祐一、自分にマッサージする。
「ふう…」
ため息をつきながらベッドに座り込む。
最近みんなにマッサージして回ってたせいか、ちょっと体が疲れ気味だ。
でも、マッサージという名目で人の体を触りまくれたのは、俺の一生涯
の中でもかなりおいしい体験だったな。(北川の時は除く)
ウヘヘ……
思い出しても顔が緩む。
おかげでマッサージの腕前もかなり上達したし。
たまにはその腕を自分に使ってみようか。
そんなことを思いながら、ちょっと凝っていた自分の方をぐいぐい揉んでいく。
疲れがたまっていたところを中心に、
首筋から肩、腰へと、
……
…ん、
なかなかどうして、
結構気持ち良い。
舞ほどじゃないが、確かに俺のマッサージのテクニックは上達していた。
……
……う、ううんっ、
………くっ、
てっ、手が届かない。
腰とか腕、足のような、自分の手の届くところはあらかた終わったのだが、背中の
真中へん、肩甲骨付近にあるつぼは、自分で押すにはちょっと苦しい。
「やっぱり、マッサージは人にしてもらうのが一番だな。」
何となく思ったことを口にしてみる。
すると、
がちゃっ!
部屋の扉が突然開く。
「そうだよね祐一。 マッサージはしてもらうのが一番気持ち良いよねぇ〜。」
何時からいたのか、名雪が入ってきた。
その表情はどこか嬉しそうだ。
「だったら、やってあげるよ。」
「え?」
「やってあげるよ。 マッサージ。」
名雪からの突然の嬉しい申し出。
もちろん断る理由は無い。
「そうか、じゃあ頼むよ。」
「うん。 ちょっと待っててね、すぐ戻るから。」
そういって、少し急ぎ気味に部屋を出て行く名雪。
あれ、どこへいくんだ?
そうか、あいつ制服のままだったから着替えに行ったんだな。
あの格好は少し動きにくいもんな。
…しかし、
うう〜ん。 因果応報、人に与えた恩(?)は返ってくるもんだなぁ〜。
これから名雪にマッサージしてもらうところを想像してみる。
……あの陸上で鍛えたしなやかな脚が俺の背中をまたがって、
さらに、あのプニプニした柔らかいお尻(確認済み)が俺の腰の上に…
…
……
…じゅるっ!
い、いかん、余計なことまで妄想してしまった。
そのとき、
「みんな、上がって上がって。」
一階の、玄関の方から名雪のそんな声が聞えた。
なんだ?
みんな??
やがて、「お邪魔しまーす。」とか、「…失礼します。」とか、数人の人
間の声が聞えるてくる。
ドタドタドタ
一団は階段を駆け上がってまっすぐこっちに向かってくる。
「こんにちは祐一君っ。」
「元気そうね」
「ここが相沢さんの部屋ですか…。」
よ〜く知っている顔が俺の部屋に侵入してきた。
あゆと香里、そして天野だ。
「ふふ、この日を待ちわびたぞ相沢。」
北川までいる。
何故かみな一様ににやけたような笑みを浮かべていた。
「ど、どうしたんだお前ら…、 名雪? どういうことだ??」
わけがわからず、俺は名雪に説明を求めた。
「マッサージ、だよ。」
「へ?」
「だからマッサージだよ。」
それはさっき聞いた。
「じゃあなんでこいつ等がいるんだ?」
「それはね祐一君。」
あゆが代わって話し始める。
「ボクたち、祐一君にマッサージしてもらったよね。」
にこっ。
ぞくっ!
そういって微笑むあゆに、何故か俺は背筋に冷たいものが走った。
この笑顔は危険だ。
俺の本能からの警告。
「だから、今日は…。」
「みんなで相沢君にお返ししてあげようと思って集まったのよ。」
「…ほんのお礼ですから。」
「うふふふぅ〜。 あの時は世話になったからなぁ、え? 相沢ぁ〜。」
やばい!
考えてみればこのメンバーは、俺がマッサージついでに悪戯した奴らじゃないか!
ここに来てようやく奴らの微笑みの意味がわかった。
あの邪悪な微笑の裏にあるもの。
それは復讐の悦び。
「ひっ、 ひぃぃーーっ!」
「ふふふ、ゆういち〜 まっさーじだお〜〜。」
名雪からの恐ろしい申し出。
もちろん断るしかない。
不気味に手をワキワキさせながら、ゆっくりこっちに近づいてくる。
「か、かんべんしてくれ!」
「祐一君、ボクあの時すっごーーく恥ずかしかったよ…。」
「私もです…。」
同様に間合いを詰めてくるあゆと天野。
いつにないその迫力に、俺はずりずりと部屋の奥まで後退していく。
「や、やめろっ、 よせっ、
大声出すぞ、 あ、ああ、暴れるぞっ!!」
「大丈夫よ。 ちゃんと薬も拘束具も持ってきたから☆」
快心の笑顔で香里は、俺の最後の抵抗の望みを消し去った。
その手には言葉どおり怪しい薬と鎖と、そして拘束具が握られている。
なんか首輪まであるし…。
「さぁ〜〜あ、あいざわぁぁ〜〜、 モミモミの時間だよぉぉ〜〜。」
「み、眉間にしわ寄せて、歯を食いしばって笑うな! 怖いから!」
憎しみと喜びの入り混じったような、奇怪な表情の北川。
へぇ〜、人間ってあんな顔ができるんだぁ。 不思議だなぁ。
うう〜ん。 因果応報、人に与えた憎悪は返ってくるねぇ〜。
悪いことって、しちゃ、ダメだよねぇ。
すぐ目前に迫った危機に、俺の脳は現実逃避で一生懸命だった。
「もう後がないお〜。」
「たっぷりサービスするからね。」
「お礼、ですから。」
「言い残すことはないの?」
「さらば、親友…。」
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ
そして、
「イィィヤァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
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= 一部、過激または暴力的な場面を含んでいましたので、 =
= その場面の描写は割愛させて頂きました。 =
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それから数日後、
「祐一、肩こってない?」
「こっ、こここここ、こってないですっ! はいっ!」
マッサージはもうコリゴリだ。
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後書
じゅん:いいのかな、こんなもの送っちゃって。
あつし:以前SS頂いたからな。 そのお礼。
じゅん:まさに恩を仇で返してるね。
あつし:こ、これでも俺の全力なんだよぉ〜。 F.coolさん許して。
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