祐一、マッサージをされる。(後編)
F.coolです。
マッサージ話の後編です。
祐一が佐祐理さんと舞にマッサージされると言う、ただそれだけの話です・・・
最後にちょっとオチはありますが。
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ベッドに寝そべった俺に、舞が声をかける。
「じゃ、次は腰から背中・・・」
それを聞いて、佐祐理さんが、
「あ、今度は佐祐理がやりたいな」
「・・・じゃ、祐一の上に座って」
「こう?」
佐祐理さんはそういうと、俺の太股の付け根あたりに、ちょこんと腰を下ろした。
ふに・・・・
ああ・・・またこの甘美な感触が・・・
「ここに、親指を当てて・・・」
「うん」
佐祐理さんが舞に言われるまま、俺のウェストのちょっと下辺りの、背骨の両側に指をつける。
「体重をかけて、押す」
「うん・・・よいしょ」
ぐい
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ
痛い痛い痛い痛い痛い!!!
俺は佐祐理さんの手加減を知らない指圧に、痛みの極限を認識した。
「ぐああ」
俺ののどからは哀れなうめき声しか上がらない。
「どうですか、祐一さん。気持ちいいですかーっ?」
ぐい
あああ、さらに!
「ほふ、ほふ」
訳の分からない声が絞り出される。
「・・・効いてないのかな?」
違う違う!
でも、やっぱり
ぐいぐい
ぎああああああああああああああああ!!!!
「・・・佐祐理、ちょっと待って」
さすがに舞が佐祐理さんを止める。
「ふぇ」
「・・・力入れすぎ」
「そうなの?」
佐祐理さんが慌てて力を入れるのをやめる。
さんきゅー、舞、助かったぜ・・・・
俺は全身の緊張を解き、呼吸する。
「あ、祐一さん・・・・大丈夫ですか?」
佐祐理さんが俺の様子をうかがう。
「・・・・死ぬかと思った・・・・」
「あははーっ、祐一さんたら、大げさですね」
・・・・いや、本気だけど・・・・
「でも、ごめんなさい・・・痛かったですか?」
そういって申し訳なさそうな顔をして俺をのぞき込む。
「あ、いや・・・」
佐祐理さんにこういう顔をされると、俺も困ってしまう・・・
「気にしないで・・・誰にでも失敗はあるからさ」
「ありがとうございます・・・でも、やっぱり佐祐理には無理みたい」
そういって佐祐理さんは、ちょっと悲しそうな顔をして、舞を見る。
「ね、だから、続き、お願いね」
「・・・わかった」
コクン。舞がうなずく。
程なく、佐祐理さんのお尻が遠のき、今度は・・・
ふの
・・・・う〜む・・・・佐祐理さんの小振りなお尻もいいけど・・・
ふの、ふの
この、量感のある舞のお尻もいいなあ・・・
「はぇ?祐一さん、どうしました?鼻の下、伸びてますよーっ」
おおっと・・・いかんいかん・・・・
舞のつっこみチョップが入る前に、俺は慌てて顔を引き締めると、舞に続きをしてくれるよう促した。
「・・・・背骨沿いから・・・」
そういうと舞は、腰の辺りから背骨に沿って、だんだんと上に上がっていくように
マッサージを始めた。
ぐい・・・ぐい・・・
さすがは、舞・・・力のいれ加減を心得ている。凝り固まった筋肉が、一つ一つほぐされていくようだ。
ぐい・・・ぐい・・・
非常に、気持ちがいい・・・が、どちらかというと・・・
ふの
舞が体重を移動する度に、俺の太股で上下に移動する舞のお尻の方が・・・
ふのふの、ふのふの
とても柔らかくて・・・・気持ちいいなぁ・・・
ふのふの、ふのふの
暖かい・・・舞の体温が俺の太股で移動する・・・ぬふふ〜
俺が柔らかな快楽に浸っていると、突然舞のお尻の動きが止んだ。
・・・正確には、指圧部分が首の付け根まで来たので、背骨のマッサージに一段落つけたようだ。
「次は・・・・」
おう、次は何だ・・・俺は気持ちいい予感に、全身の力を抜き、次の行動を待つ。
「佐祐理、祐一をおさえてて」
「うん」
佐祐理さんが、俺の腕を押さえ込む。
・・・・って、おい、
またか?またなのか?
俺の予感もつかの間。今度は、くすぐったくはなく・・・・
「まず、天宗(てんそう)」
ぎゃあ!
肩胛骨の外側から始まって、背中全体に激痛が迸る!
逃げようにも俺の体は二人に押さえつけられ、身動きがとれない!
俺は舞の親指から4kgの重圧をかけられ、実際は5秒間ほどだったようだが、その時間は無限にも思えた。
ぴったり固定された体とは裏腹に、痛覚に弄ばれた俺の意識は闇の中をのたうちまわった。
すっ・・・と痛みが引く・・・
俺は全身から息を吐いて、安堵する。
それもつかの間!
「臑兪(かんゆ)」
ぎゃああ!
今度は腕の付け根!
「肩井(けんせい)」
ぎゃあああ!
肩の中心!
「風池(ふうち)、天柱(てんちゅう)」
ぎゃああああ!
髪の生え際!
さらにそこからぐぐっと力を入れたまま下に移動していって・・・・
「厥陰兪(けついんゆ)」
ぎゃ、ああああああ!
肩胛骨の内側!
激痛のオンパレード!
俺の神経は完全に沈黙した。
はふ。はふ。はふ。
俺はあまりの痛みに全身を弛緩させ、生ける屍のようにぐったりする。
・・・・・・・お前は、すでに死んでいる・・・・・・・
茫然自失状態の俺の頭の中に、なんとなく、そんなセリフが浮かんだ。
舞が再び動く気配がする・・・
まだやるのか!もう許してくれ!
しかし・・・・
すりすり、すりすり・・・・
舞は手のひらで俺の背中を微妙な力具合で撫でさすり始める。
おお・・・癒やされる・・・
「仕上げ」
そうか・・・これで終わりか・・・・
すりすり・・・
静脈の中の血液が・・・循環していく・・・
筋肉が、優しくもみほぐされ、喜びの声をあげているようだ。
先程までの神経の痛みもどこかへと消えゆき、入れ代わって落ち着いた快感がもたらされた。
マッサージは、すりすりが肩口まで及び、それがもみもみに変わって、そして、終わった。
「・・・終わり」
「終わりか、ふう・・・」
俺は息をつくと、う〜んとのびをする。
ふむふむ、やはり・・・思っていたとおり、いや、それ以上に肩が良く動く。
今まではこれが普通だと思っていたのに、筋肉中の疲労物質や老廃物が追い出されたせいか、
実にスムーズに肩が動く。
起きあがってみても、今度は背中や腰がだいぶ爽快に感じられる。
血液の循環が良くなり、気づかなかった筋肉の疲労がどこかに吹き飛んだようだ。
もともと健康だったはずなのに、これほど効くとは・・・・
「祐一、慢性の肩こりと腰痛だった・・・」
「祐一さん、苦労性ですからねーっ」
そんなことまでわかったのか、さすが、舞。
・・・しかし、なるほど。それなら、俺が気づかなくてもしょうがない。
こういってしまっては違うような気もするが、俺は、奇妙なまでに楽になった全身を確認し、
自分の体がとても健康になったように思えた。
「舞、ありがとな・・・」
と、俺がお礼を言おうと振り向くと・・・
「・・・・・」
舞は、顔中に汗をダラダラとかいて、だいぶ苦しそうに肩で息をしていた。
・・・・・・
そうか・・・マッサージって、重労働だもんな・・・俺のために、ここまで・・・
俺は舞に心の中で溢れんばかりに感謝した。
「舞、・・・本当に、ありがとうな」
「別に、いい・・・」
「舞、大丈夫?苦しそうだよ?」
「大丈夫・・・つかれただけ・・・」
俺はだんだんと申し訳ない気持ちになってきた。そもそもは向こうから言いだしたことだが、ここまでしてくれたならば、なにかお礼をしなければな・・・
「舞」
「?」
こちらをきょとんと振り向く。
「こんど、お礼に牛丼おごってやるよ」
表面上はいつもと変わらないが、舞の顔からは途端に疲れが消え、パッと輝いた・・・ような気がした。
「牛丼・・・嫌いじゃない」
「もちろん、佐祐理さんも」
「え?いいんですか?」
「ああ」
これぐらいの出費、この二人が喜んでくれることと、健康になった俺の体とを比べれば、安い、いや、安すぎるくらいだ。
「ありがとうございますーっ」
「祐一、ありがとう」
俺は二人にこれ以上無いほど感謝される。やれやれ、感謝するべきは俺の方なんだが・・・
*
さてはて。マッサージも終わり、俺達はいつも通りくだらない話に花を咲かせていた。
「そういえば、舞・・・よくあんなにツボの名前知ってたねー」
佐祐理さんの問いに、舞は、さらりと一言。
「・・・勉強した」
「ふぅん・・偉いねー」
「・・・そんなこと無い」
意外に勉強熱心な舞のことだ。剣術修行の一環として、学んだのだろう。多分。
ところが・・・
「・・・祐一や佐祐理に喜んで貰おうと思って」
舞が多少照れた様子をみせながら、殊勝なことを口にする。
う・・・ん、悪い気はしないな・・・むしろ、嬉しいぞ、舞。
俺はちょっと照れて頭をぽりぽりとかき、再び舞に感謝する。
「そうか・・・ありがとうな」
「あははーっ、舞、やさしいねー」
佐祐理さんも嬉しそうだ。
「そんなこと、ない」
そういってそっぽを向く。
こいつももうちょっと素直になればいいのに・・・ま、それが可愛い所とも言えるわけだが。
「あ、そういえば・・・・」
佐祐理さんが思いついたように声を上げる。
「なんだ?」
「佐祐理も、良く効くっていうツボをひとつだけ、聞いたことがあります」
「へぇ・・・どこのツボなの?」
「えっと・・・・あははーっ、名前だけで、そこまでは知らないんですよ」
「ツボの名前は・・・?」
「舞ならわかるかな?あのね・・・・」
俺達がうなづくと、佐祐理さんは一言、
「・・・・・・・前立腺ってどこなんですかーっ?」
俺と舞は同時に激しくむせ込んだ。
(終わり・・・?)
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・・・F.coolです。
読んで下さって、有り難う御座います。
自分なりに、テーマは、それなりに果たせたと思います。
「ふのふの」の人気にはびっくりしました(笑)
オチは、・・・不問と言うことで(爆)お願いします。
では、次回「祐一、秋子さんにマッサージする。」でお会いしましょう。
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