愛の浪漫劇場『ぷちしおり その3』

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 そろそろ入浴の時間が近付いてきた。
「……」
 腕の中で、丸まっている栞を見下ろす。精神が高校生でも、背丈は幼稚園児ぐらいしかないから、一人で風呂に入らせるのは危険かもしれない。
「名雪、頼みがある」
「うん、なあに?」
「悪いけど、栞と一緒に風呂に入ってくれないか」
 栞は俺の袖を引っ張って、
「わたち、一人でも入れまちゅ」
「万が一ってこともあるだろ。何かあったら、それこそ取り返しがつかない」
 名雪は少し考え込んで、
「うーん…でもわたし、湯舟の中で寝ちゃうことがあるんだよ」
 なんだか物騒なことを言った。
「マジか」
「ごめん、まじなんだよ」
 それだと、名雪に任せるのは、危なっかしいな。

「じゃあ秋子さん、お願いできますか」
 俺がそう頼むと、秋子さんは頬に手を添え、申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません、祐一さん。私は今日これから部屋で仕事をして、それを終わらせてからにお風呂にしたいんです」
「……」
 なんてこったい。

 どうしようかと考えていると、
「大丈夫です、私にいい考えがありますよ」
 柔らかく微笑んだ秋子さんが、安心させるように言った。
「なんですか」
「うふふ、祐一さんが、一緒に入ればいいんです」
 敢えて避けていたことを、あっさりと言ってしまう秋子さん。
「ゑ゛」































 あれよあれよという間もなく、生まれたままの姿の栞と一緒に風呂場に立っていた。
「え、えへへ…ちょっと、恥ずかしいでち」
 顔を赤くした栞が、幼い肢体をもじもじと揺すりながら、小声で呟いた。
 透明感のある真珠色の肌、細く弱々しい手足、薄い胸板、くびれのない腰…妖精というのが実際にいるとしたら、こういう姿なのではなかろーか。

 ここまで来てから逃げ出すのも、漢らしくないよな。
「よし」
 腰ぐらいの高さにある栞の頭を、軽く撫でて、
「じゃあ、掛け湯をするから、座ってくれ」
「はい」
 こっくり頷いて、女の子座りをする栞。丸いお尻が、ぽゆんと柔らかそうに形を変えた。

 栞の正面にしゃがみ込み、お湯に浸けたタオルで、足先から掛け湯を始める。
「……」
 ぷにぷに柔らかな柔肌が、タオルに触れた途端、さっと鮮やかな桜色に染まった。右の足首から始め、脹ら脛、ひざ頭、太もも、それから左脚も同じ順序で拭っていく。
「あの、祐一しゃん」
 内またを流され、くすぐったそうに身悶えていた栞が、震える声音で呟いた。
「ん?」
「よく考えたら、掛け湯ぐらい、わたち一人で出来ましゅ」
「…それもそうだな」
 見た目が幼女になっていても、栞は高校生だもんな。
「でもまあ、乗り掛かった船って言うか、滅多にない機会だし。気にするな」
 ふにふにほわほわの手触りが名残惜しいからこんなことを言っているわけじゃないぞ。
 栞は少し迷ってから、ほっぺたを桃色に染め、
「分かりまちた。祐一しゃんに、お任せしましゅ」
「おう、任せろ」

 下腹部の辺りを撫でてやると、栞はもがもがとくすぐったそうに肩を揺すった。
「んっ、んくっ、くふっ…く、くすぐったいでちっ」
「がまん、がまん」
 栞のへその下を撫でながら、ふと、さっき栞が食べていた夕飯のことを思い出す。
 今のこの栞が摂った栄養分は、何処に行くのだろーか。吸収された栄養は、躰が元に戻ったとき、どうなるんだろうと考えていると、
「…はぁ、あっ、ふぁっ…ゆ、祐一、しゃん…ぁはぁ」
「あっ」
 いかん、考え事をしていた間、ずっと股の間をこすっていた。
「…ふぁ、はぅ…祐一しゃん、ひどいでち…」
 栞が酔ったようにくらくらと頭を振りながら、うわ言のように呟いた。
「すまん」

 小枝のような細い腕を丁寧に拭い、肩、脇の下、首筋と順々に洗い流していく。
「ん、んふ、ふぅぅ」
 胸の先をこすられ、ふにゅふにゅ身悶える栞。
「痛かったか」
 手の動きを止めずに訊ねると、栞は熱っぽく潤んだ瞳を向け、弱々しく首を振った。
「違いましゅ…く、くすぐったくて…あ、ふぁ、ひゃんっ」
「おっと」
 びくんっと跳ねて倒れそうになった栞の躰を、慌てて抱き留めた。
「はぁ、はぁ…」
 栞は俺にしがみついて、全身を震わせて呼吸を整えている。ついでだから、このまま背中のほうも流すことにした。
「じっとしてろよ」
「えっ…あ、あん」
 栞の肩に手を添えて支えながら、背中を上から下に拭いていく。
「んっ、んんっ、んぅっ! …んくっ、くっ、くすぐったい、でしゅっ…ぁふっ、ひぅっ、ぅふぅっ…」
 疼くように躰をくねらせて、鼻に抜ける喘ぎ声を漏らす栞。
「…あっ、んぁっ、はぁっ…あぁっ、あーんっ」
 お尻の下に手を突っ込むと、栞は感極まったような啼き声を上げた。
「もう夜中なんだから、あんまり騒がないように」
「はっ、はぃ…で、でも…ぅあぁんっ、あんっ、あんっ、ああーっ」
 大きな声を上げて身悶える栞を、腰に腕を回して抱き締めて、そのままお尻を満遍なく流していく。
「あっ、そんな…あっ、あっ、あっ」
 か細い悲鳴を上げながら、むずむずと腰をくねらせる栞。
「はあっ、あっ、ああっ…あっ、あーっ、あぁあぁーんっ」
 お尻の間にタオルを差し入れた途端、栞は全身を弾けるように震わせ、叫び声をあげ、
「…あ…あぁ…ふぁあ」
 大きく溜め息を吐いて、そのままぐったりと弛緩した。

「…ふぅ、はぁ、ふぅ…」
 惚けたような表情で喘いでいる栞を座らせて休ませ、その間に俺も掛け湯をした。
「…じー」
 横向きに寝転がった栞が、真っ直ぐに俺を見上げている。
「なんだ」
 タオルを動かしながら訊ねると、栞は頬を赤らめ、うっとりとした表情で、
「えへ…祐一しゃんの躰、格好いいでしゅ」
「そうか?」
「はい。是非今度、わたちの絵のモデルになって下しゃい。ヌードで」
 危うく『ああ、いいぞ』と請け負いそうになり、すんでの所で踏み止まる。
「着衣じゃないと、嫌だ」
「むー」
 栞はぷくっとほっぺたを膨らませて、拗ねた。
「いいじゃないでしゅか」
「駄目」
「うー。…あ、いいこと思い付きまちた」
「なんだよ」
「わたちも裸になって描きましゅ。それで、おあいこでち」
「………………………。駄目」
「いま、スンゴイ悩みまちたね?」
「気のせいだ」

「よし。栞、湯舟に入ろう」
「はぁい」
 今の栞の背丈だと、湯舟に沈むから、俺が抱っこして入るしかない。
「ほら、おいで」
 ぼんやり夢見心地の栞を、背中から抱き上げた。
「あん♪」
 可愛らしく身悶え、ふにふに躰を揺する栞。

 栞の脇の下に腕を回し、細く小さな躰を包み込むように抱き締める。つるつると滑らかな肌触りと、栞の心臓の鼓動が伝わってきた。
「苦しくないか」
「はい」
 栞がこくんと頷いたのを確認してから、躰を持ち上げて、湯舟に入った。

 栞の小さな躰が沈まないように気を付けながら、温めのお湯に浸かる。それから脚を伸ばして、その上に栞のお尻を乗せた。
「ふう」
「はあ」
 俺と栞の唇から、同時に溜め息が漏れ出た。
「栞。お湯、熱くないか」
「はい、平気でち」

 栞を抱っこしたまま、肩の力を抜く。
 目の前の栞の後ろ頭を眺めながらお湯をかき混ぜて、のんびりとくつろいでいると、
「ん…」
 ふと栞が小さく息を呑んで、もじもじと躰を揺すり始めた。ふわふわすべすべのお尻が脚の上で踊り、得も言われる心地よさが伝わってくる。
「どうした」
「…なんでもないでち」
 前を向いたまま、抑揚のない声で答える栞。その間にも、腰が疼くように振られ、お尻の柔肉がぷにぷにと跳ねている。
「何でもなくはないだろ。気持ち悪くなったのか?」
「いえ、そうじゃなくて…」
 怖ず怖ずと振り向いた栞は、上目遣いに俺を見つめて、
「あの…ゆ、祐一しゃんの手が、わたちの…おっぱいに…」
「へ?」
 言われてみると、俺の手の平は栞の有るか無きかの胸の上にぴったりと添えられていた。

 腕を動かしてお湯をかき混ぜていて、それで偶然に触れたんだろう。
「ああ、ごめん」
 謝って、手の平を栞のお腹のほうに降ろす。
「あん…」
 切なげな吐息が、栞の唇から漏れた。
「……イヤじゃ、なかったんでしゅけど…」
 人差し指を口にくわえ、甘えた表情で囁く栞。
「……」
 色っぽい仕草に、不覚にもどきどきしつつ、
「え、ええと…もうちょっと温まったら、躰を洗おう」
「はぁい」
 話しを逸らされた栞は、あからさまに渋々とした表情で、こくんとうなずいた。

 ・
 ・

 細く小さな栞の躰を抱き留めたまま、頭の中を空っぽにして、まったりとくつろぐ。
 栞の体重が胸の上に掛かっているが、その重みが落ち着けるというか、安心できるような、不思議な感覚だ。これが父性愛というものだろーか。
「ふう」
 栞の頭に手を乗せ、汗ばんだ髪の毛を撫でてやると、
「ん…あん♪」
 栞は首を竦めて、こそばゆそうに躰を揺すった。
「はぅっ…くすぐったいでち」
 舌足らずな声で呟き、肩の力を抜いて俺に体重を預ける栞。
 汗を吸って湿っていても、絹のような手触りが変わらない黒髪を、ゆっくりと指で梳く。
「…はふ」
 栞の唇から、淡い吐息が漏れ出た。もじもじと腰が揺すられるたびに、つるつるとなめらかな絹肌と、硬さを全く感じさせない柔肉が踊るように動き、背筋が痺れるような気持ちよさが伝わってくる。

「よし、そろそろ躰を洗おうか」
「はい」
 栞を抱っこし直して、立ち上がる。瑞々しい珠肌がお湯を弾いて、鮮やかな桜色に火照った肢体が露わになった。
「きゃっ」
 宙吊りにされた栞が、恥ずかしそうに躰をよじる。桃色に染まったお尻が、ふりふりと左右に揺れた。
「あ、悪い」
「えぅ〜」
 耳たぶを紅色にして、可愛らしく恥じ入る栞。見た目が子どもだから、つい中身は高校生だということを忘れてしまう。

 栞をタイル床に腰掛けさせると、
「…ふにゃあ」
 仔猫のような声を上げて、栞はぺたんと横向きに寝転がった。
「栞? 大丈夫か」
 慌てて呼び掛けると、栞はとろんと潤んで焦点の合わない瞳を向け、
「ごめんなしゃい…ちょっと、のぼせちゃったみたいで…」
 弱々しく呟き、もじもじとお尻を揺すった。

 今の栞の小さな躰には、お湯の温度が高かったらしい。
「ごめん。俺が気が利かないせいで」
 温めの水を栞の脹ら脛に掛けてやりながら、謝る。
「ん…平気でち。そんなにひどくないでしゅから、気にしないで下しゃい」
 お尻を見せたまま肩越しに振り向いて、にっこり微笑む栞の色っぽい仕草に、思わず息を呑む。

「んしょ…もう大丈夫でしゅ」
 寝転んだまま休んでいた栞が、躰を起こして、タイルの上に女の子座りをした。
「ごめんな、本当に」
「平気でち」
 頬を紅く上気させ、穏やかに微笑む栞。まだ少し湯あたりの余韻が残っているのか、頭がふらふら揺れている。
「あ、そうだ。栞」
「はい?」
 俺は栞に頭を下げて、
「栞の躰を、俺に洗わせてくれ」
「えっ」
 栞は瞳をまたたかせて、きょとんとした。
「せめて、それぐらいさせてくれ。栞はじっとしているだけでいいから」

 呆気に取られていた栞は、はっと瞳を見開き、それから顔を伏せてもじもじ恥じ入りだした。
「そ、そんな…恥ずかしいでしゅ」
 目元を赤らめながら、指をくるくると絡ませてはにかむ栞。
「…んっと、ええっと…」
 唇に人差し指を添えて考え込んでいた栞は、上目遣いに俺を見つめて、
「…分かりまちた、祐一しゃん。お任せしましゅ」
 顔を伏せたまま、恥じらいがちに囁いた。
「おう、任せてくれ」
 頷いて、栞の小さな手を握る。
「はい」
 栞もにこっと微笑んで、可愛らしいモミジのような手で握り返してきた。

 ・
 ・

「じゃあ、頭から洗おうか。背中を向けてくれ」
「はい」
 こくんと頷いて、背中を見せて座り込む栞。黒髪の毛先から垂れた水滴が、赤らんだうなじの上にぽたぽたと落ちている。
 後ろ頭を眺めながら、手早く石鹸を泡立てて、
「洗うぞ」
「はい」
 頭の上に泡の固まりを乗せて、洗い始めた。

 片手で掴めてしまえるような小さな頭を両手で包み込み、爪を立てないように気を付けながら、ゆっくり丁寧に洗髪していく。
「痛くないか」
「はい」
 栞が頭をゆらゆらと左右に揺すりながら返事をした。
 石鹸の泡の弾ける音と、髪の毛がかき回されるわしゃわしゃという音が、小さく響く。
「祐一しゃん、頭を洗うのが上手でしゅね」
「そうか?」
「はい、とっても気持ちいいでち」
 あごを引いて、頭の揺れを抑えながら呟く栞。

「あ」
 栞は小さく呟くと、何か思い付いたように、わくわくとした声で、
「祐一しゃん、痒いところはありませんかって聞いて下しゃい」
「なんだ、それは」
「床屋さんで理髪師の人が頭を洗っているときの決まり文句でしゅ。ね、言って下しゃい」
 甘えた声で、おねだりをする栞。
「はいはい。…お客さん、痒いところはありませんか」
 栞は待ってましたという勢いで、
「足の裏が痒いでち。掻いて下しゃい」
 無茶な注文をしてきた。
「手が届かないぞ」
「むう、サービスが行き届いていないでち」
 栞はくっくっと肩を震わせて笑いながら言った。

「それじゃあ、耳の後ろをお願いしましゅ」
「おう」
 髪の毛をかき分けて、栞の小さな耳たぶの裏側を指でこする。
「ん、んふ…」
 気持ちよさそうにのどを鳴らして、うずうずと肩を揺する栞。
「どうだ」
「あ、あんん…い、いい、でしゅ…くふふっ」
 栞は裏返った声で笑いながら、むず痒そうに腰を揺すった。

 反対側の耳たぶの後ろも洗い、うなじのほうまで撫でて、ついでに頭皮のマッサージをする。
「あん、ああ、んっ」
 慣れていないのか、栞は落ち着けないようにもがいた。
 頭からうなじ、肩口まで満遍なく揉んでから、
「お湯、掛けるぞ」
「はい」
 洗面器でお湯をすくい、頭から掛けて石鹸を洗い流し、濯ぎ終えた。
「ほい、終わり」
「ありがとうございまちた」
 栞はにこっと微笑み、毛先からお湯を滴らせながら、ぺこんと可愛らしくお辞儀した。


                                             《その4に続くんでち》

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 星牙でございます。
マキ「マネージャーの小原マキです」

 今回の見所は、漢の三大野望の一つ“幼女とお風呂”です。ちなみに三大野望のもう一つは“熟女とお風呂”、最後は“二人以上の女性とお風呂”。
マキ「風呂から離れろ」
 大丈夫、お風呂は日本人の心の故郷だから。
マキ「どーゆー理屈じゃ」
 説明しよう。人は生まれる前は母胎の羊水に浸かり、生まれたときに産湯に浸かり、日々お風呂に浸かる。人間の一生は、お風呂から離れられないんだヨ。
マキ「異議あり! 裁判長、被告の主張は論理性が著しく欠落しています!」
 まあまあ、錯乱しないで。
 それに、次回はもっとスンゴイ展開だから、問題ない。
マキ「問題大ありじゃああああっ」

 お読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想はこちら→hosikiba@hotmail.comまでどうぞ。
マキ「それでは、ご機嫌よう」




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