いたづら一夜さん その2  丸い子編  100円ショップで 安くて良い買い物を これが主婦の知恵です  色々有って とても助かりますね  あらこれは ピンクの ボールでしょうか  顔を模しているようで ギザギザに尖った牙と 不敵に光る目が 可愛らしい  ずきゅーん 心を 奪われてしまいました  これは 是非 買って帰りましょう  十夜も きっと 気に入るはずです これが主婦の知恵です  と言うわけで  帰宅したとたん さあ 開封  畳の上で ころころ 転がしてみます  愛らしいです  持ち上げて じっと 見つめます  やはり 愛らしいです 「母さん 何 それ」  あら十夜 これ 可愛いでしょう 「なんか 不気味」  がーん  そんな ひどい ひどい  手に持っていた丸い子が ころころ 私の膝を転がります  十夜は 無言で 出ていきました  ああ 十夜の目が 捨ててこいと言っていました  可哀想 可哀想  うう不憫な子  私は丸い子をぎゅうと抱きしめて 悲しい気持ちに浸っていました  胸の大きさ編  はて テレビなどを見ていると 胸の大きな女性がもてはやされる風潮にあるようですが  どうなのでしょう 私は 大きい方でしょうか  ……  自分では 分かりませんね  十夜 十夜 「なんだい」  お母さんの おっぱいは 大きいですか 「げほげほっ」  あら 咳き込んじゃって 風邪ですか ダメですよ  で 結局 十夜は なんだか怒って 教えてくれませんでした  くすん 純粋に 知りたいだけなのに  それじゃあ 他の人に聞きましょう  ご近所の 鏡夜くん いんたーふぉん ぴんぽん 「はい あ 一夜さん」  こんにちは 早速ですが あの 「何ですか」  私の おっぱいは 大きいですか 「げほげほっ」  風邪が流行っているようですね お大事に  で どうでしょうか 「その ええと」  そんな ちらちら見るだけで 分かりますか  さあ じっと見て 「あ いや その ええっと はい 大きいです ええ」  鏡夜くん 顔が赤いです お熱もあるのですか ダメですよ寝てなきゃ  それで 大きいと言われました  むぅ  なんだか 誤魔化されたようで まだまだ納得がいきません  直に触って きちんと 確かめてください  鏡夜くんの手を取って 胸に導きます 「わ わあっ 大きい 大きいですからっ 大丈夫です」  あら そうですか  そこまで言うなら 安心です 「そそ それじゃ あの 失礼します」  あ 風邪引きの所 ごめんなさい  それでは 養生してくださいね  恐がり編  うーん このTシャツ ちょっと古いでしょうか  でも主婦として 倹約第一です  今日は これを着ましょう  そしてお買い物  あら 前の お兄さん お財布落としましたよ 「あ すいませ ……!」  うん なんでしょう なんだか びっくりした顔 「え あ うー あ あの」  なあに 私は首を傾げます 「あ えと あ 有り難う……!」  きゃ  青年は 財布を受け取ると 小走りに駆けてゆきました  まるで 私から逃げるみたいに  がーん がーん がーん  なんですか 私 そんなに怖い顔でしたか  ああ 寄る年波には 勝てないのですね  よろよろ しくしく  家に 辿り着きました  ああん お先真っ暗 「おかえり母さん うわ」  そんな 十夜まで うわだなんて ひどい 「母さん そのシャツ」  なんですか くすん 「もう古いから その 透けてる」  え  あら 本当 ブラジャーまで くっきり浮かんで見えま  きゃあああっ  さてはさっきの青年も  ああんああん  顔から 火が出ちゃいます  鮭編  昼下がり テレビで 鮭の一生をやっていました  鮭は川に生まれ 海へ行き また生まれた川に戻って 激しい一生を終えるのです  じーん 感動しました  うう 思わず目尻に涙が 「ただいま」  あら十夜が ぐしぐし こんな顔 見せられません 「母さん 腹減った」  うん ご飯は出来てるから 冷蔵庫から適当に 食べてちょうだいね 「冷蔵庫か ええと お いくらが有るな」  いくら  一生懸命 鮭が生んだ 卵を ぱくぱく 「十夜 ひどいっ」 「え 母さん 何が」