いたづら秋子さん とりあえず北川さんです





 ううん

 私は悩んでいます

 最近の祐一さんは なんだか私のいたづらに慣れてきたようで

 どうも新鮮な反応が返ってきません

 いえ 馴染んでいる方が身体の相性も
 違います

 どうせでしたら 新しい相手が欲しいです

 なんだかえっちな響きですね

 別にえっちの相手でも
 違います

 だめだめ 欲求不満でしょうか 私

 落ち着きましょう すぅ はぁ

 あ

 そこで私は思い当たりました

 確か あの子

 祐一さんのお友達の 北川さん

 可愛い顔立ちで きっと うぶな子に違い有りません

 うふふ

 いたづらしたら とても楽しそうです

 そうですね、では――――







 と、今日はちょうど良く、祐一さんが北川さんを連れてきてくれました

 ナイスタイミングです

「ども お邪魔します」

「はい ごゆっくりなさって下さいね」

 あら 顔をそらされてしまいました

 照れて居るんでしょうか

 やはり 可愛い子ですね

 その時

 ぷるるるる

「あら 電話」

「あ 俺が出ます」

 祐一さんが受話器を取り上げます

「もしもし ――――なんだお前か は? ああ ああ…… わかった 全く仕方ないな」

 かちゃん

「なんか 名雪が陸上部の記録ノートを忘れたらしいので 届けてきます」

 まぁ まるであつらえたようなシチュエーション

「いってらっしゃい♪」

「……秋子さん どうして声が弾んでいるんですか」

「気のせいです♪」

「……行って来ます」

 ばたばた

 祐一さんが行ってしまいました

 さて

「北川さん」

「な なんでしょう 秋子さん」

 うふふ どぎまぎしているようです

「ちょっと お相手をしていただきたいんですが」

「え そんな 相手だなんて」

「そうよね こんなオバサンの相手なんかしたくありませんよね」

「い いえ そんな意味じゃ」

「それでは こちらへ来て下さい」

「え その ちょっと」

 私は北川さんをお部屋に連れ込みます――――







 ……ふぅ、全く名雪も、そそかっしいな。

 家に残してきた北川は、どうしてるだろうか?

「ただいまー」

 ……しーん

 無反応。

 あれ?

 おかしいな……

 おや? なんだか、奥の方から話し声が……

 秋子さんの部屋からか?

 この声は、秋子さんと…… 北川!?



「はぁはぁ 秋子さん 俺はもう限界です」

「まぁ 男の子なんですからもう少し頑張って下さい」

「ああっ 掴まないで下さい」

「うふふ 太くて たくましいんですね」


 ……な、何やってるんだ!?

 俺は驚いてドアに耳を寄せ、向こう側の話し声を聞き逃すまいとする。


「さあ もう少しですから」

「ああ…… そんな 巻き付けるように」

「うふふ ほら 糸がこんな風に」

「それでは……」

「あ 口でくわえるなんて」

「もごもご」

「うう 限界です 我慢できません」


 お、おいおい!

 俺は我慢できずに、ドアを開け放った。


「何してるんだ、二人とも!」


 そこには。




























 口に糸をくわえている秋子さんと、その糸の束を両手に巻いている北川が居た。




「……あれ?」

「あら 祐一さん お帰りなさい」

「相沢」

「あ、あの、何を」

 俺はもうしどろもどろだ。

「北川さんに糸巻きを手伝って貰ってるんです」

「結構重労働ですね これ」

「ええ 両手をあげてないとなりませんからね ……はい 終わりました」

「はぁ 疲れた」

「お疲れ様です」

「おや 相沢 何を固まってるんだ」

「本当 どうしたんですか祐一さん」

「……う」

「う?」

「……うわぁぁぁっ!」

 俺はその場から逃げ去った。







 うふふ……

 祐一さん、予想通り誤解してくれましたね

 これこれ、この瞬間が楽しくて仕方ありません

 いけないとは思っていても ついつい

 ごめんなさいね 祐一さん


「あの」

 あら 北川さん

「じゃ 俺も」

 そう言って 立ち上がろうとします

「今日は有り難うございました」

「へ? い、いえ」

 北川さんをダシにしたみたいで ちょっと罪悪感です

 それなら

「なにかお礼がしたいのですが」

「え そんな お礼なんて」

「何でも良いですから」

「な、何でも……?」

 ごくり、と北川さんが唾を飲み込みます

 北川さんったら 何を考えて居るんでしょう

 もし 身体を要求されたら

 いやん 困ります

 困っちゃうだけですか

 そうですね

 嬉しいです
 違います

「あ、あの、それでは」

「あ はい」

「こ、ここに……」

 そう言って 北川さんは自分のおでこを指さします

 おでこ

 おでこですか

 なんでしょうか

 あ ひょっとして

 うん それくらいなら

「いいですよ」

「ほ、本当ですか」

 北川さんは嬉しそうな顔をして、目を閉じました。

 私は、そのおでこに向かって……













「えい♪」

 つん。


 つっついてあげました。


 ……こんなことしてほしいなんて、北川さんも変わった子ですね。


 あら? なんだか、北川さんが意外そうな顔になりました。

 そして、みるみる悲しそうな顔になったかと思うと……

 再び、ぱっと顔を輝かせて、

「これはこれで!」

 と、嬉しそうに二階へ行きました。

 あらあら。


 賑やかで、楽しい人ですね♪







(終)


このSSは、緑神さんに差し上げた物ですが、先方のサイト閉鎖に伴い、返却させていただきました。


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