いたづら秋子さん 白い恐怖です ――その後


一応、前回の続きと言うことです(^^;
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 いたたた……


 危うく名雪に砲丸で殴り殺されそうになった俺は、急いで自室に逃げ帰っていた。

 もちろんソレくらいで名雪が諦める訳じゃない。

 追いかけてきて、ドアを開かれたところで、おもむろにズボンを脱いでやった。

「祐一、許さな……わっ! わっ! わっ!」

「着替え中だ」

「やっ! ばかっ! えっち!」

 ……名雪はどんがらがしゃーんと帰っていった。

 正当防衛、成功。

 いや、決して俺に露出癖があるわけじゃ。

 そりゃあ少しは興奮……してない! してないっての!


 ……ふぅ。


 とにかく、脅威は去った。


 ……と、俺が安堵の息をもらしていると――――


 とん、とん


 遠慮がちなノックの音。


 げ、またか?

 しかし、

「……祐一、着替え終わった?」

 もじもじと、恥ずかしそうな名雪の声。

 ――――どうやら、怒りは冷めたらしい。

 ふぅ〜 ……安心。

「おう、なんだ」

 張りつめた緊張が解けたところで、返事をすると、ぎぃ、と遠慮がちにドアが開く。

「……あ、あのね、祐一」

「ん」

「さっきはごめんね」

「俺は死ぬかと思った」

「おおげさだよ〜」

 ……いや、事実だと思うが。

「……それでね、お母さんから聞いたよ」

 ……げ

「祐一は、お母さんの白髪を抜いていただけだったんだね……」

 ……ほっ、どうやら、事実のみが伝えられたらしいな。

「それでね、祐一……」

 名雪がこちらにすり寄ってくる。

 一人前に流し目なんか使って……

 な、なんだか色っぽいな……

 いつものほけっとした名雪とは思えない。

「な、なんだよ、名雪……」

 俺はどぎまぎしながら答える。

 すぐそばに名雪。

 耳を澄ませば、互いの鼓動さえも聞こえてきそうな程の距離。

 こ、これは、もしかして、名雪……

「あのね、私にも……」

 私にも?



「私の白髪も抜いてっ!」

 ぼんご。

 俺は名雪のつやつやの頭頂部に一撃を与えた。



「……生えてるわけないだろっ!」

「痛いよ〜」

「軽く撫でただけだ」

「じゃあ撫でて」

「へ?」

 俺は聞き返す。

「……痛かったよ」

 ……力加減はしたつもりだが……

「……本当に、痛かったんだから」

 恨みがましくこちらを見る名雪。

「そ、そりゃ悪かった」

 とりあえず謝る。

「本当に、悪いと思ってる?」

 口をぷうと尖らせて、上目遣いにこちらを伺う。

 ……やっぱり、可愛いと思ってしまう。

「ああ、もちろんだ」

「じゃあ……」

 じゃあ?

「撫でて」

 ……なに?

 良く理解できてない俺に、名雪が言葉を重ねる。

「撫でて、って言ったの」

 ……撫でてって……

 もしかして、なでなで?

 名雪は、なにか期待に溢れた目でこちらを見ている。

 ま、いいや。

 これで機嫌が直るんなら……

「……こうか?」

 俺は、名雪の頭に、優しく手のひらを乗せる。

「あ……」

 そのまま、ゆっくり動かす。

「ん……」

 名雪は、気持ちよさそうに目を閉じてしまった。

「……お前は子供か?」

「子供でいいもんっ」

 名雪が拗ねたそぶりをする。

 本当は、お前は秋子さんか? と言おうとしたが、
 それで下手に勘ぐられては拗ねるそぶりどころか取り返しの付かないことになりそうなので、すんでの所で抑えた。

 なでなで……

 名雪の髪の毛は、秋子さんとはまた違う心地よさに満ちていた。

 ゆっくり、しっとり、なでなでは続く。

「……うにゅ」

 おい、寝てるんじゃないだろうな。

 名雪は、ずいぶん無防備な顔で、俺に全てを委ねている。

 まったく、こいつと来たら……

 こいつと来たら……?

 ……ふと、俺の心に邪心が沸き上がる。

 ――――今なら、キスしてもばれないんじゃないだろうか――――

 もう一度、名雪の顔を見る。

 気持ちよさそうに、ゆったりしている。

 い、今なら……

 い、いやしかし。

 だけど、殺されそうになったんだから、このくらいは……

 だめだ、そんな。

 ……でも、俺と秋子さんを見て怒るって事は、こいつは本当に俺のことを……

 うう。

 あああ。

 俺は誘惑に負け、だめだ、だめだと思いつつも、だんだんと顔を近づけて、もう少し、もう少しで唇が――――










「……そうっ、そこですっ、祐一さん、もっと思いっきり――――」











「……なにやってるんですか秋子さんっ!」

 ドアの隙間から妙な応援をしていた秋子さんに怒鳴る。

「……え?」

 あああ。名雪が気が付いてしまった。

「あ、あらあらあらあら」

 秋子さんははっとして、ばつの悪そうな恥ずかしそうな顔になる。

「あらあらじゃないですよ、なにしてるんですか!」

「……え? その、えっと、お夕飯の準備……」

「……言い訳は良いですから、早く行って下さい!」

「そんな……」

 しゅん、とした顔になる秋子さん。

「俺達も下に行きますから! さぁ!」

「……それなら……仕方ないです」

 大方、自分が居なくなったところで行為がエスカレートしちゃうのでは、なんて思ったんだろう。

 全く、困った人だ……

「もうっ! お母さん!」

 ほら、名雪も言ってやれ!

「覗くんなら、ばれないようにしてよね!」

 そうそう――――え?

「ごめんなさいね二人とも。今度は、ばれないようにするわ」

「うん、そうしてよ」


 ……こ、この親子は……


 俺は頭を抱えるよりほか何もできなかった。






(終)


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なんか、微妙に壊れてきてますか?
危ないですね(^^;

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