかって一悶着があり、それでも夢の余韻は冷めやらず、ぼうっとした頭で学園に登校したイバラであるが――
「おはよお、イバラさん」
「あひっ!? お早う御座いますわっ!?」
「ふぁ?」
にこにこと、人の良い笑顔を浮かべて挨拶をしてくる六花に思わず怯えてしまった。
六花は何事か分からず、不思議そうにきょとんとするばかり。この人畜無害そうな顔を見ていれば、今朝の夢のような悪魔の姿を見せることなど到底想像できない。
咳払いをして、イバラは一旦息を整える。
あれは夢、あれは夢ですわとイバラは自分に言い聞かせて、そして、それを自分自身に納得させるためにこう問いかけた。
「……ごめんあそばせ。あの、六花さんは……怒ったことはおありですの……?」
「怒ったこと……? どうして、そないな……?」
「な、なんとなくですわ……」
「ふぅん……?」
まだ釈然としない様子の六花であったが、特に答えづらい質問というわけでもない。人差し指を顎に当て、しばらくううんと唸っていたが、やがて恥ずかしそうに微笑み、
「ウチ、実は、怒ったことって無いかも……」
何事も引っ込み思案で、押しの弱い彼女である。気分を害されるようなことがあれば、怒るより先に悲しみの方が先に立つのであろう。
それだけ聞くと本当に穏やかな性格なのだろうと思うところであるが、イバラの場合は別の反応を示した。
「ひいいっ!? それじゃやっぱり、怒ったらあんな風になっておしまいにいっ!」
「へ? そ、その、だから、怒ったことないよぉ?」
「え、ええっ! 六花さん、どうか、どうか、怒らないでくださいまし、いつまでも優しい六花さんでいて下さいましねっ……?」
泣きそうな顔で取り乱し、六花の両手をきゅっと握るイバラ。
彼女の抱える勝手な不安などまるで分からず、六花はただうんうんととまどい気味に頷くばかりであった。
(終わり)