迷子林檎蜜柑
見知らぬ街をぽてぽて歩く二人。
ここはどこだろう。
全く、見たことがない景色。
迷ってしまった。
林檎さん、顔を歪ませて、どうしたものかときょろきょろきょろきょろ。
蜜柑さん、俯いて、じっと道端の石を見つめている。
どちらともなくはぁと溜息。
募る不安。いつの間にか暮れた空。夕日に押しつぶされそう。
でも怖くない。
二人は手を繋いでいるから。
台風林檎
風がやってきた。
びゅうごごおと吹きすさぶ嵐。
うわあと喜んで林檎さん外へ。
身体がふわふわなんだか楽しい。
枯れ葉も砂も虫も看板も総て空に舞い上がる。
もちろん林檎さんも。
うわあとじたばたするけど当然どうにもならなくて。
ふと自分が鳥になったような気がしたが、すぐに失速して、墜落。
うわあとくるくる落下する。
着地予想地点にはぼーっと空を見上げていた蜜柑さんが。
林檎さん、蜜柑さんを見つけてにこにこ手を振る。
蜜柑さん、林檎さんが空を飛ぶとはつゆ知らず大いに狼狽。
どすん、がたーん。命中。
二人してぺちゃんと転んだ。
かつら林檎
ひょんなことから金髪のカツラを手に入れた林檎さん。
迷わず装着。
なんだかとっても楽しくなった。
どんどん欧米人気分。
そうだ自分は欧米人なのでした。
蜜柑さんに自己紹介。
自分の名前を高らかに宣言。
ネイティブな発音です。
蜜柑さん、それを聞いて首を傾げた後、ああと手を叩く。そして裾をまくって手を構える。
ちょっぷ、ちょっぷ。
林檎さんにちょっぷ。
林檎さん、叩かれたところを両手で押さえて、不思議そうな顔をした。
かつら蜜柑
蜜柑さんが縁側でのほほんとお茶を飲んでいると後ろから忍び寄る林檎さん。
手には金髪のカツラ。
こっそり近づいて、すぽんとかぶせた。
これで蜜柑さんも欧米人。
反応を期待して、林檎さん後ろでにこにこ。
蜜柑さんは、お茶を飲みほすと、羊羹を一口ぱく。
そうしてお日様の光をいっぱいに浴びて、のんびりしている。
ふああと欠伸をする蜜柑さん。
ししおどしの音がかこんとこだまする。
林檎さん、まだまだ後ろでにこにこ。
林檎ころころ
林檎さんころころ、どんぶりこ。
お池にはまってさあ大変。
と思ったらぱしゃぱしゃはしゃいでいます。
とっても楽しそうです。
こんにちはと言うタイミングを計りかねている蜜柑さん。
蜜柑結い髪
ふと。
髪型を変えてみようと思った蜜柑さん。
こしょこしょと髪の毛をいじって、完成。
林檎さんほど髪の毛が長くないので不格好だけど、同じように結ってみた。
早速林檎さんに見せてあげようと、呼んだ。
お部屋に入ってきた林檎さん、あれえと口を開けてきょろきょろ。
とたたたとカーテンを開けたり箪笥を開いてみたり。
見かねて蜜柑さん、髪の毛を元のおかっぱに戻した。
林檎さん、蜜柑さんを発見してびっくり。
いつから居たのとひっくり返った。
蜜柑さん、無言で不機嫌そう。
続かつら蜜柑
蜜柑さんが縁側でお茶を飲んでいると。
いつの間にか隣に林檎さんが座っていた。
そう言えば頭がなにやら重いけれど何だろうと思いつつ、お茶を振る舞ってあげた。
林檎さんは、お茶を飲み、羊羹を食べ、ほう、と微笑むと、手を振って帰っていった。
さてお風呂に入ろうとして、着物を脱ぎ、かつらを外す。
さてお風呂から出たので、寝巻を着て、かつらを被る。
何か奇妙な感じがしたけれど、蜜柑さんは首を傾げただけだった。
次の日、また林檎さんがやってきた。
出迎える蜜柑さん。
まだかつらを被っている蜜柑さんを見て、林檎さん、尻餅を付いた。
お宝林檎
洞窟の最深部、伝説の竜を倒した俺は、秘宝の入っている箱を、今まさに開けようとしていた。
ぎぃと重い音を立てて、厳かに蓋が開く。
中には、小さな着物の少女がちょこんと座って俺を見つめていた。
ええ?
少女はうんせと身を乗り出して箱から出ると、俺の鎧にしっかりと手を掛けよじ登ってくる。
そうして俺の肩まで辿り着くと、ふうと汗を拭って、びっと人差し指を前に突きだした。
れっつごー、って、おい。どこへ。
窓から林檎
僕が机に座って今日の宿題を片づけていると、こんこんと窓を叩く音。
微かな音だから、音楽でも掛けていれば気づかなかったに違いない。
何だろうと振り向くと赤い着物の小さな少女。
所が僕と目が合うとくすくす笑って顔を引っ込めた。
なんだかからかわれたような気がして、僕は窓を開けた。
うわあとびっくりして少女はすとんと地面に落ちる。
ちょっと痛そうだ。
こういう手合いは放っておくに限るなあと僕は窓を閉めて、再び宿題に取りかかる。
所がまもなくまた、窓が、こん、こん。
模様替え蜜柑
林檎さんの家に遊びに来た蜜柑さん。
でも林檎さんは留守だった。
しばらく待ってみても帰ってこない。
蜜柑さん、痺れをきらして立ち上がり、てきぱきと家具を動かして、模様替えを始めた。
お掃除もし終わり、ようしと満足げな顔をして、蜜柑さんは帰っていった。
さて帰宅した林檎さんは首を捻るばかり。
絵と原案 桜塚さん
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