いたづら秋子さん くすぐっちゃいます
このSSはAJI's temporaryに差し上げたものですが、
先方の頂き物コンテンツ廃止に伴い返却されたものです。
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特に汗ばむでもなく、柔らかな風が吹く過ごしやすい日曜日の午後。
初夏の陽気は今日に限って優しく、春のようにうららかです。
とはいえ、特にする事はなく……
買い物を終えた私は、居間のソファに座って文庫本を読んでいます。
それは祐一さんも同じ事らしく、私の対面に浅く腰掛け、気怠そうにマンガ雑誌を眺めています。
ちなみに、名雪は今日も陸上部の練習だそうで、朝早くから家にいません。
ふああ……
あくびが出ちゃいます。
あら いやぁ
祐一さんに何事かと凝視されてしまいました。
だらしなく口を大きく開ける私
いや 恥ずかしいです
祐一さんは何事も無かったかのように視線を元に戻しますが、ばっちり見られてしまいました
うぅ もう 祐一さんったら
ちょっと許せません
え いえ 別に それをダシにしてとか そういうことではありませんが
なにか、久しぶりに祐一さんにいたづらしたい衝動に駆られてしまいます。
でも、何が良いでしょう。
今は特によいシチュエーションにも恵まれてませんし……
……あ、そうです
思いついちゃいました♪
「……祐一さん♪」
私は猫なで声で祐一さんを呼びます。
「……なんですか?」
祐一さんはマンガ雑誌を横に置いて、いぶかしげにこちらに近寄ってきます。
「さっき、私のあくびした顔をじっくり見てましたね?」
「え、はぁ、まぁ」
「恥ずかしかったんですよ」
「う、すみません」
うふふ、祐一さんは素直で可愛いですね。
でも……
「お仕置きです♪」
私はそういうと、両手をさっと伸ばし、祐一さんの脇腹をツンっ、とつつきます。
「ぐあっ」
のけぞる祐一さん。
あらあら、凄い反応です。
うずうず
なんだか、とっても楽しいです。
「えい、えいっ♪」
二度三度と祐一さんの脇腹をつつきます。
勿論祐一さんはガードしようとしますが、慌てて居るので完全には防ぎきれなくて、
「ぐおっ」
とか、
「ぬぁっ」
とか、とっても可愛い声を上げてくすぐったがります。
うふふ〜 祐一さんの意外な弱点、発見です。
と、祐一さんは荒い息を吐きながら私に向き直ります。
「はぁ、はぁ……」
あら 祐一さん 興奮してるみたいで
ちょっぴりえっち いやん
「……あ、秋子さんっ、なんてことをするんですかっ!」
あ 祐一さん、怒っちゃいやいやです
ちょっとした 軽いいたづら スキンシップじゃないですか
「もう、くすぐるくらい、どうってことないじゃないですか」
私は悪びれずそう答えます。
すると……
「……じゃあ、俺が秋子さんにやっても構いませんね?」
え?
祐一さんはニヤリと笑うと、きょとんとしてる私の脇腹を……
あ いや いや やめっ
つんっ
はふっ 妙な気分
でも 残念でした♪
私は、脇腹はあんまり敏感じゃないんです。
「……あ、あれ? あれ?」
余裕の笑みを浮かべる私に、祐一さんは焦りつつ何度も脇腹をつつきます。
つん つん
うふふ 効きませんよ
つんか つんか
あ でも その
つんつん つんついつん
そ、そんなにされると 違う意味で妙な気分に
「……くそっ」
祐一さんは躍起になって、私の脇腹をむんずとつかみます
あ だめ
ふにょふにょふにょ
くすぐったくはないんですが はンっ!
ふよふよ ふにゅっ
あくぅっ…… あ、なんだか、頭の中が熱を帯びてきたように……
ぼんやりしてきちゃって…… ひゃぅ……
「はぁっ…… だめぇ 祐一さん、許して……」
私が熱い吐息混じりにそうお願いすると、祐一さんははっとして、
恍惚とした表情になってしまった私を認め、慌ててその手を離しました。
ああん 残念
違います
私は気を取り直して、祐一さんに優しく話します。
「……ね、祐一さん。私に脇腹くすぐりは効かないんですよ」
「そのようですね……」
祐一さんはちょっと悔しそうに、再びソファに座ります。
と、そこへ、
「ただいまー」
あら 名雪のお帰りのようです。
「お帰り、名雪」
まもなく、名雪が居間へ姿を見せます。
「うん、ただいま、お母さん」
「……名雪、ちょっと来て見ろ」
何でしょうか、祐一さんが名雪を呼び寄せます。
「うん? なぁに」
とてとてと祐一さんに歩み寄る名雪。
すると祐一さんは突然立ち上がり、おもむろに無防備な名雪の脇腹を
つんっ。
「きゃぁっ」
びっくりして、へにゃんと崩れ落ちる名雪。
ゆ、ゆ、ゆ、祐一さん!
私の見てる前で、名雪にセクハラ……
……じゃないですね。
「あれ? ……おっかしいなぁ……」
祐一さんは首を傾げています。
きっと、私に通用しなかったから、娘の名雪で確かめてみようと思ったのでしょう。
でも、名雪は私とは逆に脇腹がとぉっても弱いんです。
「なぜだ、名雪!」
「わたしがききたいよ〜 いきなりなんなのっ」
名雪が憤慨して立ち上がります。
「う〜…… まだこしょばゆいよ〜」
気持ち悪そうに脇腹をさする名雪。
「すまん、名雪。しかし、お前には効くんだな」
「何のこと?」
名雪が首を傾げます。
その隙に私は名雪の背後に忍び寄り……
「こういことよ」
つんっ。
「きゃんっ」
またもへにゃへにゃと崩れる名雪。
「もおっ、お母さんまで、何するのっ」
眉を八の字によせ、私を非難します。
だって、仕方ないじゃない。
くすぐったがる名雪が、あんまりかわいかったんですもの。
うふふ。
……と、私が微笑んでいると……
「……うーっ、お母さんの弱いところは知ってるんだからねっ」
え?
立ち上がった名雪は、おもむろに――――
え、その、まさか、名雪、やめ――――
私の―――
脇の下を。
こしょこしょっ。
「はゅぅんっ」
ふゃあっ
だめ 駄目なんです、脇の下はっ
「ご、ごめんなさい、名雪、許して」
「だーめだよっ」
そんな ひどい
かしゅかしゅかしゅ
脇の下で動き回る名雪の細い指
「ひんッ……」
も、もうだめぇ
私は、先ほどの名雪と同じように床にへなへなとしちゃいます。
その様子をみた名雪は、
「さ、祐一も」
と、私の腕を持ち上げ……
ええっ そんなっ まさかっ
振り払おうにも、まだくしゅぐったさが後を引いて、力が入りません
私は祐一さんを見つめます
「……祐一さん、まさか、そんなひどいこと、しませんよね?」
うるうる
でも ああ 祐一さん
あなたはなんて人なんでしょう
「……え、あ……じゃ、せっかくだから」
と、いやがる私の脇の下におそるおそる手を伸ばし……
いやぁ やめて はぅん
こんな無理矢理に
祐一さんに 陵辱され
違います
ちょっとあこがれ
それも違います
その間にも、祐一さんの手は私の脇の下に――――
あ あ あ あっ
ちょんっ
「はみゅっ」
祐一さんは遠慮して軽くさわる程度に留めてくれましたが、
それが逆に過敏になった私の神経を刺激してっ
「あふっ んぃっ……」
と、私がくすぐったさに負けてはしたなくも悩ましい声をあげると、
あら? どうしたのでしょう
祐一さんは突然前屈みになって、
「……のわっ、すみませんでしたっ」
……と、慌てて居間から出ていってしまいました。
ぽつん。
残されて、あっけに取られる私たち親子。
その隙に、私は名雪の腕からなんとか逃れます。
名雪が、「あっ」と気づいたときにはもう時すでに遅し。
うふふ。
「な、ゆ、き♪」
「な、なぁに、お母さん」
ゆらりと近寄る私に圧迫感を覚えたのか、名雪はじりじりと後ずさります。
私は間髪入れず、名雪の脇腹に手を伸ばし……
「えいっ♪」
「ふにゃっ」
うふふ、お母さんを辱めたことは、まぁだ許しませんよ〜♪
つんつんつんつん
「ふにゅっ、やあっ、お母さん、ごめんなさい〜」
私の腕の中でくにゃくにゃ動き回る名雪。
そして、私が気づかないとでも思ってるのか、
何故か前屈みでその様子をドアの隙間からのぞき見てる祐一さん。
今日もこの家は賑やかで、
とっても楽しい日曜日の午後でした。
(終)
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