愛のコント劇場『お茶目な秋子さん のぞき編』

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「るんるるる らららら〜」

 今日もとってもいいお天気 外に干した洗たく物もよく乾いています

「ふふん ふん ふんふふ〜ん」

 鼻歌を唄いながら 丁寧に洗たく物をたたんで それぞれの部屋に持っていきます

 洗面所 私の部屋 それから二階に上がって 名雪の部屋

 最後は祐一さんの部屋です

「失礼します」

 祐一さんは学校に行って留守をしていますけれど 一応声を掛けて部屋に入りました

 祐一さんの部屋は やっぱり私や名雪の部屋と違って 男の人の匂いがしますね

 てきぱき てきぱき タンスに洗たく物を仕舞ってお仕事は完了です

「ふう」

 ふとベッドの上に 大雑把にたたまれたパジャマが置かれているのが眼に入りました

「うふふ」

 自然に微笑みが込み上げてきます

 祐一さんもまだまだ子どもっぽいところがあるんですよね

 そこがまた萌え げふんげふん

「コホン」

 咳払いをして パジャマをたたみ始めました

 パジャマからは祐一さんの匂いがします

「……」

 あ 何だか胸がドキドキして 躰の奥がうずうずと熱くなってきたような

 ぎゅうっ 思わずパジャマを抱き締める私

「はっ」

 我に返りました

 べ 別に毎日こんなことをしているわけじゃありませんよ

 え ええと だいたい 週に六日ぐらいです

 日曜日は祐一さんご本人がいるので出来ないんです

 残念で仕方がありませ げふんげふん なんでもないです 今のは冗談ですよ

「ああ もう 私ったら」

 急に恥ずかしくなってきちゃいました

 たたんだパジャマを置いて 私が立ち上がり掛けると

 ガチャ 玄関のドアが開く音がして

「ただいま」

 ギクゥッ

 ゆ ゆっ 祐一さんっ

 トン トン トン ああ 階段をのぼる音が

 い いけません 隠れないと

 え ええと ええと おろおろ おろおろ

 あ そうです クローゼットの中に

「えいっ」

 しゅたっ パタン

 ガチャ 私がクローゼットに飛び込んで扉を閉めるのとほとんど同時に ドアが開いて

「ふう」

 祐一さんが部屋の中に入ってきました

 ほう 間一髪です って どうして私が隠れる必要があるんですか

 私は別に悪いことをしていたわけじゃありませんし

 ま まあ ほんの少し 後ろめたいことはしていましたけれど

 そうですね ちょっと祐一さんを驚かせてしまうことになりますけれど ここから出ましょうか

 と 私がクローゼットの扉を開こうとしたとき

「あー 疲れた」

 祐一さんがブレザーを脱ぎ始めるのが隙間から見えました

 えっ あっ ええっ

 ブレザーをハンガーに掛けて ズボンも降ろしてしまう祐一さん

 あ あっ ああっ そ そんなっ そんなっ

 いやぁっ は はしたないです祐一さんっ (←?)

 年頃の乙女     じゃありませんけれど わ 私が見ている前で

 って 祐一さんがそんなこと気付いているわけがありませんよね

 あ ああ それにしてもどうしましょう

 こうなってしまっては よけいに出にくくなってしまいましたし

 そうこうしているうちに 祐一さんはもうトランクス一枚の姿に

 あっ そ そんなっ あっ ああっ い いいんですかっ? (←何が)

「…ゴクン」

 こうして見てみると 祐一さんは細身なんですね

 でもお腹は出たりしていませんし 胸も大きくて広い感じです

 ドキドキ はあ はあ

 って 息を荒げてどうするんですかっ

 ふう はあ 落ち着くのよ秋子

 はい 深呼吸 すーは すーは

 ええと 冷静に考えて いま私がクローゼットから出た場合

『あっ 秋子さん どうしてそんなところに』

『待って下さい祐一さん これには事情があるんです』

 と 祐一さんは唇を歪めて

『秋子さん 俺が着替えるのをずっとのぞいていたんですね』

『えっ え ええと はい』

 何故か祐一さんに気圧されながら うなずく私

『あの でも これは不可抗力で』

 祐一さんは私の言い訳を遮って

『俺が一方的に見られっぱなしっていうのは不公平ですよね』

『え』

 一歩一歩 私を追い詰めるように近付いてくる祐一さん

『あ あの祐一さん 何を』

『簡単なことですよ 俺も秋子さんが着替えているところを見せて下さい』

『えっ』

 背筋が凍り付く私

『そうでないと割が合わないでしょう』

『え ええっ そ そんな わ 私 いやです』

 後ずさる私の背中が壁にぶつかって

『まあ秋子さんが 自分で着替えるのが嫌だって言うんでしたら構いませんよ』

『ほ 本当ですか』

 安堵と共に訊ねる私

『ええ 俺が勝手に見ますから』

 がばっ 突然 祐一さんが襲い掛かってきて

『きゃあっ』

 どさっ 不意を突かれた私は為す術もなく押し倒されて

『なっ 何をするんですかっ 祐一さん』

 祐一さんは答えずに 私の服に手を掛けて

 ビリビリ ブチブチ ボタンがちぎられて 生地が引き裂かれて

『あ ああ〜〜〜』

 ・
 ・

「ほへー」

 って 呆けてどうするんですかっ

 はぅあっ 口元には涎まで

 ああ もう どこが冷静なんですか 私っ

 だいたい祐一さんが そんなことをするわけがないじゃありませんか

 ああ もう私ったら

 私がもがもがしている間に 祐一さんは室内着のトレーナーに着替え終えていました

 ああ 残念です そうじゃありません

 もっと眼に焼き付けておくべきでした だからそうじゃありません

 ガチャ パタン シャツを持って部屋から出ていく祐一さん

 チャンスです 今のうちにクローゼットから出て

 あ いえ 待って下さい

 私がこのまま二階から降りていったら 祐一さんが何か不審に思うかもしれません

 ううん ううん どうしたら

 あ そうです 名雪の部屋にいたと言えばいいんです

 祐一さんに嘘を吐くのは心苦しいですけれど 今は仕方ありません

 そうと決まれば善は急げです

「よいしょ」

 ギイイ 私がクローゼットから出て 部屋を出ようとドアに近付くと

 トン トン トン 階段をのぼってくる足音が

 びくぅぅっ

 あわ あわわわ

 ずざざっ パタンッ またクローゼットの中に舞い戻る私

 ガチャ ドアが開いて祐一さんが戻ってきました

 どうやら祐一さんは 洗たく物のシャツを置いてきただけみたいですね

 はあ 危ないところでした

 って言うか どうして祐一さんが行ってすぐに 部屋から出なかったんですか私はっ

 ああん もう 私のばかばかばか

 私が自己批判をしている間に

「ふあ〜」

 祐一さんはあくび混じりに大きく伸びをして

「よっと」

 ベッドに横になってしまいました

 ああっ そ そんな それじゃあ私が出られないじゃありませんか

 ううん 祐一さんのいけずぅ そうじゃありません

 はあ それにしてもどうしましょうか

 やっぱりこのまま出ていくしか

 でもそうなると

『はあ はあ ああ も もうやめて下さい 祐一さん』

 抵抗する気力を奪われ 息も絶え絶えに懇願する私

 祐一さんは唇を歪めると 私の下着の中に手を差し入れてきて

『あ ああっ そ そんなっ』

 そのまま乱暴に 乳房を揉みしだかれて

 私の躰はどんどん熱くなっていって

 ・
 ・

「…ほへー」

 って だから呆けていてどうするんですかっ

 ああ また涎が ごしごし

 ふう はあ 落ち着くのよ秋子

「ぐー」

 あら

 こっそりと クローゼットの扉の隙間からのぞいて見てみますと

「ぐうー」

 祐一さんがいつの間にか寝入ってしまっています

 この隙に出ましょうか いえ でもクローゼットの扉が軋む音で 眼が覚めてしまうかもしれません

 ここは祐一さんが完全に寝込むまで待つのが得策でしょう

 持久戦ですね 負けませんよ祐一さん

「……」

「ぐー」

 祐一さん 気持ちよさそうに寝ていますね

「……」

「ぐー」

 退屈です

「……」

「ぐー」

 クローゼットの中は暗くて 温かくて 祐一さんの匂いがして

「……」

「ぐー」

 だんだん

「……」

「ぐー」

 眠く

「……すぅ」

「ぐー」

 ・
 ・

「んん」

 いたたた 身体が痛いです

 どうして私 こんな狭いところで眠っているんでしょうか

 ギイイ

 寝付かれない姿勢で眠っていたので 頭がぼーっとしています

「はあ」

 肩とか背中が痛くて仕方がありません そのうえとっても眠いですし

「ぐー」

 ちょうどベッドがあります 祐一さんが寝ていらっしゃいますけど 私一人分ぐらいの場所はありますね

 よろよろ ぽてり

 はあ 布団の感触が気持ちいいです

 おやすみなさい

「…すぅー」

 ・
 ・

 ぱたぱたぱたぱた

「うー お母さんがいないよー お腹が空いたよー」

 とたとたとた ガチャ

「ねえ祐一 お母さん どこ行ったか知らな」

 ピキ―――ン (←空気が凍る音)

「ぐー」

「すぅ〜」

「……………………………………………………………………………………………………」

 ドスドスドス

「起きるんだよ 祐一っ」

 バキィ!

「ぐごっ! な なんだっ」

「どうしてお母さんと祐一が一緒に寝てるのっ」

 ガスッ!

「ぎゃあっ な 名雪 どうした」

「祐一 わたしの質問に答えてよ」

「え? え? ど どうして秋子さんが俺の横で寝ているんだ」

 バシンッ!

「ぶはっ」

「とぼけてないで わたしの質問に答えるんだよっ」

「は はい」

「祐一 お母さんに誘われたの?」

「え な 何の話し」

 バァン!

「ぐげっ」

「ハイかイイエで答えるんだよっ」

「う ううっ ええと あ 秋子さんに誘われた覚えはないぞ」

「ふーん そう」

「ああ」

 ギラリーン (←名雪の瞳が光った音)

「じゃあ 祐一がお母さんを引っ張り込んだんだね」

「な なんだそりゃ 俺は知らんぞ」

「お母さんの手首を押さえ付けて組み伏せて アレとかコレとか スンゴイことをいっぱいしたんだね」

「してないっ」

「言い訳なんか聞きたくないよっ」

「言い訳じゃない 少しは話を聞いてくれ」

「いやだよ」

 キュィィィィン (←名雪の『氣』が昂まる音)

「待っ」

「名雪スペシャル!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ドバキィッ ぐお ガシャーン ズド グシャアッ

「ふう 虚しい勝利だよ」

 ガチャ すたすたすた

 ううん もう何ですか さっきから騒がしい

 遊ぶにしてももう少し静かにしないと ご近所迷惑ですよ

「すう すう」

                                  愛のコント劇場『お茶目な秋子さん のぞき編』 おしまい

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 星牙でございます。
マキ「マネージャーの小原マキです」

 えっちじゃない秋子さんは久しぶりに描いたから、何だか新鮮だなあ。
マキ「普通の御仁なら、そんなことに新鮮さは感じないものじゃ」
 むい。ところで今ふと思ったんだけど、小生の描く秋子さんって、『お茶目』って言うよりむしろ『妄想癖』…?
マキ「待て、それは禁句じゃ」
 ういい。

 お読みいただきありがとうございました。
マキ「それでは、ご機嫌よう」


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