いたづら一夜さん その9  事件編  大変です 大変なことが起こりました  事件 事件です  ああ 早くこのことを誰かに伝えなければ  ですが 十夜は まだ学校です  そう言うわけで 私は お座敷に座って 十夜が帰ってくるまで ちょこんと待ちます  ちょこん 「ただいま〜」  あ 十夜 お帰りなさい  事件です 「え なに」  ええとですね  ええと 「何さ」  その 「うん」  忘れちゃいました  誘拐編  あ 思い出しました 紫苑ちゃんが 誘拐されたんです 「な なに」  先ほど お買い物をしに 商店街へ行ったら  何物かが 紫苑ちゃんを 裏通りへ連れ込んで居たのです 「か 母さん それは」  誘拐でしょう 「や でも ナンパとか」  誘拐です 「アンケートとか」  誘拐 です 「あ そう」  ええ 誘拐と決まりました これは大変 大事件です  冤罪編  とはいえ 私は 物陰に連れ込む 犯人の手 しか 見えていません  と言うわけで 名探偵一夜さんは 秘蔵のホームズ帽子をかぶり 調査開始です  まずは紫苑ちゃんのおうちへ ぴんぽん 「はあい」  紫苑ちゃんが出てきました 「こんにちは紫苑ちゃん 紫苑ちゃんの行方を 知りませんか」 「え その ええと ここにいます」  あら 本当です  と言うことは 「無事だったんですね 良かった」  私は紫苑ちゃんの両手をぎゅっと握りしめました 「は?」 「なんだなんだ」  あら 後ろから 鏡夜くんが出てきました  と言うことは 「鏡夜くんが犯人だったなんて」 「え?」  裁判編  名探偵一夜さんとは世を忍ぶ仮の姿 実は 一夜さんは 裁判官だったのです 「と言うわけで 裁判を始めます」 「あ あのさ一夜さん な なに」 「被告には黙秘権が認められています」 「いや 喋らせてよ」  では 聞きます どうして鏡夜くんは 紫苑ちゃんを誘拐しようとしましたか 「誘拐?」  ほら 午前中に 商店街で 「あ あれか あれは紫苑から 金を借りようとしただけですよ」  え 「ほら あんまり人の多いところで言うのもなんだから ちょっと離れて貰って」  なんとそうでしたか 意外な真相です  と言うことは 「脅迫罪」 「何でですかっ」  保釈編 「俺達 兄妹ですから」 「あら」  なるほど確かにそうでした  とするとこれは 麗しい兄妹愛のお話  何と言うことでしょう それなら  犯行にもそれなりの情状酌量を ええと ううん  なんだか よく 分からなくなってきました  ええと こういう場合 保釈金とかで済ませて  保釈金 「そんなに困っているのでしたら はい お小遣いです」 「え わ 一夜さん そんな 有り難う御座います」 「ダメですよ一夜さん こいつを甘やかしちゃ」 「うるさい紫苑」  これで保釈金も渡し終えました  事件解決 万々歳です  私は意気揚々と おうちに帰りました 「ただいま帰りました」 「母さん事件だ」  あら あら 十夜 なんでしょう 「腹が減った」  それはそれは 大変な難事件です  では お母さんが 解決してあげますね