外は冬の雪が降って


名雪シナリオのネタバレ有りです。
ブルーハーツの「ハンマー」より。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

外は冬の雪が降って
私は部屋でひとりぼっち


大事な人が居なくなって
お母さんが居なくなって
暗やみに包まれる私の心

ねぇ、どうしたらいいの?
吐き出された疑問は
どこへもぶつかることはなく
空気のように溶けていった

冷たいフローリングの床を見つめる視線
壁まで進んで、また、戻ってくる

その、繰り返し
何の意味もない行為

部屋にうずくまる私
そんな私を見ているもう一人の私

「いつまでそうしているつもり?」
わからない

「祐一のことを、信じてあげないの?」
まだ…迷ってる

「このままで、いいの?」
やだよ…でも

私の視線は虚ろ
無色透明なガラスの玉

叩かれればすぐ割れる
そんな華奢なガラスの玉

ひび割れたガラスの玉を
拾い上げるのは誰?

ガラスの玉を優しく包んでくれるのは…


ふと
部屋の外から
誰かの
声がした

いつも聞き慣れた
従兄弟の声
幼なじみの声
コイビト、の声

いつの間にか
ふさがれる耳
ふさいでいるのは
私の手

耳をふさぐ手のひらを
軽く優しくときほどき
あなたの声は
心に届く

私は
それを聞いた

すべてを失った私の心
もう何もわからない
もう何も感じないはずなのに

なぜかな
目から
熱い物がこぼれ落ちるよ

床に
ぴとん と落ちる

泣いた

ひとしきり
泣いた

そして

立ち上がって、上着を羽織る

一息に涙を拭い、まっすぐ前を見る

もう一人の私が言う
「悲しみが多すぎて泣いてばかり居たって何にも見えなくなっちゃうよ」

泣いていても
お母さんは戻ってこない

泣いていたら
あなたは戻ってこない

まだ、足はふらふらするけれど

倒れたらあなたが支えてくれる

そんなあなたを信じて

ドアを
開ける

思いを伝えてくれた
目覚まし時計を
強く抱きしめる

窓の外には、雪が
雪が
降っていた


「ふぁいとっ、だよ」


いつも目の前にいたはずの
もう一人の私は
消えていた


希望の訪れを告げる雪が降って
私は玄関の戸を開けた



(終)



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
解説…
この作品は、私がブルーハーツの「ハンマー」を聞いたときに思いついた作品…それだけです。


Libraryへ   トップへ