愛のコント劇場『お茶目な秋子さん 風邪&官能小説編』

 ※えっちです(端的すぎ)。

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 ぐしゅ ぐしゅ

 鼻づまりです

 頭がぼーっとしています

 これは風邪ですね

「ふぅ」

 はあ 私としたことが 風邪を引いてしまうなんて

 昨日の夜 お風呂に入ってから 髪の毛を乾かさずに つい本を読み耽ってしまったせいですね

 油断大敵です

 あ くしゃみが

 ふぁ ふぁ

「はぷッ」

 はふぃ

 ちり紙で鼻の頭を拭いて 一息

 熱と鼻水だけで 頭痛がないのが せめてもの救いですけれど

 それにしても熱で頭がくらくらします

「はふ」

 まあ 引いてしまったものは仕方がありません

 ゆっくり休んでしっかりと治しましょう

 ・
 ・

 寝間着に着替えて ベッドに入ってほっと一息

 夜まで眠れば 大丈夫でしょう

「………」

 はぅ こんな明るい時間から 眠れるはずありません

 退屈です

 書庫の本は みんな読み終えてしまっていますし この部屋にはテレビもありません

 あ くしゃみが

 ふぁ ふぁ

「はぷッ」

 ふみゅ ぐしゅ ぐしゅ

「はぅ」

 暇です 退屈です ヒマヒマ星人です

 こうまですることがないと ちょっと落ち着きません

 あ そうです ずっと前に 読みかけて放ったらかしにした本がありましたよね

 ベッドから抜け出して

「ええと」

 ごそごそ 書庫を漁る私

 あ ありました

『情欲未亡人 皆瀬秋子』

 あぐっ

 タイトルだけで 卒倒しそうなダメージがあるんですけれど

 この名字が 水瀬ではなく皆瀬なところが 何かこう意味深な気が

 まあ いいでしょう

 この本を読みかけで放り出したのは

 ええと その この本はタイトルから予想される通り 官能小説なんですけれど

 内容がですね

 官能小説ですからえっちなのは まあいいんです いえ よくはないんですけれど

 本の帯に書かれている あら筋部分

『色情狂の未亡人と居候の甥 二人の情欲のままに繰り返される 肉欲と劣情の宴』

 はふん

 まるで私に当て付けているかのような設定と内容です

 いえ 違いますよ 私は色情狂なんかじゃありません たぶん

 祐一さんには普通の家族として 接していますよ

 いえ その たまに お風呂上がりに 祐一さんのお部屋にお邪魔したりしますけれど

 その程度ですよ その程度

 げふん げふん 私のことはいいんです

 まあ 取り敢えず読みましょう

「……」

 ・
 ・

 ドサリ。祐一はソファの上に、秋子の身体を荒々しく投げ出した。
「あんっ」
 そのまま覆い被さり、秋子の衣服を剥いでいく祐一。
「ああ、いけません」
 言葉とは裏腹にさしたる抵抗も見せずに、祐一のなすがままにされる秋子。カーディガンとセーターが乱暴に脱がされる。
 祐一はブラウスの襟に手を掛け、
「そらっ」
 ブチブチブチッ。強引に前が開かれ、引きちぎられたボタンが絨毯の上に落ちた。
「あああっ」
 祐一の荒々しい仕草に、秋子の身体の奥が熱く疼く。祐一は淡紫色のブラジャーの下に手の平を差し込むと、秋子の豊満な乳房を乱暴に揉みしだき始めた。
「ああっ、あああーっ」
 身体を揺する秋子の唇を吸いながら祐一はブラジャーを引きちぎり、露わになった乳房を鷲掴む。
「あ、ああっ!」
 歓声を上げる秋子に覆い被さり、乳房を執拗に揉み上げ、こね回していく祐一。
「んはっ、はぁっ、あああっ!」
 祐一の手が、秋子のスカートの奥に差し込まれる。
「あっ、ああーっ!」
 いきなり秘部に触れられ、あられもない悲鳴を上げる秋子。そこはすでに熱く火照り、歓喜の蜜で濡れそぼっていた。
 祐一の指がショーツ越しに蜜壷の上をこすり上げる。
「ぅあっ、あっ、はぁぁーっ!」
 淫らに身体を揺する秋子を押さえ付けるような体勢で、祐一は器用に秋子の肢体をもてあそび続ける。
「んはっ、あっ、はぁ、はぁ、ああ〜」
 もはや快楽の虜になった秋子の口からは、掠れた喘ぎ声が漏れ出るだけだった。
「うっ、あっ、ぁはぁっ、ぁはぁっ」
 祐一は手探りでショーツの生地を掴み、引き下げる。スカートはそのままで、ショーツだけが抜き取られ、床に放り捨てられた。
「ああ、ああっ」
 祐一はスカートの奥に手を差し込み、人差し指と中指を秋子の蜜壷に突き入れる。
「ぅいっ、ぃいぁーっ!」
 獣じみた嬌声が秋子の唇からほとばしった。肉ひだをかき分けながら、秋子の蜜壷の中を掻き回す祐一。
「ひっ、いっ、…はひっ、はひぃっ! ああ、ぅんぁあぁっ!」
 秋子の深奥から止め処なく溢れ出る蜜が、祐一の指に絡み付き、太ももを伝い流れ出ていく。
「ぅあっ、ああっ! はぁっ、はぁぁっ! ゆ、ゆっ、祐一さんっ!」
 やがて祐一は秋子から身を離し、服を脱いだ。
「…んふっ、ふぅっ、うぅ……」
 ふらふらと身体を揺すりながら、物欲しげに祐一を見つめる秋子。祐一は秋子の両足首を掴まえ、ぐいと開いた。
「あ、ああ…」
 そんな仕草にさえ、情欲を喚起される秋子。祐一は酷薄な笑みを浮かべ、濡れそぼった秋子の蜜壷に屹立した


「ああああああ――――っ!」

 も もうだめですっ これ以上読めませんっ

 はぁーっ はぁーっ

 うううう お 思っていたよりもずっと えっちで あぅ あぅ あぅ

 はふん

「……はあ」

 文庫本を枕の脇に置いて溜め息を吐く私

 フィクションだと分かっていても 自分の名前がこうも何度も出ていては 耐えられません
 
「………」

 ちらりと本を見てみました

 読んだのはまだ全体の五分の一ぐらいなんですけれど すでに内容はドロドロになっていて

 はふん

 だ だって今だって 昼間から居間で ごにょごにょしちゃったり

「……」

 どんなふうに続くんでしょう

 もうちょっとだけ 読み進めてみましょうか

 ・
 ・

「あっ、んぁっ、ぁはぅっ!」
 身体を仰け反らし、秋子は快楽の直中にいた。
「んっ、はぁっ、ぁはぁっ、あっ、あっ!」
 半ば衣服を着たままでのもどかしさが、祐一に無理矢理に犯されているかのような錯覚を生み、秋子の理性を砕き、情欲に拍車を掛けていく。
「ぅあ、あぁ、あああ…っ!」
 秋子の瞳が焦点を失い、口が大きく開かれていき、
「ひっ、はひっ、ぁいっ……、…んぁっ、あ―――っ!」
 ぶるぶると全身をわななかせ、秋子は早々と絶頂に達した。
「…ふぁ…あ、はぁ、はぁ……」
 がくりとおとがいを反らして弛緩しかけた秋子の身体を、祐一は強引に突き上げた。
「ぅっ、あああっ! …いやっ、…ま、待って…少し、休ませ…ひぁぁぁっ!」
 秋子の言葉には耳を貸さず、ぐいぐいと乱暴に体内を掻き回す祐一。やがて秋子の身体にも再び火が点き、情欲の権化と化していく。
「…ぅあっ、あぁんっ! …んはっ、あああ〜!」
 秋子の脚が宙を掻きながら、大きく左右に開かれていく。
「はぁっ、んぁっ、ああ…っ! う、ぅんっ…あっ!」
 粘膜が絡み合い、湿った水音が結合部から漏れ出る。
「…あっ、あっ、あああっ! …んっ、んむぅっ!?」
 突如祐一の手の平が、嬌声を上げ続けていた秋子の口を塞いだ。
「…んむ、ぅむぅっ! …んぁっ、ぁあぁっ!」
 口を塞がれ、くぐもった声で喘ぐ秋子。祐一はさらに激しく腰を動かし、秋子の体内を乱暴に攻める。
「んぅっ、むぅぅっ! んむ、んむっ、んぅぅ〜! う、うううっ」
 容赦のない祐一の苛烈な責め苦に、秋子の瞳から苦痛と歓喜の入り交じった涙がこぼれだした。
「…ぅあ、ぁうっ、ぁうぅっ! …むぁぁっ!」
 口を塞がれ、押さえ付けられたままでの行為による被虐心が、秋子の身体を焦がす。狂おしいほどの快楽が怒濤のように押し寄せてくる。
「ひぐっ、ぃいぃっ…! んぁっ、ぅんぁあぁ―――っ!」
 秋子の瞳からは歓喜の涙が溢れ、その思考は情欲に霞んでいく。秋子の身体は貪欲に祐一を求め、より深い快楽を貪ろうと大きく開かれていった。
「んぁっ、んぁっ、んぁっ…ぅああっ!」
 秋子は牝としての本能のままに、牡である祐一を受け入れ、際限なく淫らに


「あああああああ―――っっっっ!」

 くはーっ くはーっ

 だめですっ これ以上はっ

 はぁ はぁ はぁ はぁ

 こ こんな ふしだらですっ

 うううううう

 私はもちろんこんなじゃありませんし ゆ 祐一さんだって そうです たぶん

 いえ まあ もしかしたら 祐一さんはこれぐらい激しいかもしれませんけれど

 激しい

 ドキドキ

 居間のソファの上で 服を着たまま

 激しく

「ぼけー」

 はっ い 今 私ッ!?

 え ええと ええと

 口を塞がれて

「あ――」

 はぅあっ

 お 落ち着くのよ 秋子ッ

 ばふん ばふん 枕に頭突きをして頭を冷やします

「はぁっ はぁっ」

「秋子さん 起きてますか」

「ぅきゃーっ!」

 突然 扉の向こうから声を掛けられ 悲鳴を上げる私

「ど どうしたんですか」

 ゆ ゆっ 祐一さんっ?

「い いいえ いいえ な 何でもないんです」

 はぅ はぅ

 祐一さん ノックぐらいして下さい

「な 何かご用ですか」

「いえ 秋子さんがお腹 空かせてないかと思って」

 まあ 祐一さん 優しいです

「ありがとうございます でも今はいいですよ」

「そうですか じゃあゆっくり休んで下さい」

「はい」

 扉の向こうから祐一さんの気配が遠くなりました

「ふう」

 ああ もう 私ったら

 落ち着くのよ秋子 はい深呼吸 すーは すーは

 そうですよ お話はお話 現実とは違いますよね

 あ でも 事実は小説より奇なり という言葉も

「………」

 ドキドキドキドキ

 ま まあ それはそれです

 ゴホン

 やっぱり退屈ですので もう少し読んじゃいましょう

 ・
 ・

「大丈夫ですか、秋子さん」
 布団に横になっている秋子の脇で、心配そうに顔を見つめながら訊ねる祐一。
「はい。もう熱も下がりましたから」
 風邪でほほを赤く火照らせながら、秋子は柔らかく微笑んだ。
「すいません、昨日の夜俺が無理矢理…」
 謝りかける祐一を秋子は優しく見つめ返し、
「いいんですよ。もう過ぎたことです」
「秋子さん」


「………」

 なんだか官能小説とは思えないような ほのぼのムードですね

 それにしても どうして狙いすましたかのように 風邪を引いているのでしょうか

 まあ いいでしょう

 ・
 ・

 祐一は布団の端を持ち上げ、ゆっくりと掛け布団を剥いだ。
「ああ…」
 寝乱れた襦袢の裾を恥ずかしげに整える秋子。
「秋子さん」
 祐一は秋子の手を取り、顔の脇にのけた。そのまま覆い被さり、唇を深く吸う。
「んぁっ、んんっ…。…いけません、祐一さん…風邪が、風邪が移ってしまいます…」
 胸元に差し込まれた祐一の指の愛撫に耐えながら、秋子は悩ましげに呟いた。祐一の指先が、秋子の乳首を軽く引っ掻く。
「ひぁっ…あっ、あ…」
 執拗に乳首に刺激を加えながら、祐一は秋子の耳元に呟いた。
「秋子さんの風邪なら、いくら移されてもいいです」
「あ、ああ…」
 うっとりと顔をほころばせる秋子。襦袢の襟元が開かれ、桃色に火照った秋子の柔肌が露わにされる。
「秋子さん…」
 豊満な乳房の谷間に顔を埋め、ねぶるように口と舌とで愛撫を加えていく祐一。
「んぁっ…、ああ、ああ〜」
 祐一の頭をかき抱き、大きく体を仰け反らせながら喘ぐ秋子。
「はぁっ、んはぁっ…、…ああ…」
 祐一の顔が徐々に秋子の下半身へとずらされ、秘部へと到達した。
「あっ、あっ!」
 秋子はビクリと身体をわななかせ、少女のように恥じ入った。祐一は秋子の汗ばんだ太ももに手を掛けて撫でながら、蜜壷の奥へと舌を侵入させた。
「ぅはぅっ! …あ、あっ!」
 じたばたと両手を無意味に動かし、快感に悶える秋子。すでに用を為していない襦袢が秋子の肢体にまとわりつく。
 祐一は女唇の縁をなぞるように舌を這わしながら、鼻先で秋子の陰核をぐっと押し込んだ。
「あっ、ひゃぁぁ〜〜!」
 掠れた嬌声を上げる秋子。溢れ出る蜜が、祐一の顔を濡らしていく。

「んっく、ぅあっ…! はっ、はぁんっ…!」
 秋子の肢体が艶めかしく蠢き、振り乱された髪の毛がほほに張り付いていた。
「…秋子さん」
 秘部から顔を離した祐一が、秋子の顔を見つめながら声を掛けた。
 絶え間なく続く快楽の波に飲み込まれ、秋子は涙さえ浮かべながら掠れた声で、
「…はぁ、はぁ…。…来て…祐一さん…」
 こくりとうなずき、祐一は秋子の脇腹に手を掛け、
「行きますよ」
 場所を合わせ、ゆっくりと蜜壷に分け入った。
「ぅああっ、あーっ!」
 秋子の身体が弓なりに反り返り、唇から嬌声が漏れ出る。
「…う…っ、熱い」
 風邪による発熱で熱くなった秋子の体内の粘膜が祐一を包み込み、煮えたぎるような蜜が絡み付いた。
「はぁっ、はぁ…! ああ…い、いつもと、違いますぅ…!」
 秋子は歓喜の予感に打ち震え、掠れた声で囁いた。
「…秋子さんっ」
 祐一は秋子の脇腹に手を添え直し、猛然と動き始めた。
「ぅあっ、あああっ! …はぁっ、…ああ、あっ!」
 弾かれたように上半身を仰け反らせ、あられもない悲鳴を上げる秋子。
「ぅあっ、ああああーっ! はっ、ふぁ…っ! …んっ、ぅあぁっ!」
 秋子のしなやかな両脚が祐一の腰に回され、絡み付いた。
「はぁっ、ぁはぁっ、はぁっ…、…うぅっ、ぅふぅ、ふぅ…ぅふぁっ!」
 秋子の悶えぶりに情欲を刺激された祐一は、秋子の身体に覆い被さり、激しく揺れ動く乳房に顔を埋めた。
「秋子さんッ!」
 秋子は祐一の頭を抱きかかえ、
「はっ、はあっ…! ああっ、祐一、祐一さん……っ!」
 自然に振り乱される腰の動きに抗えず、快感を追い求める秋子。
「はっ、はぁっ、はぁっ、…あっ、あっ、あっ」
 やがて絶頂の予感を感じ、秋子の肢体が小刻みに震え出す。
「あ、あ…! あっ」
 ヒッ、と息を飲み、秋子の唇から嬌声がほとばしった。

「あああああああああああああああああああ―――――――――――っっっっっっっっっっっっっ!」

 はぅ はぅ はぅ

 お 思わず 読み入ってしまいました

 そうですか 風邪の時は熱くなっているんですか そうじゃありません

「ああああああっ」

 お 落ち着くのよ秋子

 ふぅ はぁ ふぅ はぁ

 これはお話 フィクションです

 私と祐一さんには関係ありません

「…………」

 ドキドキドキドキ ああん どうしてドキドキするんですか

 はぅ はぅ

 そ それにしても こんなにあっさり身体を開くなんて

 もっと焦らさないと そうじゃありません

 私なら もっと こう あああん 違いますっ

「ふみぃ」

 ぱたっと突っ伏す私

 はふん なんだか疲れました

 興奮したせいで体も熱くなって

 あ あ ち 違う 違いますよ 一人で騒いで それで興奮しただけですよっ

 体の奥が熱くなったりとか 疼いたりとか 欲しくなったりとか この火照りを鎮めて欲しいとか 

 そんな そんなことは         ありません ええ ありませんとも

 ほ ほ 本当ですよっ

 はぅ はぅ

 ふう

 あ また祐一さんが来たらどうしましょうか

 べ 別に構いませんよね ええ

 普通にいつも通りの態度で 接すれば

 接する

 ぴったり

 祐一さんと

 しっぽり

「あああああああ――っ」

 そっ そんな ゆ ゆ 祐一さんと しっぽりだなんてっ

 はぁ はぁ はぁ

 ドキドキドキドキ

「ああーん」

 も もう寝ます 風邪を引いているんですから寝ないといけないんです

 がばっ

「…………………………………………」

 布団に潜り込むと 余計に胸のドキドキが耳につきます

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ

 はぁ はぁ はぁ

 小説の中では 祐一さんが部屋に来て

 布団をめくって

 服を脱がせて

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 私は何を考えているの

 布団を頭から被って もごもごと身悶える私

 トントン

 びくぅっ

 い 今のノックはまさか

 祐一さん

「……」

 布団を被ったまま ドキドキしていると

 スーと扉が開く音が

 ああああっ ま まさか まさかっ

 ギシ

 あ あっ 部屋に入ってきました

 ギシギシ

 ち 近付いてきます

 そ そんな 祐一さん まさか ほ 本当に

 だ だめです祐一さん

 風邪が移ります いえ そうじゃありません

 熱くなっていますから あああっ もう全然違います

 はぅ はぅぅ

 わ 私はどうしたら

 ギシ ああっ 足音がベッドの脇で止まりました

 ね 寝たふり 寝たふりですっ

 はっ ま まさか祐一さん 寝ている私を 無理矢理

 い いけませんよ それは あまりにも誠実さがありません

 小説のお話みたいに 心を通わせ合っていないと

 そうでないと私も 祐一さんを受け入れられませんから

 って 心が通い合っていたら受け入れるんですかッ!?

 受け入れる

 祐一さんを

 私の中に

 あああああああああああああっ

 はぁ はぁ はぁ はぁ

 ドキドキドキドキ

 そ それにしても まだでしょうか祐一さん

 ベッドの脇に足音が来てから ずいぶん経っていますけれど

 い いえ 違います 別に期待しているわけじゃありませんよっ

 はぅ はぅ

 あっ まさか いきなり布団を剥いだりしませんよね

 脚の方から めくったり

 下半身だけ布団から出して パジャマを脱がしちゃったり

 太ももをゆっくり撫でて

 それからショーツ越しに私の

 はふぅぅっ

 そ そんなことまでされたら 私 わたしぃぃ

 あああああああああ 違いますぅっ

 おっ 落ち着くのよ秋子っ

 はぁ はぁ はぁ はぁ

 もうだめ 耐えられません

 そうですね 3つ数えたら布団から起きましょう

 3

 2

 1

 0 今です

 スッ あっ 布団の上に手がっ

 はっ はぅぅ ついに決心したんですね祐一さん

 わ 私も覚悟を決めないと

 熱いですから いえ そうじゃなくて

 ゆさゆさと布団越しに身体が揺さぶられました

 あああっ きっ 来ますっ

「お母さん」

「はいっ!」

 …………………………………………………………………………………………………え オカアサン?

「あ お母さん 起きてたんだ」

 布団がめくられて

「晩ご飯 どうするのかなって思って 訊きに来たんだけど」

 ほぇっと微笑んでいる名雪

 え え こ これって どういう

 なに 何が起こっているの

 私が混乱していると

「わ お母さん 顔が真っ赤だよ」

 名雪のひんやりした手の平が 私のおでこに当てられました

「わっ すごい熱 大変 お医者さん呼ばないと」

 えっ

「ま 待って名雪 違うのよ これはっ」

 止める間もなく 部屋を飛び出していく名雪

 居間の方から声が

「祐一 祐一 お母さんが大変だよ」

「秋子さんがどうした」

「顔が真っ赤で すごい熱なんだよ」

「なんだって 意識はあるのか」

「よく分かんない」

「そうか よし救急車を呼ぼう」

「うんっ」

 え えええっ!? ちょ ちょっと待って下さいっ

「三丁目 十一番地 七号の水瀬です 救急車お願いします はい はい 急いで来て下さい」

 ひっ ひぇぇーっ! もう通報したんですかっ!? 早過ぎますっ

「あ あぅ あぅ あぅ」

 私がおろおろしていると 名雪と祐一さんが部屋に入ってきました

「お母さん 救急車を呼んだからね もう安心していいよ」

「あ あの そ そんな大袈裟な」

「だめですよ 今だって顔が真っ赤じゃないですか」

「いえ あの こ これは」

 えっちな小説を読んで興奮してしまっただけです

 なんて言えるわけがありません

「うー 遅いよー」

 時計を見ながら名雪が言いました

「落ち着け名雪 俺達が慌ててもしょうがない」

「うん それもそうだけど」

 ああっ 今 一番慌てているのは私ですよっ

 あああああっ ど どうすれば おろおろ おろおろ

「あれ お母さん この本なあに」

「え? ああッ」

 ひゃぁぁっ 枕の傍らに放っておいた例の本が 名雪に見付かってしまいました

「あ そ そ それはね」

 名雪は本のタイトルを見て

「情欲未亡人 皆瀬秋子って書いてあるね」

 はふんっ 声に出して読まないで下さいっ

「あ これってもしかして」

 ギグッ!

「自叙伝?」

 どてっ ズザザーッ 布団から転げ落ちて 床の上にヘッドスライディングをしてしまう私

「違いますッ そんなわけないでしょう」

「それもそうだね」

 ほぇっと微笑む名雪

 ああ もう

 そんな官能小説が自叙伝でしたら

 私は祐一さんとあんなことやこんなことや あまつさえそんなことをしていることになって

 ドキドキドキドキ

 はふぅ って呆けてどうするんですかっ

 とにかく全然違います

「………ごく」

 ああああああああッ 祐一さんがなんか真剣な顔付きで読んでいますっ

 だ だめです そんな本を読んでは いけません

 あ でも もしかしたらその本に触発された祐一さんが 私を意識して下さるかも

 そうして 夜這いに来てくれたり そうじゃありません

 ドキドキドキドキ

 ああ 胸がうずいて そうじゃありません

 はぅ はぅ

 ああ 頭がくらくらしてきました

 よろよろ ぽてり

「はふん」

「わ お母さんっ」

 ・
 ・

「ほう」

 白い天井を見上げて溜め息を吐きました

 ここは病院です 私の左腕には点滴の針が刺さっています

 お家で気絶した私はここに担ぎ込まれて 気が付いたらこうなっていました

 お医者様のお話では 風邪だけでなく疲労が溜まっていたそうで 一日休んでいくことになったのです

「はう」

 付き添っていてくれた名雪と祐一さんも帰ってしまって ひとりぼっちです

 やっぱりヒマでしょうがありません

 つい先程ぐっすり眠ってしまって まったく眠気もありませんし

 あ そうです 名雪と祐一さんが『退屈でしょうから』って 何か持ってきてくれていたんです

 何でしょうか ごそごそ

 本みたいです

『皆瀬秋子シリーズ2 情欲女教師』

『皆瀬秋子シリーズ3 情欲家政婦』

『皆瀬秋子シリーズ4 情欲秘書』

 ………ピシッ 頭の中で何かが壊れる音がしました

「はふん」

 ぽてっ 気が遠くなり 失神しました


                                愛のコント劇場『お茶目な秋子さん 風邪引き編』 おしまい

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 星牙でございます。
マキ「マネージャーの小原マキです」

 加速度的に上がっていったえっちぃボルテージが、遂に一処(ひとところ)に集まって結晶化しました。『皆瀬秋子情欲シリーズ』誕生です。
マキ「最悪じゃ」
 むい。因みに『皆瀬秋子情欲シリーズ』は残念ながら実在しません。あしからず。
マキ「当たり前じゃ」
 でも、民明書房刊あたりにならあるかも。
マキ「ないっ」

 お読みいただきありがとうございました。
マキ「それでは、ご機嫌よう」


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