白濁のルルーシュ ナナリー編


 草木も寝静まり、空にはただ満月が煌々と輝く日本と呼ばれていた国の夜。
 ルルーシュ・ランペルージは、私室にて気怠げにデスクの前に座り、何事か考え事をしていた。
 自分の吐息の音すらも耳障りなほどの、静寂な室内――そこに、こん、こんと遠慮がちなノックの音が響き渡った。
 こんな時間に誰が――ルルーシュは眼光鋭く背後のドアを睨むと、咄嗟に動けるように腰を浮かし気味にし、来訪者の次の行動を待った。
 しかし、続いて聞こえてきたのは、彼が想定したような危険な相手のものではなく――
「お兄さま、あの……夜遅くにごめんなさい……」
 と言う、今にも泣き出してしまいそうな哀切を帯びたか細い声であった。
「……ナナリー」
 彼はほっと肩を降ろすと、口元に笑みさえ浮かべて、相手――妹の名を呼んだ。
「どうしたんだい、こんな夜中に」
 彼は立ち上がると入り口へ向かい、ドアを開けて妹を迎え入れる。車椅子の車輪を転がして現れた少女は、心底申し訳なさそうな顔をして、俯いて黙ったまま室内へと入った。そんな彼女を咎めるようなこともせず、ルルーシュは静かにドアを閉めると、優しげな面差しのまま車椅子の側にしゃがみ込んで、きゅっと口を結んでいるナナリーの顔を覗き込んだ。
 ――ルルーシュは、神聖ブリタニア帝国の廃皇子でありながら、帝国に叛旗を翻す反逆の徒であった。
 そんな彼であるからこそ、先ほどのノックの音に見せた鋭敏な反応は当然のものと言える。
 その明晰な頭脳と「ギアス」と呼ばれる不思議な力を用い、彼は今までに何度もブリタニア軍に奇襲を仕掛け、そのたびに奇跡的な勝利をもぎ取っている。
 素顔こそ見せては居ないが彼は一躍時代の英雄であり、時に非情とすら思える苛烈な計略を行う彼を、人々の多くは畏怖し、冷酷な人間だと思っていることだろう――
 しかしそんな彼にも、唯一優しく接する相手が居る。この、目と足が不自由な少女、妹のナナリーである。
 そもそも彼の反逆の理由の一つが、このナナリーの安心して暮らせる世界を作る、と言うものであるからして、それこそ目の中に入れても痛くないほどの可愛がりようであった。
「お兄さま……あの、私……」
 ナナリーは、眉をきゅっと八の字に寄せたままルルーシュと目線を合わせるが、すぐに俯いて口を結んでしまう。両の手は自分の股間をしっかりと押さえており、どこかしら落ち着かなさそうにもじもじと腰を揺らしていた。
 そんな彼女の様子から、ルルーシュはとっくに妹の来意を見抜いている。股間を押さえている両手に自分の右手を重ねると、ナナリーは「あっ」と小さく呟いて、その細い肩を揺らした。
「ナナリー。ここ、かな……?」
 そう言って右手を軽く動かすと、ナナリーはその白い頬を真っ赤に染めて、こくんと頷いた。
「それじゃあ、手を退けて……このままじゃ、出来ないだろう?」
 諭すように、優しく声を掛けるルルーシュ。言われるがまま、ナナリーはそっと自分の両手を退かして、自分の股間を兄の手に触らせる。
 と、その柔らかいスカートの中から硬質なものが盛り上がり、ルルーシュの掌にこつんと当たった。
……!」
 その感覚にナナリーはいよいよ気恥ずかしそうに目を硬くつむり、首を左右に振る。そんな妹を微笑ましげに見つめつつ、ルルーシュはその突起を軽く撫で回し続けた。
「んぅっ……ああぁ……お兄さまァ……」
 少々のとまどいと、切なさを帯びた声。ルルーシュは彼女を安心させるように左手を肩に乗せ、そして右手で彼女の長いスカートをゆっくりまくり上げていった。
 飾り気のない質素なショーツの上面からはみ出して、そこに現れたもの――それは、可憐な少女には似つかわしくない、15cmほどの猛る肉の棒であった。
 明らかに男性器――ペニスである。
 燃えさかるような性欲に満ちた異形は少女の股間におぞましく聳え立ち、持ち主の緊張に合わせて小刻みに震えている。
 はち切れそうなほどに硬く張り詰めたそれを、ルルーシュは目を細めて愛おしげに見つめ、右手で包み込むように握る。
「あ、あっ……あぁ……
「可愛いよ、ナナリーのチンポ……」
やぁっ……恥ずかしいです、お兄さまぁ! そんなこと、言わないでください……!」
 兄が発した卑猥な言葉に、ナナリーは思わず非難の声を上げる。しかしルルーシュはそれを聞き流し、しゅ、しゅっと、未だ包皮が被さり気味なその男根を慣れた手つきで扱き始めた。
「どうしてだい? こんなに立派になって……もう、オチンチンとは呼べないな。立派な、チンポ、だよ、ナナリー」
 わざわざその言葉を強調するようにして聞かせると、ナナリーは困り顔のまま口をつぐみ、可愛らしく頬を膨らませてしまった。
 しかし、兄による優しい手淫の快感に抗えないのか、次第に腰を震わせて、甘い声を漏らし始める。
んっ んっ んぅっ ん〜っ
「ほらナナリー……早速チンポからいやらしい汁が漏れてきたぞ……。ふふ、ぬちゃぬちゃとチンポに絡んでいる……分かるかい?」
はあぁ お兄さまっ……やっ……! 意地悪、しないで下さい……!」
 言葉通り、ナナリーの先端からは透明な蜜が溢れ出して、ルルーシュの細い指先に絡んで淫らに煌めいている。
 見ることは出来ずとも、ナナリーの感覚は鋭敏である――そのぬめった感覚に、彼女の羞恥はますます高まり、しかし今更逃げ出すことも出来ず、ただただ快感に翻弄されるばかりである。
 そんな妹のしどけない姿に、ルルーシュは細めた目を妖しく輝かせて、普段はナナリーに聞かせることのない低い声で耳元に囁きかける。
「こんなにガチガチじゃないか……今まで射精を我慢してきたのが、とうとう耐えきれなくなって、俺の部屋に来たんだろう? 俺に、性欲の処理をさせるために……」
いやあっ! お兄さま、そんな、私ッ…… 違いま、あっ、あっ、ァァっ…… んくぅ
「違わないな。ナナリーは本当にいやらしい子だ。ほら、こんなにチンポをボッキさせながら否定しても、説得力が無いぞ? いやらしい、ナナリー……」
「ひうっ……くっ、んうううぅっ、ふうぅ……!  ひうっ んううぅ……!」
 ルルーシュの言葉は、大筋で当たっている。ナナリーは、日々鬱積する股間の忌まわしき肉棒の滾りに耐えきれず、自分に最も近しい者であるルルーシュに助けを求めたのだから。
 自分で処理することも不可能では無かったが――しかし彼女の男根は貪欲で、誰かに扱き出して貰わない限り、数時間後には再び猛烈な衝動を彼女のか弱い心に襲いかかる。恥を忍び、夜半過ぎに困り切った顔で訪れたのも仕方の無いことと言えよう。
 しかしその兄からこんなに冷たく言い放たれ、それでいて弄ばれるように男根を摩擦されていては、複雑な感情の高ぶりが押さえきれない。とうとう彼女は、唇をきゅっと噛み、大粒の涙をぽろぽろとこぼし始めた。
 それを見たルルーシュは、自分の中の嗜虐性を大いに満足させられて狡猾な笑みを浮かべたか――と思えばそうではなく、ハッと目を見開いて大いに慌て始めた。
「ああっ……ごめん! ナナリー……調子に乗りすぎたようだ」
「お兄さま、お兄さまぁ……意地悪されるの、いやです……お願いします、優しくしてください……」
 涙に触発されて兄の纏っていた雰囲気の質が変わると、ナナリーは安心したのか甘えるように懇願した。ルルーシュはばつが悪そうに一度大きく息を吐いて、改めてナナリーに優しく声を掛けた。
「本当にごめん……ナナリーが可愛いから、つい」
「えっ……!」
「ほら、可愛い子には意地悪をしたくなるって、聞いたことがあるだろう? ナナリー、許してくれ」
「やあっ……お兄さま、もうからかわないで……」
 首を横に振り、否定するナナリー。しかし今度の羞恥は先ほどのように心を追いつめられるようなものではなく、気恥ずかしい、心地よい方に分類される感情であった。
「私、お兄さまに嫌われちゃったかと……私がいやらしいから、お兄さまに呆れられちゃったのかと思って……」
「そんなことあるもんか。俺は絶対に、ナナリーのことを嫌ったりしないさ」
「本当ですか……?」
「ああ。約束する」
 ルルーシュの力強い言葉に、ナナリーはようやく表情をほころばせる。しかし、自分の男根を兄に触らせていると言う状況を思い出すとすぐにまた俯き、そして、意を決したようにこう口にする。
「あの、お兄さま……?」
「なんだい、ナナリー」
「それなら、その……お兄さまがそうなさりたいなら、意地悪しても……いいですよ……?」
 元々この部屋を訪れたのは、自分の我が儘――しかも、恥ずかしい肉体的欲望に起因する理由からである。立場的に弱いのは自分の方であり、相手が自分を嫌っていないと言う安心が与えられているならば、ルルーシュの希望に添うのもやぶさかではない――むしろ、敬愛する兄がそれを喜ぶと言うのであれば、羞恥の責め苦も自分の浅ましさを肯定するための代償となり、彼女の心の重みも軽減されようと言うものだ。
 一種潜在的なマゾヒズムといえる、性的倒錯に満ちた妹の言葉を、しかしルルーシュはただけなげなものとして捉えた。実際にナナリーは、余り深く考えることはなくそう言ったのだが、その剥き出しな純粋さがかえってルルーシュの胸を打つ。彼は心中でぐはっと大仰に呻き、弱々しげなナナリーの声が彼の獣性を引き出して、今にも禁断の兄妹相姦に及んでしまいそうなほどであったが、持ち前の冷静さと、少しばかりの臆病な躊躇いがそれを制した。
「ん……そうだな、ナナリー……これからも俺は、つい意地悪をしてしまうかもしれない……許してくれるかい?」
「はい……」
「愛しているよ、ナナリー……」
「あっ お兄さま、そんなっ…… はぁっ
 果たしてルルーシュの囁いた言葉は、兄妹愛の範疇におさまるものであったかどうか。その真意は問わずにただ胸の高鳴りを感じつつ、ナナリーは再開された兄の繊細な手淫に酔って甘い呟きを漏らす。
 細い指先が熱く昂ぶる皮膚を撫でさする感触。包皮から少しばかり露出している亀頭部分を指の腹ですりすりと撫でられると、ナナリーは一層甲高い声を上げて悦びに咽び泣いた。
あ、あーっ…… お兄さま、その……それ、そのぉ……
「気持ちいいのかい、ナナリー?」
「……は、ぃ……
 兄が喜ぶだろうか、と少しばかり勇気を出して快感を口にしようとするものの、結局口ごもり、察したルルーシュの問いかけにただ恥ずかしげに頷くばかりのナナリー。しかしその引っ込み思案な主張の中にも、先ほど与えられた安堵も有ってか、快感を素直に受け止めた嬉しそうな口元の笑みが印象的である。
 その間も、ルルーシュの指は亀頭部分をしっかり捕まえて、鈴口周辺の敏感な皮膚へのマッサージに執心しており――ぴりっ、ぴりっとした痺れにも似た刺激が、ナナリーの幼い尻を揺らめかせ、絶頂を近づかせる。その大きな快感の気配に、ナナリーは小さな口をいっぱいに開いて、兄に甘えた声で訴える。
「お、お、お兄さまっ……そのっ……!」
「チンポがイッてしまいそうなんだね、ナナリー?」
んぅ〜っ……! で、出ちゃいそう、です……
 兄の囁く淫らな単語も何とか受け止めて、今の自分に出来る精一杯な恥ずかしい言葉を口にする。
 その一生懸命な仕草と、そして、爆発寸前にぴくぴくと痙攣している妹の男根の淫らさに、ルルーシュの背筋には電撃にも似た衝撃が走り――ある衝動が彼の中を支配する。
 それは相姦までは行かずとも、妹にするには――ましてや、男である自分がするにしては、やや躊躇いがある行為であったが、もっとこの妹を気持ちよくさせたい、泣かせたい、自分のものにしたい――と言う強い思いが彼を捕まえて離さなかった。
「……ナナリー。それじゃあ今日は……泣かせてしまったお詫びを……」
「ふぇ……? お兄さま、何を……んきゅっ……!」
 何処かしら酔ったような兄の声音にナナリーは不思議そうな反応を見せるが、その後下半身に走った感触に彼女は小動物のような泣き声を上げる。
「んぶっ……ぢゅるぅっ……じゅぷっ、んじゅるうぅ……むうぅっ……」
 ねっとりと絡みつく粘膜の感触と、先端を這い回る柔らかな濡れた肉の感触。そして微かに聞こえる何かを啜るような水音。
 ルルーシュが、ナナリーの肉竿にその口でむしゃぶりついているのは、明白であった。
やああっ…… くっ、ふううぅん お兄さまっ、汚いですよっ……! ひゃあ、あああぁん
 今までに体験したことのない凄まじい快感がナナリーを襲う。それこそ、気を抜けばすぐにでも獣欲を解きはなってしまいそうなほどであったが、兄を汚してはならないと言う思いがそれを押しとどめる。
「ナナリーに汚いところなんてあるものか……じゅるぅっ……んじゅ、れろぉ……」
「ひゃっ ああっ、ダメ ですっ…… お兄さまが汚れちゃうっ……あ、あーっ…… そんなところを舐めちゃ、ああ、あっ、あーっ あ、ふっ、ふぅっ、くひううぅぅぅ
 ルルーシュの暖かい舌鋒が自分の包皮の中にまで侵入してくるに及んで、ナナリーはいよいよ絶望的な叫びを上げ始めた。それは途方もない気持ちよさに対する抗えない激情の発露であり、また、穢れた部分を舐められているという羞恥と、兄に対する申し訳なさの混じった嗚咽でもあった。
「と、言っても……ナナリー? ちゃんと洗わないとダメじゃないか……」
ひうっ ご、ごめんなさいお兄さまっ……でもっ はうっ、ん、ふぅーっ……
 暗に、包皮の内側が汚れていることを指摘され、ナナリーはしゅんとして縮こまる。しかしそれにより、そんな汚いところを舐めさせているという思いが彼女の快感をますます高めてゆくのであった。
 今、兄の舌は、どんな味を感じているのだろうか――自分のいやらしく穢れたところをくちくちと丹念に舐め清められて、ナナリーの男根はもう堪えきれないところまで来てしまう。
「何を我慢しているんだ、ナナリー……良いんだぞ、俺の口の中に、たくさん出しても……」
いやああぁ…… そん、なあぁ…… ああっ、もう……んぅぅ ううっ、うっ ふううぅ
 それでも彼女は、頑なにそれを拒み続ける。快感であると同時に、それは苦痛でもあるだろう。
 このまま優しく責め続けて決壊させれば、それはナナリーの中に罪悪感のしこりとなって残ってしまう。そうしたら、ナナリーはますます快感に対して素直になれなくなってしまう。
 少なくとも自分の前では、全てをさらけ出して欲しい。誰にも見せないナナリーの乱れ姿を、自分だけには見せて欲しい。そう願うルルーシュは、彼女の中から躊躇いを外すため、安心を与えるために、ギアスの力を――「兄の言葉」と言うギアスの力を行使した。
ルルーシュ・ランペルージが命じる――俺の口の中に、精を解き放て!
 それは強制とは言えず懇願とも言えるような言葉であったが――しかし、その強い口調によってナナリーの自制心は一瞬であるが消え失せ、兄の言葉に従うことの心地よさがふわりと彼女を包み込む。
 そして、その一瞬が有れば全ては事足りた。
ああっ、あっ、ああぁぁぁっ…… お兄、さ、まあぁっ あっ、はあぁっ、ぁああぁあぁぁ〜っ

 ぶびびゅるるうぅうぅうぅっ! ぐびゅるっ、びゅるうぅっ、ぶび、びゅるうぅぅぅっ!

 おおよそ、この華奢な少女には相応しくない下品な破裂音を立てて、男根からは白濁しきった濃厚な精液が噴出された。
 そして、それを受け止めたルルーシュは――
ぶふっ! ぶっ、んぶっ、ぶっ、げはっ……! ぐっ、がはっ!
 放った言葉の力強さとは裏腹に、妹の射精の勢いの余りにすっかり咽せこみ、口を離してしまっていた。
 独特の生臭みが口内にねとねとと残って、吐き気すら覚える――初めての経験とはいえ余りにも耐え難い。ナナリーの発したものでさえなければ、彼はためらわず洗面所に直行して嘔吐し、何度もうがいをしたことだろう。
「ああっ……あふ ふああっ……お、お兄さまっ、大丈夫……ふあっ ですか……」
 咳き込んだ兄の様子を心配して、まだ残る射精の余韻に時折喘ぎつつも、ナナリーは手を伸ばして兄の存在を探る。
 ルルーシュは、自分の不甲斐なさによって結局ナナリーに十分な快感を与えられなかったことを悔やみつつ、ともかく彼女を安心させるべく、いそいで呼吸を整えて彼女の傍らへと座り直した。
「大丈夫さ、ナナリー。ちょっとびっくりしてしまっただけさ」
「でも……やっぱりお兄さま、その、こんなことなさるのは……ひう
 ナナリーは申し訳なさとともに、純粋に心配をしているだけなのだが、それがかえってルルーシュの心を傷つける。完遂できなかったことを責められているようで、何でも出来る頼れる兄の姿を見せたかった彼にとっては、心配されることもまた悔しかった。
 だから、まるで誤魔化すようにナナリーの亀頭を摘み、残っていた精液をぴゅるっと搾り出させる。
んひっ あう、はぁっ…… お兄さま、まだ、ふっ、あっ あふぅぅ
 一度絶頂を終えた直後だからか、ナナリーの喘ぎからは慎ましやかさが少々影をひそめ、代わりに素直な喜びが表に出てきているような気がする。果たして自分の口淫にどれだけの価値が有ったかは疑問だが、多少なりとも開放的になったナナリーの声を聞けただけで良しとしよう――と、ルルーシュは自分に言い聞かせた。
「ふぅ〜……ぅぅ、うぅ〜…… あの、大丈夫です、自分で……あぁ…… あぁっ
「ほら、そんな気持ちよさそうな声を出しているくせに。大丈夫だから、最後まで俺に任せてくれ……」
 射精を終えてまだ余韻にひくついているナナリーの男根の根本を支えて、ウェットティッシュで鈴口の周りを丹念に拭き取る――続いて、自分が口を離してしまったせいで出来た太股へのこびりつきや、幹全体の拭き取りも終えて、ルルーシュは少なくともアフターケアは万全に済ませた。
ふうぅっ はあ、ああぁ…… やあ……あ、あぁ ん、ふぅ〜……
 その間中、熱に浮かされたようなふわふわとした吐息を漏らすナナリーがますます愛おしく、彼はこのままナナリーに二度目の絶頂を迎えさせてやりたい欲求に駆られたが、しかしもうすっかり夜中である。
 自分はまだしも、ナナリーにこれ以上の夜更かしをさせるのはまずい――彼は冷静にそう判断し、されるがままになっている彼女の衣服も元通りに整えてやると、折れそうな細い肩を労うように叩いてやる。
「さあ、ナナリー、終わったよ……」
「……くぅ、すぅ……」
 兄の優しい言葉に応えたのは、小さく微かな寝息であった。どうやら、放出後の心地よさと疲労感のあまり、そのまま寝付いてしまったらしい。
「……やれやれ、手の掛かるお姫様だ」
 誰とも無しにそう呟いて肩をすくめ、ナナリーを部屋に戻すべく車椅子の後部ハンドルを手に取る。しかし、きぃ、と方向転換させたところで、
「……お兄さまぁ……もっと……」
 とナナリーが寝言を漏らしたものだから、ルルーシュは心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受け、くぁ、と呻いた。
 ――なんだっ……これは……!? 俺は、試されているのか!?
 今のでは物足りなかった……いや、これは次回への希望か……!? フェラチオだけではなく……もっと過激なプレイを要求されているのか!?
 それとも俺のフェラチオが下手だったから……もっと練習しろと……!? くっ、何と言うことだ!
 落ち着け、落ち着くんだ、ナナリーはまだそんなにエッチな娘ではない……
 そうだ、ナナリーはまだ甘え足りないのだ……無理もない、このところ忙しくて構ってやれなかったからな……
 では、このまま、俺のベッドに寝かせて、昔のように優しく抱きしめてやりながら……
 そうだ、それならまだ、お互いに納得がいく。朝起きたらナナリーは恥ずかしがるだろうが、大丈夫、兄に抱かれて眠るというのはそう異常な状況ではない。
 それに俺も、ナナリーの細い腰を腕に抱き、ふわりとした髪の毛の臭いに包まれながらベッドで……
 馬鹿め! そんな状況に置かれて、俺が我慢できると思うか! 冷静になれ、冷静に……!
 やはり、このまま部屋に帰してやるのが無難か……だが……それで、それで本当にいいのか……!?
 ――ひとしきり心中で苦悶する兄を余所に、ナナリーはこっくりこっくりと気持ちよさそうに船を漕いでいる。
 結局ルルーシュはその夜はナナリーを彼女の部屋に寝せ、自室に戻ると口をゆすぐのも忘れてベッドの上に丸まった。
 先ほどのような終わりのない自問自答を繰り返しながら、悶々とした思いに苛まれつつ、彼は眠れぬ夜を過ごす――魔王とさえ呼ばれる彼の唯一の弱点。それがこの可憐な少女、ナナリーの存在であった。


(終わり)