いたづら一夜さん その10  メモ帳編  ぺちゃくちゃ  紫苑ちゃんと 電話でおしゃべりです  あら なんですか ふんふん 探してる本が  はい じゃあ私も 探しておきましょう ええと メモ  メモ メモ 見あたりません  ペンは有れども紙はなく ううんと ううんと  十夜 十夜 「何だい 母さん」  私は 十夜のお顔に 本の情報を 書き込みました  これでよし です 「……」  ぺちゃくちゃ ぺちゃくちゃ  はい それでは  かちゃん  ふう 「……」  きゃあ 十夜  お顔に落書きだなんて 誰がこんな ひどいことを  女の子編  ふんふんふんと私がお買い物から帰ってくると  居間に 見知らぬ女の子が座っていました  黒髪 黒い服 綺麗な子です  あらあら どなた  ここは あなたのおうちでは ありませんよ 「え あ いえ 一応 私の家です」  あら そうでしたか ごめんなさい  私は慌てて 玄関から出ていきました  ではでは さてはて 私のおうちは どこでしょう  生き別れ編 「ちょ ちょっと待って 母さん」  母さん 私を母さんと呼ぶあなたは さっきの女の子  ええと あっ ひょっとして 「あなたは十夜の生き別れの妹」 「えっ そんな子 居たの」  居なかったはずですが おかしいですね  娘編 「違うって母さん 実は 私 十夜」  まあ 十夜  こんなに立派になって  違います  一体 その姿は どうしたんですか 「実は」  はっ まさか  十夜は実は 生まれたときから 女の子だったんですね  それを知らずに私ったら 男の子として育ててしまって  ああ なんて罪なことをしてしまったのでしょう よよよよ 「母さん 母さん あの ちょっと もしもーし 聞いてる?」  驚愕編 「実は」  実は? 「さっき 昼寝して 目が覚めたら こうなってた」  まあ 「私 びっくりしちゃって もう 何が何だか」  その割には 落ち着いてますね 「いや 取り乱してるよ」  私から見たら 十夜 顔色一つ変えてません  もっと こう わあー驚いた って顔は 出来ないんですか  ほら こんな風に わあー 「母さんこそ 全然 表情が変わってない」  ……  似たもの親子で 良いことですね