『うらやましい…』

 倉田夫妻の第二児、佐緒里を胸に抱きながらの倉田夫人を眺めながら、夫人の親友でもある女性が呟いた。





 倉田夫妻の事情 外伝2





 女性は知り合いであり、親友でもある佐祐理の家に遊びにきていた。もっとも、週に四回は訪れているので、彼女にとっては庭みたいなものだ。
 今日も別に用事などない。暇だから訪れたのであって、いつも通りに佐祐理とともに午後のお茶を共にしている。
「赤ちゃんって、やっぱり可愛い」
「そうですね、まぁ、経緯は色々あっても、やっぱり可愛いですよ〜」
 佐祐理は過去の経緯(『倉田夫妻の事情』参照)に少しだけ許しがたい気持ちもあるが、結果としてみれば良かったと思っている。
「祐弥も可愛かった」
 今は幼稚園に通うようになり、言葉もしっかりと喋るようになった倉田夫妻の第一児、祐弥。自分の子供でなくとも、何回もおむつを換えたこともあったくらいだ。その可愛さも一塩ではない。
「なら生めば良いじゃないですか。それとも、なにか問題でもあるんですか?」
 女性も結婚している以上、子供を生むことになんら支障はない。佐祐理がそう思うのも当然のことといえる。
「問題はない。ただあの人が淡白なだけ。私はいつでも準備万全だから」
「あ、あはは〜」
 彼女の旦那にあんまりな暴言ともとれる言葉に、佐祐理は返す言葉が見つからず冷たい汗が頬を流れる。
 淡白と言うのはあんまりではないか、と佐祐理は思う。彼女の夫は、自分の夫でもある祐一と仕事を共にしている。事情から察して、彼女の夫もかなり多忙であることは言うまでもない。
 恐らくは、手習いから喜一に着いた祐一とは違い、実力で仕事に就いている以上、祐一よりは数段忙しいのが伺える。
 とは言え、彼女の寂しさ、かまって貰えない寂しさが佐祐理にもわかる部分もあるので、なかなか言葉にできなかった。
「それに、最近、冷たい。私は飽きられたのかもしれない…」
 冷ややかに怒りをあらわにすれば、反転してかなり落ち込んだ様子を見せる女性の様子に、佐祐理は慌てて「そんなことがあるはずないじゃないですか〜」とフォローを入れてみるが、女性に耳届いているのか、どこ吹く風もなんとやら。
 とてもいやぁ〜な空気が流れる。
 幼い子供はかなり敏感だ。この、ある種物々しい雰囲気が肌にささくれるのか、むずむずと佐祐理の腕の中から逃げ出そうと、泣き始める。佐祐理が、まるで逃げ出す口実とばかりに、関心を女性から愛娘へと移す。
 佐祐理の赤ん坊をあやす姿をもの欲しげに見つめる女性。
― やっぱり私も赤ちゃんが欲しい ―
 女性は一瞬考え込んだ後、告げる。
「佐祐理、頼みがある」
「はい?なんですか〜?」
 女性の声に、佐祐理は佐緒里から興味を移すと、そこには真剣な眼差しがあった。
 佐祐理も真面目に見つめ返す。なにを頼まれるのだろうかと、思わず唾を飲み込む。
「祐一を貸して欲しい…」
 思ってもいなかったことだった。思わずポカンと、佐祐理。一瞬判断がつかないが、言葉の意味を考えれば、当然許せるはずもない。女性の言葉は、それほどまでに突拍子もなければ、佐祐理と佐緒里が醸し出すホノボノとした空気をも一瞬にして凍らせる威力をもっていた。
 それは、昔と相変わらずなセンスあふるる冗談。可愛げがあるとかないとかの問題ではない。
 プルプルと佐祐理のこめかみが震える。
「あ、あ、あ、あなたは何を、何て寝惚けたことを言ってるんですか!そんなの駄目です!絶対に駄目に決まってます!」
 滅多に聞くことなどない、佐祐理の怒声。同時に佐緒里が泣き出す。
 女性が佐祐理によって倉田邸から叩き出されたのは言ふまでもない。一週間の立ち入り禁止令とともに。
「…ケチ」

 それから、数日後…





 久瀬夫妻の事情 〜彼女の夫の条件は?〜





「ねぇ、最近かまってくれない。動物園も水族館も一緒にいってくれない。どうして?」
 女性、改め久瀬舞(旧姓・川澄)が、夫婦の寝室、ありていに言えばベッドの中、布団に包まりながら一人の男性を問いつめる。
 ちなみに、布団は舞が独り占めしているのであって、男性はぶるぶると震えながら言い訳を始める。
「その、仕事が忙しいからであって、別にかまいたくないわけじゃないんだが…」
 梅雨も近いこの頃、いかに夏が近いとは言え、北国の春はそうそう生易しくはない。寝巻きだけでは寒いのは当然だろう。
「だったら、直登。仕事をさっぼても良いから私を一緒にいて欲しい」
「いや、俺も一緒にいてやりたいのは山々なんだよ。舞。だけど、仕事を投げるなんてこともできないよ。わかってくれないかな?」
「………それくらい、私にだってわかってる」
 ふん、と、とても寂しそうに舞はふてくされながら布団を頭まで被り、そっぽを向いてしまう。
― 困ったな ―
 明かに顔に出して、男性は頭をかく仕草で、どう宥めようかと思案するが、もともと不器用な彼は、舞を直ぐにでも喜ばせて上げられる術をもっていない。そして機嫌をそこねてしまった舞に何もして上げれられない、自分の不甲斐なさにため息が漏れる。
 勿論、舞は知っている。男性、彼女の夫でもある久瀬直登(なおと)がかなり多忙であることを。そして、仕事意外の時間は全て自分と一緒にいてくれることも解りきっているのだが、先日の倉田夫妻の第二児出生が羨ましいのと、また、自分にはなかなか子供ができないことへの嫉妬、そして原因である夫に、どうしても悔さが募るのだ。
 舞の理論としては単純明快である。
『佐祐理と祐一には二人も子供がいて、どうして自分にはいないのか?結婚したのは、実は自分たちの方が、わずかであっても早い。なのに、どうして?』
 彼女なりの結論とすれば"あちらの夫婦よりもすることをしていないからだ"であり、彼らに子供がいるのが例え偶然であっても、心情的に納得できないのであり、結果として導き出される答えは『自分は夫に愛されていないのかもしれない』となるわけだ。
 ここら辺りは、祐一や佐祐理、そして直登らと出会った頃と余り変わっていない。まぁ、純粋といえば純粋なのだろうが、子供といってしまえばお終いなのかもしれない。もっとも、それが舞が舞たるゆえんでもあるから、彼にとっては憎めないのが本当のところ。
 無論、舞だって『自分が愛されていない』などと思ってもいない。彼は彼なりに精一杯自分を想ってくれているのがわかる。そう、これはある意味で舞の意地悪なのだ。彼にもそれがわかっているので、不て寝をしている舞に、困ったような笑顔を向けるしかない。
「舞、突然どうしたんだい?俺には全然舞らしくないような気がするんだけど…」
「知らない」
 舞の返事に、益々困りきった表情で直登は背中を見つめる。
― どうしようか? ―
 本当に困った、彼の瞳がどことなく泳いでいる。犬のおまわりさんの気持ちが理解できる。困ってしまってワンワンワワ〜ン、だ。

 彼女との、川澄舞との結婚は、直登にしてみれば成り行きだったとも思う。
 倉田佐祐理、相沢祐一のとばっちりを受けた二人。それが自分たちだった。舞は祐一を、直登は佐祐理を、"あの頃"は好いていた。だがしかし、運命の女神は二人に振り向くことはなかった。祐一は佐祐理を、佐祐理は祐一を。二人は誰が見ても羨ましいくらいにお似合いだった。
 そして羨ましそうに眺めていたのは自分。傍らにはもう一人。隣にはいつだって舞がいた。
 再会したばかりの頃は、相変わらずに減らず口ばかりの関係だった。時間が経ってもそれは変わらない。けれども、なんとなく、世間の流れ、そして祐一と佐祐理の関係からあぶれてしまったように、置いていかれたいかれたような感触が、いつしか直登と舞をなるべく辛くならないよう、傷つけないように、やんわりと包み込んでいった。
 二人でいることの必然性などなかったにせよ、どうしてか一緒にいることが多くなった。けれど、舞と自分と二人でいることに、不思議と居心地が悪くはなかったのだ。
 付き合っているようにも見えない。友達同士の間柄にも見えない。例えて、電車で相席したくらいの、距離で二人は居続けた。
 距離を縮めようとも思わない、離れようとも思わなければ、自然に二人は一緒にいる。
 性格も違い過ぎる。趣味だって何一つ合うものもない。でも、なんとなく理解できる、そんな部分があったとするならば、それは、とても遠くて、あまりに近い二人。
 いつしか、舞も直登も自然なままでいられるようになっていた。傍らには佐祐理と祐一。それぞれが、それぞれに対しての思慕が薄れていくのが手に取るようにわかる。寂しさは、思ったほどなかった。舞と直登、なんとなくだけれど、二人は一緒だったから。
 いつしか、直登は舞の本当の姿を、あんまりに頼りなさそうな、儚さを見つける。
 それが二人にとっては本当の始まりだった。
 自然と、彼は舞の傍にいつだって寄り添うように、まるで舞を冷たい風から守るようにして立っていることが多くなった。
 同情しているつもりも、慰めあっているつもりもなかった。勿論、彼女の心を開いたつもりなんて、あるはずもない。本当に、これは真実で、彼にしてみても、彼女にしてみても、気が付けばこうなっていたのだ。
 今更ながら驚くことばかりのように思う。初めて舞と出会った時は、ある意味で仇敵だった。学校での狼藉、頭を悩ます頭痛の種。自分からしてみれば、想い人にまとわり付く邪魔ものでしかなかったはずなのに。
 そして、相沢祐一が現れ出した頃では、まさに自分は憎まれ役でしかなかった。それなのに、今、自分の隣にいるのは、なぜか川澄舞。
 鬱陶しかったと言えば、本当だろう。あの頃は。
 けれど、今、心からの本音を言うとすれば、舞のことが愛しくて堪らない。今、彼女が自分から離れたとしても、自分は全てを投げ打ってでも彼女を自分の元に留める努力をするに違いない。それくらい、今の自分にしてみれば、大切な存在にまで膨れ上がっているし、気持ちをほとんどを彼女で統べている。
 彼女を知らない者は、誰もが彼女を避ける。乱暴者、無愛想、冷血漢。色々と噂が上がる。知らなかったとは言え、始めは自分もそうだったのだから。
 だがしかし、ホンの少しでも彼女の優しさを、弱さを、純粋さを知ってしまったのなら、それがあくまで彼女を取り巻く単なる情報でしかないことがわかる。もっとも、本当の彼女を皆に知って欲しいとも思わない。自分と、彼女の親友たちが知っていれば、それで充分なのだから。
 御互いに、面と向かって「愛している」だなんて言ったこともない。そんな言葉を言ってしまえるほどに、二人は陳腐な関係でもない。
 二人が、常に共にありたいと願っていれば、それが理由になるのだ。二人が一緒にいる理由に。

 もう一度、舞の背中を見つめる。感情が込み上げてくる。舞の気持ちを、せめて、何とかしてあげたい、と。
「なぁ、舞。俺はさ、普通の人よりもよほど不器用なんだ。だから、言ってくれないとわからない。わからないよ…」
「直登…」
「もっと俺を困らせて欲しい。けど、せめて理由を教えてくれないかな?そうすれば、なんとかしてあげられるから。だから、どうして怒っているのか、教えてくれないかな?」
 彼が本当に困っているのが、舞にも手に取るようにわかる。そして、自分がそうさせていることに、舞は悲しくなってしまう。どうしてこんなに我が侭なのだろうか、どうして、こんなに困らせてしまうのだろうか。
「私は、ホンの少し寂しかっただけ。それで意地悪をしただけだから、直登、ごめんなさい」
 涙声の舞に、どうしようもない悔しさが募る。どうしてここまで彼女を追い込んでしまった自分の間抜さ加減がが恨めしい。いつまでたってもわかって上げられない。それでも、一緒にいたい。
 それでも直登は、自分の不甲斐なさを必死に隠しながら、舞の背中にそっと語りかける。
「…どうして、寂しいの?俺には言えないかな?」
 自分と同じにどうしようもなく不器用で、寂しがりやな彼女が愛しい。誰よりも大切で、誰よりも愛しくて、自分だけが守りたいと思う。
「私は佐祐理が羨ましい。どうして私には、赤ちゃんができないのかな?」
 ゆっくりと、振り向いた舞。自分を見つめる舞の瞳が、涙で潤んでいる。綺麗だと、素直に感じる。
 とても弱い舞。守ってあげられるのは、自分だけなのだという、自負が、より彼女を愛しくさせる。
「舞、寂しくさせて、ごめんな…」
 そっと舞を抱き寄せて、直登は優しく、彼女の象徴とも言える背中まで長く伸ばされた髪の毛を撫でる。
 ゆるりと揺蕩う舞の髪。くすぐったそうにして舞は直登にしな垂れる。
「…直登」
 包まっている布団をめくると、小さくなった舞を、直登は今度は抱き締める。初めての時、思った以上に華奢な舞に直登は戸惑ったものだが、夫婦になってから既に5年を迎えている。馴れた、とは言っても、直登は舞を抱き締める度、未だに心臓が跳ねあがるような緊張を覚える。
 胸の膨らみに手をのばす。整った隆起を手のひらに収めながら、その柔らかさに酔いしれる。
「あ…」
 恥ずかしそうな舞をよそに、そっと直登は抱き寄せた…

 §

 朝、自然に起きる時間になれば目覚めてしまう。それも、目覚し時計が鳴り始めるきっかり5分まえ。
 隣には静かな寝息を立てている舞がいまだにスヤスヤと眠っている。直登は舞を起こさないようにと、鳴るはずの目覚し時計を止め、ベッドからそっと抜け出す。
 耳元に小さく、「おはよう」と言葉を残し、肌蹴た布団を優しくかけ直すと、静々と部屋を出て行く。
 直登が朝食の支度も終えたころ、寝惚けまなこの舞が階下にやってくる。
 味噌汁の匂いが香ばしい。舞は思いながらも
「おはよう」
 寝癖がついたままの舞の黒髪を直しながら、笑顔で舞を迎える。
「…ごめんなさい」
 少ししゅんとした舞。恐らくは、直登に朝食の準備をさせてしまったことに対しての罪悪感だろうか。
 いつもは舞が成しているそれも、今朝ばかりは微睡んでしまった。もっとも、事をこなした次の朝はいつだって、今と同じ結果に陥ってしまっている。だからこそ、明日の朝こそは、とばかりに意気込んでいた分、本当は少し口惜しかったのかもしれない。
 もっとも、直登がもともと家事全般が不得意はもとより、淡々とこなしてしまえるタイプでもあったりするので、寧ろ舞に対して余計なことをしてしまったかな、とすら感じているのも本当。
 お互いに、なんて微笑ましい悪意だろうか。
 二人の朝は、昨夜のいさかいも遥かかなたのことになっていた。
 緩やかな時間を終えて、直登は背広に腕を通せば、既に夫の顔から仕事の顔になろうとしている。
 その表情のどこにも、疲れを微塵も感じさせない。直ぐに顔に現れる祐一とはえらい違いである。普段の仕事先での仇名は、余りに彼の仕事振りを現している。沈着冷静、凄舌辣腕の異名の通り名は伊達ではない。
 既に舞の知っている直登はそこにはいない、家を出る時は、彼らしい、彼ゆえの眼差し。久瀬直登に顔になっていた。
 彼女を、舞を守るためには、自分は今以上にもっと強くならなければいけない。
 それが、久瀬舞の夫たる条件であるならば、仕事先でも、家庭でも、なんであろうとも彼は強くなれる。
 彼の大義名分はそれほどまでに強大で、絶対なのだ。そして、それが誇りになればこそ、彼女の夫の条件は、誰よりも強くなければいけない。
 誰よりも優しく、優しさゆえの泣き虫でもある、彼にとっての唯一。舞のために。





 おまけ

 それから暫く経ったある日、久瀬宅に嬌声が上がる。
 舞の妊娠。それは舞以上のはしゃぎようだった。
「やった〜!やった〜!!舞、俺たちの子供なんだな!?生まれてくるのは男の子かな?女の子かな?」
「…まだ早い」
 困ったような舞が、小さくチョップをかける。
「そうか、そうだな。まだ早いよな……。そうだ、名前も決めないと…あぁ〜ベッドも買わなきゃ、おしめは?ミルクはどうしよう?」
 想像以上の喜びように、舞はただ驚くしかなかった。喜んでくれるのは嬉しいけれど、ここまでとは。
 けれど、心の底から浮かぶ感情は隠しきれないほどに、溢れ出さんばかりの嬉しさだった。
 まるで子供のようにはしゃぐ直登を見つめる舞の表情。それは明かに見て取れるほどに柔らかい笑顔。
 本当のところ、誰よりも、一番子供が欲しかったのは、舞以上に直登だったのかもしれない。





 おまけ Part2

「おい、久瀬」
「相沢か?なにか用か?」
 仕事の合間に語りかける祐一に、久瀬は五月蝿そうに答える。かなりぶっきらぼうで、この姿こそ彼らしい。
「いや、佐祐理さんから聞いたよ。デキたんだってな。いや〜、おめでとう」
「あぁ」
 仕事中に話すべき会話でもない、とすっぱりと久瀬は切ってしまうも、祐一も人懐っこく話しけ続ける。
「なんだよ、そっけないヤツだな。せめて俺くらいには教えてくれたって良いだろうに…」
「別に相沢に教える必要はないだろう?どうして俺がお前に教えないといけないんだ?」
「まぁたまた。照れるなって!」
 まるで道端の主婦もよろしく、祐一の言動に慌てるようにして久瀬。
「て、照れてなんかない!」
「ふ〜ん、ま、良いけどさ。これから大変だぞ〜」
「それはなんだ?忠告とでも受け取るべきなのか?」
 ホンの少しは興味を注いだのか、久瀬の言葉尻に、しめた!とばかりに祐一が嬉しそうになる。
 結構暇、というかかなり暇な男である。
「忠告なんかじゃなくて、先輩からの同情ってことろかな?」
「同情、だと?」
 なんで同情されるのだろうか?とやはり祐一よりもどこかしら世俗には疎い久瀬。舞をいつも相手にしている以上、必要以上の刺激などあるはずもないが、ここぞとばかりに祐一はからかう。
「そ、俺なんか祐弥と佐緒里に佐祐理を盗られちまったからな〜」
「なんだ、そんなことか。ふん!甲斐性のないお前とは違う。そんなものは無縁の配慮だ」
 全く予想していない展開に、久瀬は祐一に侮蔑の視線を送る。勿論、自分は彼とは違うとの自負を持って。
 ニヤリと、悪意を込めて唇を上げるのは祐一。
「ふ〜ん、まだまだアツアツなんだねぇ〜、久瀬くん♪」
 久瀬の嫌味に対しての祐一は、彼にとっては一番のウィークポイントを突く。
「ふ、ふんっ!」
 そこには、思い切り照れを浮かべる久瀬の姿。祐一はそんな彼を見て多いに満足するのだが、やはりこの男、一概に真面目、とは言い難い。
 もっとも、彼ら二人が組んだ仕事には失敗がない。祐一の人当りの良さもあるのだろうが、久瀬の冷静なサポートがあって出きることだったりもする。意外とこの二人、相性はいいのかもしれない。





 おまけのおまけのおまけ

「それからな、倉田さんに伝えといてくれ。『あんまり舞に変なことを吹き込むな!』とな」
「久瀬よ。それは無理な相談だと思うんだが、おまえ、女の口に戸を建てられると思っているのか?」
「…」
「だろう?」
「そうか、そうだろうな。俺が悪かったよ。相沢」
 敗北感いっぱいの二人だった。









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