この風の下で〜放たれる想い〜
真っ青な空が広がっていた。
風がはこぶのは、草の匂い、木の匂い。
緑の絨毯に寝そべった祐一の目の前を、真っ白な雲がゆっくりと横切っていく。
視界に広がるのは、青と白のコントラストだ。
と、そこに影が落ちた。
ひとりの少女が祐一を見下ろしていた。
「こんなところでなにをなさってるんです」
祐一は答えない。
その問いが答えを求めているものだとは思わなかったからだ。
「いい天気だなあ」
「そうですね」
「こんな日に部屋に閉じこもってるのは損だろう」
「それが学園祭の準備をさぼる理由にはならないと思いますが」
祐一は苦笑して、
「サボってるのはいっしょじゃないのか?」
「そうですね……でも」
いっしょになって空を見上げる。
「こんな日に屋内にいるのはもったいないですから」
祐一はさらに苦笑を深くする。
「ところでな、天野」
「なんですか?」
「見えてるぞ」
美汐の顔が真っ赤に染まり、あわててスカートをおさえる。
祐一はすでに立ち上がっている。
美汐は祐一を上目づかいに見上げ、
「相沢さん、ひどいです」
非難するような口調で言う。
(と、いうか実際に非難してるんだろうな)
「まあ、でも安心したよ」
「なにがですか?」
祐一は美汐の耳元にからかうような口調で、
「白だったからな」
「!?」
赤く染まった顔がさらに真っ赤に染まった。
怒った美汐をなんとかなだめて、草の上にそろって腰をおろす。
「いい天気だな」
美汐のほうに笑いかける。
「……」
無言。
「まだ怒ってるのか?」
「怒ってません」
「なんだかぶっきらぼうだぞ」
「そうですか?」
「口調が怒ってるぞ」
「怒ってません」
祐一はため息をひとつつき、
「天野は頑固だな。そんなんだからおばさんくさいって……」
睨まれる。
「ほ、ほら、せっかくこんな天気がいい日に学校サボってこんなところまできてるんだから、
怒ってるのはもったいないぞ」
そういって祐一は美汐のほほを左右に引っ張る。
「いはいれふ。やめてくらはい」
「もう怒ってないか?」
「おほってらいれふ」
手を離す。
「どうしてこんなことをするんですか?」
ジト目。
今度はあきれられてしまったようだ。
「天野、この空を見てみろ。心が洗われるようじゃないか。この広い空の下で、怒るなんてのは、
なんていうか、人生の半分を損してると思わないか?」
「……ぷっ」
「お、いま笑ったか?」
「は、はい」
美汐は苦しそうにしながら答える。
「いまは笑うところなのか?」
「相沢さんがあんなことを言ったらそれだけでギャグですよ」
「なんだかひどいことを言われてるような気がするが……まあよしとしよう」
「ところで、相沢さんのクラスは学園祭で何かやるんですか?」
「いや、何にもやらないらしい。」
「らしいって……」
「天野のところはどうなんだ?」
「喫茶店をやるみたいです」
「基本だな」
「そうですね」
「準備は手伝わなくていいのか?」
「実はウェイトレスをやることになったので、今日の準備は免除されたんですよ」
「なんだ、天野はサボりじゃなかったのか」
「ええ」
……
無言。
だが、この無言は二人が共有する気分のいい、暖かいものだ。
「なあ、天野」
「なんですか?」
「もし俺が……天野のことを好きだ、って言ったらどうする?」
こんなことを言ったのは、今の雰囲気があまりに気分のいいものだからだっただろうか。
「真琴のことは……どう、なさるんですか?」
それは拒否の言葉のようだったが、祐一には美汐の迷いが感じられた。
「最近、思うんだよ」
空の向こうを見つめる。
ここにはいない人の姿を求めるように。
「もしかしたらあいつは、俺たち二人を出会わせるためにいたんじゃないか、って」
「……ずいぶんと……ずいぶんと都合のいい考えですね」
……
再び、無言。
たった数分の無言が、祐一には永遠にも感じられた。
無言のまま美汐が立ち上がり、
「!?」
祐一の唇に、美汐の唇が重ねられた。
一瞬、ほんの一瞬唇が触れ合うだけのキス。
それだけを残して、美汐が離れていく。
「美汐!」
美汐がふりかえる。
制服と髪が風に舞った。
その姿は、まるで美汐が風に乗って踊っているようで……とても美しかった。
「祐一さん、私……私、ずっと祐一さんのことが好きだったんですよ」
その言葉を残して、美汐は帰っていった。
祐一は、その場に立ちすくみ、美汐の言葉を反芻する。
好きだといわれたそのことよりも、美汐に名前で呼ばれたことが嬉しかった。
そして、美汐との心の距離が確かに近づいたのを、感じていた。
――――――――――――後書代わりの漫才Talk――――――――――――――――
焔「せ、せなかが、背中がむずがゆいいいいいいいいいいっっっっっ!!!」
?「いきなり暴走していないで、まずはあいさつをしてください」
焔「あー、そうだな。そういうわけで、皆様こんにちは。焔帝でござあやす」
?「このたび後書の相方を務めることになりました、藤宮霞と申します。以後よろしくお願
いします」
焔「このSSは岡部騎手の52歳の誕生日を祝って、F.coolさんに差し上げます。差し上げたも
のなので、焼こうが、煮ようが、廃棄しようが、意表をついてHPに掲載しようが自由です」
霞「70000ヒット記念じゃないんですか?」
焔「そっちも書いてる」
霞「それにHPに掲載って……こんなものをのせたらF.coolさんのHPの価値が140パーセント
は落ちますよ?」
焔「ひどいこというなー、事実だけど。ところでふと思うときがあるのだが、本当にSSは自
分で書いているのだろうか」
霞「どういうことですか?」
焔「ほら、今回のSS見てみてよ。こんなこっぱずかしいのを俺が書けると思うか?」
霞「えっと、そんなに言うほどのものでしょうか」
焔「きっとこれは宇宙からの電波が俺の体を動かして書いているのだと思うのだが」
霞「そんなわけないじゃないですか」
焔「んにー、毒電波でないとすると……はっ、すべてはF.coolさんの張った罠?」
霞「あ、あの」
焔「くそう、俺がSS書くはめになったのも、魔物ですらオペラオーに勝てなかったのも、い
たづらが面白すぎるのも、そもそも俺と兄貴でSS交換するはずだったのに俺だけ書いてる
のも、すべてF.coolさんのせいだったんだな?」
霞「……」
焔「おのれ、F.coolさん、コノウラミハラサデオクベキカ」
霞「失礼なことをいわないでください!!!」
焔「うみゅう。F.coolさんの罠でもないのか?」
霞「そんなわけないでしょう」
焔「……」
霞「……」
焔「……」
霞「どうなさったのですか?」
焔「オチ、忘れた(実話)……」
霞「……はあ」
焔「どうしよう」
霞「それではオチをつけて差し上げます」
焔「待て、その剣はいった……」
ズバァーーーーーーーーーーーッ(切る音)
霞「それではオチもついたところで、さようならです。」
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