大気的萌絵巻 異伝

(注)このSSはAirのネタバレを含みます。

このSSを、60000hit&PC復旧記念としてF.coolさんに捧げます。

*漢字解説
稚児…ややこ
蜻蛉…とんぼ
蟋蟀…こおろぎ

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裏葉と暮らし始めて何月になるだろうか。
俺は書をしたため、裏葉は修行に明け暮れる。
季節はゆっくりと移ろいで行く。
それと共に、背中の傷の疼きが酷くなるのがわかる。
以前のように動くのはすでに出来ない。
そればかりか、ふとした時に体が動かない。
そんな事が起きるようになってきた。



朝。
目が覚めると体が痺れ、動かなかった。

「…情けない」

満足に体が動かせないことに憤りのようなものを感じる。
が、どうする事もできない訳で、
仕方なしに寝直そうか、そう思った。



「あらあらまあまあ」



どこからか呆けたような声が聞こえる。
首を回しあたりを見回すと…



「裏葉…」



俺のすぐ脇に裏葉がいた。

「柳也さま、もう朝ですよ?
 天気もようございます」
「いや、体が痺れて動かないんだが…」

それを聞いた裏葉が、
悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべる。 

「ならば、起こして差し上げましょうか?
 稚児の様に手取り足取りと」
「…自分で起きる」

ものすごく不安を感じた俺は何とか起きようと試みた。
ぐっ、と上体を持ち上げる。
持ち上げる…



「…」
「動かないのですね?」
「く…」
「では、失礼して…」

がばっ、と布団を勢いよく剥がされる。

「あらあらまあまあ…」

裏葉は平静を装いつつも、
やはり動揺しているようでわずかに声が震えていた。

「ここは痺れていらっしゃらないので?」
「…」
「まぁ…」
「…いいから布団掛けてくれ」

一点を見つめつづける裏葉に声を掛けると、
気まずそうに赤面しながらも布団を掛けなおした。

「やはり自分で起きる…」
「お体は動くのですか?」
「ああ、すぐに直るはずだ…」

体を起こそうとすると、
まだ僅かに痺れる部分もあったが問題があるほどではなかった。
もっとも、五体満足にはなれそうもなかったが。

「ふう…」
「散歩でも致しましょうか?」
「そうだな…」

正直、体が言うことを聞かない朝は気が滅入るので、
その申し出を喜んで受けることにした。
気晴らしには丁度いい。
裏葉は旅をしていた時の服を着ていた。
気晴らしならそのほうが良い、そう言って。



「ご覧ください、外はもう秋でございます」
「ほう…」

外に出る間を削って書を書いていた俺は、
秋になっている事にすら気づかなかった。

秋の風は夏のそれよりはるかに涼しく、
山は緑から黄や赤へと色を変えていた。
蝉の声も何時の間にやら消え、
夜には蟋蟀や鈴虫が鳴いていた事を今更気付く。

裏葉の肩を借り少し歩いたところで適当な場所を見つけて座る。
それに合わせ裏葉も隣に腰をおろした。

「秋だな…」
「秋でございますね…」
「蜻蛉か…」
「ええ…」

空を見上げると、
雲はゆっくりと動き、
その下を蜻蛉が飛んでいた。
他には、時折風に揺られる木の葉が流れていく。
穏やかな日だ。
おもむろに仰向けになる。
そうすると、空が近いような、そんな錯覚を覚える。



「空を…見ていらっしゃるのですか?」
「ああ…何だか、神奈が近くに感じられる、そんな気がしてな」
「そう、ですか…」

歯切れの悪い声で裏葉が呟くように応える。

と、俺の頭が浮き、柔らかい物に乗せられる。

「裏葉…?」
「膝枕、というのも悪くはないでしょう?」

上から覗き込むようにして裏葉は微笑んだ。



柔らかい感触が心地よく頭を包む。
どこか、安らぎを覚える温かさ。

…が、どことなく頭の位置が定まらないので、
少し頭を動かす。

「ん…」

すると、裏葉がくぐもったような声を出す。

「どうした?」
「いえ、何でも…」

まだ頭に違和感を覚える。

もぞもぞ…

「ぁ…ふ…」


裏葉は恥ずかしそうに身よじらせている。



キュピーン!

第六感が何かを告げた。



もぞもぞもぞもぞ…

「ん…はぁっ…
 り、柳也さま…」


ぼふっ

うつ伏せになって顔を埋める。

すりすり…



「あっ…!」




さらに手を衣の隙間から滑り込ませ這わせる。



「ひぅっ!?」



さわさわ…



「あっ…やあっ…!」



びくびく体を震わせながら裏葉は消え入りそうな声で訴えた。



「り、柳也さま…
 御無体でございますぅ…」

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失敗?(滅



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