愛のコント劇場『お茶目な秋子さん台風ごーごー編』

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 びゅおおおおおお ばさばさばさばさ

「ふう」

 私は布団の中で 寝返りをうちました

 台風の影響で夕方頃から雨足が強くなってきていたのですが 今がピークのようです

 天気予報によると 明日の朝には通過するらしいんですけど

 ごおおおおお

「きゃあああ」

 こ 怖い 怖いです

 家の中にまで風の音が響いてきて 怖くてたまりません

「はうう」

 子どもっぽいと分かってはいるんですけれど でもでも ううう

 ひょっとしたら今にも突風が吹き付けて 屋根と壁が吹き飛ばされて

 私もそのまま風に舞い上げられて くるくるぴゅーって 空高く

 もし そんなことになったらと思うだけで 震えが止まりません

 びゅおおおおおっっ ばさばさばさばさ

「きゃあああ」

 うっ うっ えぐ えぐ

 こ 怖いですぅ うえええん

 びゅおごごごごごご がたんがたんがたんがたん

「ひゃあああ」

 はうう ぐしゅぐしゅ

 お布団の中で ぶるぶる震える私

「えう えう えう」

 名雪や祐一さんは平気なんでしょうか

 風雨の音は二階のほうが大きいのかもしれませんし

 それに屋根が吹き飛ばされたら大変です (←吹き飛びません)

 ちょっとだけ様子を見に行ってみましょうか

 別に怖くて眠れないから 気を紛らわせにいくわけじゃありませんよ

 では そうと決まれば

「よいしょ」

 ぶぉごごごごごごごごーっ

「ひゃわわわわわっ」

 がばっ 思わず頭からお布団に突っ込みました

 はうう びっくりしました

 まだ心臓がばくんばくん言っています

 気を取り直して 震える脚に叱咤しながらベッドから起き上がりました

 ごおおおおお

 びくぅっ

「ふう はあ ふう」

 落ち着いて 平気 平気よ

 ふらふら よたよた

 廊下に出て 階段に向かいます

 ごおお

 ひぃっ

 だ 大丈夫 大丈夫よ秋子

 怖がらなかったら なんてことはないのよ

 ごおお

 うくっ

 大丈夫 大丈夫です

 だいぶ慣れてきました

「ふ ふふん そ そ そんなことで わ わた 私を驚かせると思っているんですか」

 びょごおおおおおおおーっっ

「ひゃあああーっ!」

 ずるっ びたんっ

「きゃうっ」

 びっくりした拍子に 脚がもつれて転んでしまいました

「はうう」

 床にぶつけた おでこが痛いです

 名雪や祐一さんに見られなかったことが 不幸中の幸いでしょうか

 ふみゅう

「よいしょ」

 へろへろした足取りで 階段を上がります

 ごおおお

「ひゃんっ」

 平気平気 大丈夫大丈夫 怖くない怖くない怖くない

 ほら もう名雪の部屋に着きました

「名雪 入るわよ」

 声を掛けてみてから ドアを開けました

「すぴー」

「……」

「くかー」

 鐘や太鼓 銅鑼を以てしても眼を覚まさないと祐一さんに揶揄されるだけあって ぐっすり寝入っています

 風や雨音なんかでは この子の眠りを妨げることは出来ないんですね

 安心したような 妬ましいような 複雑な気持ちになりながら名雪の部屋を出ました

「ふう」

 祐一さんはどうなさっているんでしょうか

 風雨の音に怯えて ぶるぶる震えていたりして

 うふふ 子どもみたいですね (←自分のことを棚に上げてます)

 もしそうでしたら 私が優しく抱き締めて

『よしよし ママが抱っこしてあげるから 怖がらなくてもいいのよ』

 あまつさえ その後

『ほら 怖いからって泣いていちゃ駄目よ』

『はい ママのおっぱいを吸って安心しなさい』

 きゃー きゃー きゃああー♪

 そうじゃありませんっっ 官能小説の読み過ぎですっっっ

 でも可能性としては なきにしもあらず (←ありません)

「ほへー」

 はうっ 涎が

 い 行ってみましょう

 どきどき わくわく

 コンコン

「ゆ 祐一さん」

 しーん

「秋子ですけど 入っても宜しいですか」

 しーん

「入りますよ」

 しーん

「失礼します」

 がちゃ

「あの 祐一さん?」

「ぐー」

「……」

 健やかに寝入っていらっしゃいます

 拍子抜けと言いますか ものすごくがっかりしました

 残念です 違います

 ぶるぶる震えていてくだされば 顔を私のおっぱいに埋めさせて差し上げたのに 違います

「はあ」

 取り敢えず名雪も祐一さんも 特に問題はないみたいですね

 と言いますか 普段と全くお変わりありません

 では 怖がっているのは私一人っ!?

 がーん

「はうう」

 なんだか ものすごく疲れました

 もう部屋に戻って 休みましょう

 ぐぉごごごごぉおぉおぉーっ

「きゃあん」

 突然 窓の外で風が唸りました

「ひゃわわ」

 は 早く お布団に戻らないと

 びゅごごごごごごごーっ

「ぅきゃーっ」

 ずざざっ がばっ

 はあ はあ

「ふう」

 お布団に飛び込んで ほっと一息です 

「ぐー」

 って これは祐一さんのお布団じゃありませんかっ

 何をしているんですか 私っ

 早く出ましょう

 ぶおおおおおっ どしゃーん がらんがらんがらんがらん

「ひゃわわわわぁぁ」

 い 今 外の道で 何かが 吹き飛んでいきましたぁぁ

 ひょ ひょっとしたら 余所のお宅の壁と屋根かも

 あわわ もしかしたら次は この家が

「いやぁん」

 こ 怖い 怖いですぅぅ

「ぐすんぐすん」

 躰が縮み上がって 手足が動かせません

 当然 祐一さんのお布団からも出られないわけで

 あ ああ どうすればいいんでしょう

「ぐー」

 私のすぐ横では 祐一さんが何事もないかのよーに寝入っていらっしゃいます

 ううっ なんだか悔しいです

 私がこんなに怖がっているんですから 助けてくださってもいいじゃありませんか

「むにゃ」

 ぐいっ

「えっ」

 ぎゅうっ

「ひゃ」

 え あ えっ

 目の前に 祐一さんのお顔

 肩と背中に 祐一さんの腕

 ひょ ひょっとして私 抱っこされていますかっ?

「あ あの 祐一さん」

「ぐー」

 祐一さんは先程と変わらない寝顔です

「も もしもし 祐一さん?」

「ぐー」

 私が抱っこをしにきたのに されてしまってどうするんですか そうじゃありません

「うーん えいっ えいっ」

 離れようと身をよじってみましたけれど 祐一さんの腕は重くて持ち上がりません

 ああん どうしましょう

「むにゃ」

 さわっ

「あん」

 あ ああっ 祐一さんの手が お お お尻にっ

「ゆ 祐一さんっ 起きてらっしゃるんですか?」

「ぐー」

 邪気のない表情で寝息を立てる祐一さん 寝ているのは間違いないみたいです

 でも さすがにこの状況は私も ちょっと

 出来れば最初は愛撫でなく優しいキスから 違います

「あ あのっ 祐一さんっ 起きて下さいっ」

「ぐー」

「祐一さんっ 祐一さんったら」

「ぐー」

 さわさわ

「あふん」

 ああ また お尻を

 さわさわ さわさわ

「あはん」

 ああん また

 この 触れるか触れないかの微妙なタッチがたまりません

 そうじゃありませんっ

「はあ ふう はあ」

 どうすればいいんでしょうか

 よく考えれば このまま祐一さんに眼を覚ましていただいても 状況を説明するのは困難を窮めそうですし

「あ」

 いつの間にか 恐怖心がなくなっていました

 祐一さんに抱っこしていただいたからでしょうか

「ぐー」

「……」

 肩の力を抜いて 祐一さんに寄り添ってみました

「ほう」

 祐一さんの温もりがじんわりと伝わってきて とっても心が安らぎます

「ふにゃあ」

 気持ちがいいです

 もうこのまま 身も心も祐一さんにお預けしてしまいたくなります






 違います 否定するのに間があったような気がするのは 思い過ごしです

 いけません こういうことは

 私は祐一さんの保護者なんですから 祐一さんに甘えるわけには

 ああ でも ひょっとしたら 私の方が祐一さんに支えてもらっているのかも

 何かのきっかけでそのことに気付いてしまって

 そのまま 雪崩れ込むように身も心も祐一さんに委ねてしまったり

「ほへー」

 違いますっ 呆けてどうするんですか

 ああん また涎が

 はあ ふう 落ち着きましょう

 やっぱり この抱っこされているという状況がよくありません

「よいしょ よいしょ」

 ずりずり

 躰を少しずらして 祐一さんのお顔を胸元まで持ってきました

 これで 私が祐一さんを抱っこしていることになります

 ばっちりです 万事問題無しです

「ぐー」

 うふふ 祐一さんの安らかな寝顔は とっても可愛らしいです

 見つめているだけで 胸の奥がほんのり温かくなるような

「ふわわ」

 気持ちが安らいで 眠くなってきました

 部屋に戻ろうにも 祐一さんは離して下さいませんし

 仕方ありません このままお休みしましょう

 この安らぎを手放したくない なんてことはありません

 風の音が怖くて廊下を帰れない なんてこともありません

 これは言うなれば不可抗力 正当防衛です (←?)

 では お休みなさい

「すぅ すぅ」

 ・
 ・

 チュンチュン チチチ

「うーん よく寝た」

 ごそごそ

 あん

「なんか昨日はぐっすり眠れたな」

 もぞもぞ

 ああん くすぐったいです

「ん 何だこの柔らかい物は」

 さわさわ

 んっ んん いやん♪

「抱き枕なんか 入れた覚えないけど」

 もみもみ

 あっ ああっ ああん そんな♪

「暗くて よく分からん」

 もみもみ もみもみ もみもみ

 あ あっ あん あん ああぁん♪

「うふん」

「うぉわーっっっっ」

 何でしょうか 騒がしいですね

「ん うぅん ふわぁ」

 伸びをしながら躰を起こしました

 薄暗がりの中 祐一さんが唖然とした表情で私を見下ろしています

「おはようございます 祐一さん♪」

「あ 秋子さん どうしてここに」

 まあ祐一さんたら 朝の挨拶を蔑ろにしてはいけませんよ (←寝惚けてる)

「ゆ・う・い・ち・さん」

 祐一さんの鼻を ちょんと突っついて

「朝は おはようございます です」

「え あ は はい おはようございます」

 うふふ

「よくできました♪」

 抱きっ

「むぐっ」

 ご褒美に抱っこしてあげちゃいます

「うふふ」

「むー むー」

 おっぱいに顔を埋めて もがもが暴れる祐一さん

 うふふ そんなに嬉しいんでしょうか (←寝惚けてる)

「ほらほら はしゃがないで♪」

 むぎゅっ

「うぐぐ」

 時計を見てみますと まだ五時前です 起きるのは早過ぎますね

「えい♪」

 ぼすん

「もがっ」

 祐一さんを抱っこしたまま 縺れ合うように寝転びました

「はい お寝んねしましょうね〜」 (←寝惚け続行中)

 むぎゅううううう

「ふぐー」

 あふん 祐一さんの熱い吐息がおっぱいをくすぐって こそばゆいです♪

「うふふ♪」

 ぎゅっぎゅっ むにゅむにゅ

「むー むー」

 祐一さんは真っ赤になった顔を上げて

「ちょ ちょっとっ 秋子さん 離して下さいっ」

「いいじゃありませんか」

 むぎゅう

「あうう よ よくありませんっ」

 じたばた もがもが

「祐一さん あまり明け方から騒ぐものではありませんよ」

「そういうことじゃないでしょう!」

 うふふ 祐一さんは 朝から元気いっぱいですね

「静かに出来ない子は こうです♪」

 ぼふっ むんにゅっ

「はぶっ」

 祐一さんのお顔を おっぱいの谷間に挟み込みました

「う うー うー」

「うふふ♪」

 むにゅりむにゅり

「う」

 ブチッ 何かが千切れるような音がしました

「あっ 秋子さんっ」

 がばっ

「きゃん」

 祐一さんに 組み伏せられてしまいました

「すみませんっ」

 一言謝ると 祐一さんは私の寝間着に指を掛けて

 しゅるしゅる するする

「あらあら」

 うふふ 祐一さんの切羽詰まったお顔 とっても凛々しくて素敵ですね (←まだ寝惚けてる)

 何か重大なことを見落としているような気がしないでもありませんけれど

 でも今は取り敢えず このまま成り行きに身を任せてしまいましょう

「………………………………………………………………………………………………あん♪」

 ・
 ・

「ん あっ ああんっ あっ あん ああっ」

 ぎしっぎしっぎしっ

「あっ はあっ あっ ああーっ あっ あーっ はっ あっ はぁんっ あっ あっ ああーんっ」

 昨夜の台風に勝るとも劣らないほどの激しい大嵐が吹き荒れちゃっています

「あっ はあ はあっ あっ あっ あああっ あぁあぁ―――――っ♪」

 ・
 ・

「ふう はあ ふう」

「うふふ お疲れ様でした」

 祐一さんと抱き合ったまま 寝転びました

「はあ はあ」

 荒い息を吐いて お顔を赤くしている祐一さんは とっても可愛らしいです

「うふふ」

 頭を撫でちゃいましょう

 なでなで

「あ 秋子さん」

 恥ずかしそうに肩を揺する祐一さん

 ああん もう可愛らしくてたまりません

 食べてしまいたいです

 と言いたいところですけど もう食べてしまいました うふふ

 正確には食べられたのかも知れませんけど 些少のことはどうでもいいです

「ほふう」

 また物欲しくなってきてしまいました

 お代わりしちゃいましょうか うふふっ♪

「あの 秋子さん」

「はい?」

「どうして 俺の布団に入っていたんですか」

 ギク

「あ あの それは」

 台風の風と雨音が怖くて来てしまいました などと言ってしまっては 私の面目は丸潰れです

 ええと ええと こういうときは

 あ そうです 笑って誤魔化しましょう

「うふふっ♪」

「いえ 微笑まれても」

 むー しつこいですね

 それなら

「えいっ♪」

 ぎゅっ むんにゅっ

「ふぐっ」

 また祐一さんのお顔をおっぱいで挟みました

「う うー うー」

 しばらく暴れていた祐一さんが やがて静かになって

 ブチッ 聞き慣れた音の後

「あっ 秋子さんっっ」

 がばっ

「きゃあん♪」

 もがもが

「あ あ ああ あんっ♪」

 窓の外は 台風一過で晴天ですけれど

 部屋の中では 激しい嵐が連続して捲き起こっています♪

「あ あっ ああっ ああーんっ♪」


                    愛のコント劇場『お茶目な秋子さん台風ごーごー編』 おしまい

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 星牙でございます。
マキ「マネージャーの小原マキです」
 台風シーズンには、少し遅かったかな。時期ネタの取り扱いは、遅筆の人間にはつらいです。

 今回こそは秋子さんが子どもっぽくならないよーに気を付けていたはずなのに、何故かこの有様。変だなあ。
マキ「変なのはそなたのアタマじゃ」
 ういい。お姉さんな感じを加味しようと頑張ったら、勢い余ってドえらい方向にカッ飛んでしまったし、世界は不思議に満ちているネ。
マキ「そなた独りで、世界の不思議の5%程度は賄っているように思う」
 やだなあ、誉めすぎだヨ☆
マキ「誉めとらーん!」

 お読みいただきありがとうございました。
マキ「それでは、ご機嫌よう」


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