愛の浪漫劇場『お茶目な秋子さんねこねこ編 前編』
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平日の昼下がり
「ふっふふん ふふん ふんふん♪」
鼻歌を唄いながら お掃除をします
ごしごし ごしごし
「ふう」
お掃除 終了です
ふと時計を見ると ちょうど一時半です
そろそろお買い物に行きましょうか
・
・
お肉 お野菜 お米 お味噌 卵 調味料
大丈夫 抜かりはありませんね
「るんるる ららら〜♪」
商店街で買い物を終えて 誰もいない小径を てくてく歩いていると
「あら」
畑の脇に 無人野菜売り場がありました
今時珍しいですね
でもお野菜はもう買ってしまっていますし 今日のところは必要ありません
と 私が通り過ぎようとしたとき 変わった形をした果物が眼に入りました
「……」
何となく気になった私は 手にとって眺めてみました
私も初めて見る果物です
南国の果実でしょうか 赤いのと白いの二種類あります
「あ」
そうです これをジャムにしてみるというのはどうでしょうか
最近 新しい味が見付からなかったことですし
お値段は二つで200円
決めました いただきましょう
備え付けの袋に果物を二つ入れてから お財布から小銭を出して 代金箱に入れました
お買い物袋に一緒に入れて 家路に就きます
「うふふ」
どんなジャムが出来るんでしょうか 今から楽しみですね
・
・
ぐつぐつ ことこと
二つのお鍋の中で 赤と白のジャムが ほこほこと踊っています
うふふ 後はゆっくり煮込んで完成です
くんくん いい匂いです
ちょっと味見をしておきましょうか
それじゃあまずは赤いのを スプーンで一すくいして
「うふふ いただきまーす」
ぱく
舌の上で転がして 味わいます
「ん 美味しい」
さっぱりした甘味で いい感じです
もう一すくい いただきましょうか
ぱく
「ん〜」
酸っぱさはないですけれど 口の中が痺れるような 不思議な味ですね
もう一すくい
ぱく ぱく
・
・
「ふう」
き 気のせいでしょうか なんだか身体が熱いです
「はあ はあ」
ん んんっ
胸と下腹部の辺りが 疼いているような
「はっ はぁ はぁっ あっ ぁはぁっ はぁっ」
あ ああ 立っていられません
よろよろ ぽてり
ふらつく足取りで居間に戻って ソファに身を投げ出しました
「はっ はぁっ はふっ ふぅっ ぅふぅっ んっ うふん」
ど どうしちゃったんでしょうか 私
な 何か思い当たることは
ええと ええと
はっ もしかして たった今食べたジャムが原因では
ああ なんてことでしょう
「はっ はあっ ああっ はあっ はぁうっ」
思い当たった途端 身体の火照りと疼きが激しくなりました
「はっ はぁっ ぁはぁっ ぁはぁっ」
痛みや吐き気はありませんから 食あたりという感じではありません
まあ熱を加えてから食べたんですから 食中毒の可能性は低いでしょう
どちらかと言うと 薬物効果に近いような気がします
そうなると どんな作用があるのか見当も付かないんですけど
「あっ あんっ んっ ふぁっ はぁ はぁっ はぁんっ」
あ ああっ
身体はどんどん熱く火照って もう意識も朦朧としてきました
はあ はあ 仕方がありません 素直に119番して救急車に来ていただきましょう
身体を起こして よたよたと電話口に向かいます
「ふっ ふぅっ はぁ はぁんっ んっ んぁあっ」
あ ああ 一歩進むごとに う 内股が こ こすれて
だ だめ だめぇ
「あっ」
どてっ ひざから力が抜けて 絨毯の上に崩れ落ちました
「あふん」
ああっ か か からだ 身体がぁっ あっ あつ 熱い 熱いですぅっ
「ふっ ぅんっ んぁっ あっ んぁぁっ」
がりがり 自然に指で絨毯を引っ掻いてしまいます
「ふっ ふぁっ はぁっ はぁうっ ぅんっ んんんっ」
ああっ な 何かが身体の奥から迫り上がって
だ だめっ いや あっ そ そんなっ
あ あっ あっ あっ
「あ―――――――…」
ふぅっと頭の中が白くなり 意識が飛びました
・
・
ん ううん
「…ふにぃ」
眼を開けてみると まっ暗でした
私 眠っていたんでしょうか
ええと ええと
あ そうです 思い出しました
新しいジャムを作って食べたら 身体が熱くなってしまって それで気を失っていたんです
ぐっすり休んだからでしょうか 火照りも疼きも収まっています
もそもそ 絹の肌触りが頭に触れています お布団が頭から掛けられているみたいですね
名雪か祐一さんが掛けて下さったんでしょうか
ごそごそ
あら おかしいですね お布団の端が見付かりません
? ? お布団ではないみたいですね
とにかく抜け出しましょう
よいしょ よいしょ
ふう ようやく 頭が出ました
まだ部屋の中は明るいです 夕方前みたいですね
えっ
どうして 天井が あんなに上にあるんですか
ソファの脚もすごく高くそびえていますし
ああっ 何がどうなっているのかしら
「…にゃ」
……はい?
な なんですか いま私の口から出た言葉は
ドキドキ も もう一回 声を出してみましょう
「にゃ」
えっ あっ ええっ!?
い いま私の口から出た声 いえ 鳴き声は一体
おろおろしながら首を巡らしてみますと 窓ガラスに 一匹の猫さんが写っていました
薄い紫色をした綺麗な毛並みの猫さんです
はっ ふと恐ろしい考えが脳裏をよぎりました
「……」
私はその恐ろしい考えの真偽を確かめるために 行動に出ることにしました
「にゃー」
私が声を上げると 窓ガラスに写った猫さんも 口を開けてにゃーと鳴きました
「ふにゃ」
私が右手を挙げると 窓ガラスに写った猫さんも 右前足をぴょこんと持ち上げました
……………
これはつまり
いま まどがらすにうつっているねこさんは わたしとゆーことになるんでしょうね
ちょっと どうてんのあまり しこうがはたらかなくなっていますね
なにがどうして どうなって というのもきになりますけれど
わたしはこれからいったい どうなっちゃうんでしょうか
《ねこねこ編 中編に続きます》
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