愛の劇場『鶴の恩返し』
注:この話はチョイといかがわしい内容なので、14歳六ヶ月未満(←半端)の方は閲覧はご遠慮下さい。
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〈第一幕〉
昔むかし、ある処に祐一のいう名の漁師がいました。祐一は毎日舟に乗って海に出ていき、魚を捕って生活を、
祐一「違うだろ!!」
もとい、猟師がいました。山に入り、銃で獲物をとって生活をしていました。
ある日のこと。獲物が見つからず、祐一は山奥まで足を踏み入れていました。
祐一「おつう役は誰なんだろうな。…なんかイヤな予感がするぞ」
祐一がぶつぶつ言いながら歩いていると、藪の向こうで何か物音がしました。
祐一「む」
猟銃を油断なく構え、祐一はそっと藪をかき分けてみました。
秋子「お待ちしていました、祐一さん」
こける祐一。藪の中には、一羽の美しい鶴が横たわっていたのです。
祐一は身体を起こし、
祐一「どうして秋子さんなんですかっ!?」
秋子「いいじゃありませんか。それとも、私がこの役ではご不満ですか?」
拗ねたように、上目遣いで祐一を見上げる鶴。
祐一「えっ。い、いえ、そんなことはないですけど」
大人の表情に翻弄される祐一。
秋子「……。いいんです、無理をしなくても。そうですよね、最初から配役に無理があったんですよね…」
と、突然ハラハラと涙をこぼす鶴。
祐一「ああっ!? な、泣かないで下さい!」
秋子「…もういいんです。私はこのまま土に還ります」
鶴はいじけたように身を丸くしてしまいました。
祐一「何を言ってるんですか! 秋子さんでいいです、秋子さんじゃないとだめです!」
鶴は嬉しそうに顔を上げ、
秋子「…うふふ。じゃあ、続けましょう」
祐一「はあ」
祐一は横たわっている鶴を見ました。
祐一「………」
鶴は脚を罠に挟まれ、動けないようでした。罠から逃れようとして暴れたのか、不自然に露出度が高くなっています。
祐一「……ゴク」
あらわにされた肉付きのよい太ももを眼にし、ついつい生唾を飲み込む祐一。
秋子「うふふ」
鶴は軽く身じろぎし、肩をはだけさせました。胸元が危険な感じになりました。っつーか、見えてます(←何が?)。
祐一「おおおおおっ」
祐一は身を乗り出し、鶴に近付きました。
秋子「あらあら」
鶴は怯えもせず、えん然と微笑んでいます。
祐一「………」
ボーと鶴を見つめる祐一。
秋子「うふふ、祐一さん」
祐一「へぃ?」
鶴の艶姿に気持ちを奪われていた祐一は、間抜けな返事をしました。
秋子「お話を進めましょう」
祐一「あ…。ああ、そ、そうですね」
我に返り、よだれを拭う祐一。
祐一「ええっと…。罠を外すんですね」
秋子「ええ。さ、どうぞ」
にゅっと美しい脚を突き出す鶴。
祐一「うっ」
柔らかそうなふくらはぎを目の前にし、祐一は動きを止めました。
祐一「さ、触ってもいいんですか?」
秋子「はい」
祐一「じゃあ…し、失礼します」
祐一は頭を下げ、恐る恐る手を伸ばすと、鶴の脚に触れました。ふにっと柔らかい感触が指先に伝わりました。
祐一「…う」
鶴の脚はふんわりと柔らかく温かで、すべすべしていました。祐一がそろそろと指を動かすと、
秋子「…あん」
鶴は色っぽい溜め息を吐き、ピクリと身体を震わせました。
祐一「…ゴク」
祐一がそのまま指を動かすと、鶴はくすぐったそうに身体を揺すりました。
秋子「あっ、あん…。…ふふふ」
祐一「……」
しばらく指を動かしてから、祐一は手の平全体を鶴の脚に当てました。
秋子「あっ。……うふふ。もう、祐一さんたら…」
鶴も嫌がっていない様子だったので、祐一は今度は手の平全体を鶴の脚に這わせ始めました。柔らかい感触が手の平から伝わってきます。
秋子「んっ、んふっ…。ふふっ…あっ、あぁん」
鶴は先程よりも大きく身体を揺すり、吐く息も荒くなってきました。
祐一「…はぁ、はぁ」
祐一は夢中になって手を動かし、じょじょに鶴の脚の根元の方に手を移動させていきます。祐一の指が鶴の太ももに触れた瞬間、
秋子「アッ! …はぁ…」
鶴はかん高い声を上げビクンと身体を跳ねさせると、うっとりと大きく息を吐きました。
名雪(ちょっと、ねえ! これって、いつまで続くの!?)
栞 (だ、台本ではとっくに終わっていて、もう次の幕に入っているはずなんですけれど…)
真琴(ぜんぜん終わってないよぅ)
舞 (…あ。祐一が、秋子さんに覆い被さった)
秋子「うふふ…」
鶴は覆い被さられても抵抗しません。
祐一「あ、秋子さん…すいませんっ」
秋子「いいんです。お芝居ですよ、お芝居…」
自分から両腕を祐一の首に回す鶴。
祐一「…あ、秋子さんっ!」
祐一は鶴の胸に手を当てました。
秋子「あんっ」
豊かな乳房の感触が、布越しに感じられます。祐一がゆっくりと指を動かすと、それに合わせて布の下で鶴の乳房が形を変えているのが分かりました。
秋子「はぁ、はぁっ…ああ、こうしてもらうのも、ずいぶん久しぶりです…」
祐一「ううっ」
祐一は低く呻くと、夢中になって揉みしだき始めました。
秋子「あっ、あんっ! はっ、ふぅぅっ」
祐一が指を動かすたびに、鶴はのどを仰け反らせ身体を震わせました。
真琴(あぅー、ぜんぜん終わる様子がないよぉ)
栞 (ど、どうしましょうか)
名雪(うー。ずるいよお母さん)
舞 (…なるようにしかならない)
祐一「…秋子さん」
秋子「…はぁ…。ええ…お願いします」
祐一は頷くと、鶴の襟元に手を掛け、ゆっくりと開きました。
名雪(これ以上はだめだよ!)
バチン。照明が落とされ、まっ暗になりました。
・
・
祐一「ふう〜」
祐一はぐったりと地面にうつ伏せになっています。
秋子「はぁ…」
鶴は祐一の脇で身体を丸くしています。
秋子「うふふ…」
鶴は目元を潤ませ、熱い吐息をはきました。物憂げに身繕いをしています。
祐一「あー。ええと…罠を外すんでしたね」
重い腰を上げ、ようやくするべきことを思いだした祐一。
秋子「そうですね」
祐一「じゃあ、動かないで下さい」
銃で罠の歯をこじ開けました。
秋子「ありがとうございました。色々と…」
意味深なことを言いながら、ふらふらと立ち上がる鶴。なぜか腰が揺れています。
祐一「どういたしまして」
地面に腰を下ろしたまま答える祐一。
秋子「それでは、また後で…」
鶴は頭を下げると、ふらふらと山奥に消えていきました。
祐一「はぁ。プロローグのはずの第一幕が異常に長かったな」
祐一も山を下り、家路に就きました。
〈第二幕〉
祐一は重い身体を引きずり、家に辿り着きました。
祐一「はぁ、はぁ…」
やっとの思いで扉を開けると、
秋子「お帰りなさいませ」
こける祐一。
祐一は身体を起こして、
祐一「どうして秋子さんがいるんですかっ」
秋子「私は鶴ですから、飛んできたんです」
祐一「そうじゃなくて、まだそこまで話が進んでいません!」
秋子「いいじゃありませんか」
祐一「よくないでしょう。とにかく、もう少し待っていてください」
秋子「…ぶぅ。分かりました」
しばらく言い争ってから、ようやく引っ込みました。
祐一「はぁ」
祐一は疲れていたので、さっさと寝ることにしました。
祐一「よいせっと」
祐一が布団に横になるかならないかのうちに、扉が叩かれました。
祐一「早いよ…」
重い身体を起こし、扉に向かう祐一。
祐一「はい」
秋子「夜分遅くにすみません。旅の者ですが、山の中で陽が落ちて難儀しています。どうか一晩泊めていただけないでしょうか」
祐一が扉を開けると、山の中で助けた鶴が立っていました。
祐一「そーじゃねぇだろ!」
だって同じ格好だもん。
祐一「とにかく言い直せ!」
美しい女性が立っていました。
祐一「はぁ」
女性はお辞儀をして、
秋子「土間の隅で構いませんから、どうか休ませて下さい」
祐一「いいですよ。どうぞ」
秋子「相済みません」
女性は深々と頭を下げ、小屋の中に入りました。
祐一「旅荷物は、そっちの納戸に置いておいて下さい」
秋子「はい」
祐一が茶の用意をし、二人はいろりを挟んで向かい合いました。
秋子「申し遅れました。私、おつうと申します」
祐一「秋子じゃないんですか」
秋子「一応、役名を尊重しました」
しばらく話をし、夜も更けてきました。
秋子「祐一さん」
祐一「はい」
秋子「今宵、泊めていただくお礼をしたいのですが、あいにく持ち合わせがありません」
祐一「別にいいですよ」
秋子「いえ、それでは私の気が済みません。ですから…」
おつうはスッと立ち上がり、
秋子「今夜、夜の共をさせて下さいませ」
しゅるしゅると旅帯をほどくおつう。
祐一「おあっ!?」
あっと言う間に細帯姿になったおつうは、祐一の胸に飛び込みました。
祐一「ちょ、ちょっと待って下さい! 展開が早過ぎ…おおおっ!」
重く柔らかな塊を押し付けられ、言葉が途切れる祐一。
秋子「うふふふ、いいじゃありませんか。一回も二回も同じですよ」
祐一「そういう問題じゃないですっ」
擦り寄ってくるおつうをようやく引き剥がしました。
祐一「はぁ、はぁ。お、お礼なんかいりませんから、もう休んで下さい」
座り込んで祐一を見つめていたおつうは、突然ハラハラと涙をこぼしました。
祐一「うわっ、またですか!」
秋子「………ひどい人…。…女に恥をかかせて…」
グサリと突き刺さる言葉。
秋子「昼間、あんなに激しく抱き締めてくれたのは、遊びだったのですか…?」
祐一「ちっ、違います!」
秋子「グスッ…、分かりました。こんな、朽ち木のような身体は二度も抱けないと、そうおっしゃりたいんですね」
祐一「なんでそうなるんですかぁぁっ!」
秋子「いいんです。私が勝手にしたことですから。…うっうぅ」
顔を伏せ、むせび泣くおつう。
祐一「違います、そうじゃありません!」
秋子「……どうせ、どうせ私なんか…」
祐一「秋子さんは魅力的ですよ、本当に! 若くて、綺麗で…」
秋子「………」
おつうは顔を上げ、祐一を見つめました。
秋子「そんなに口説かれてしまっては、仕方がありませんね」
祐一「へ?」
おつうは祐一の腕を掴むと、ぐいと引っ張りました。
祐一「うわっ」
たまらずおつうの上に倒れ込む祐一。おつうは祐一を胸にかき抱き、
秋子「今夜は、眠らせません」
祐一「えっ、ちょっと…」
秋子「照明を消して下さい」
ブチ。まっ暗になりました。
ごそごそ。
祐一「ちょっと、あ、秋子さん…」
秋子「はぁ、はぁ…うふん」
チュバ、チュバ。
祐一「うぅおおおっ!」
秋子「はぁ、はぁ…祐一さんがいけないんです、私に女を思い出させたあなたが…あぁっ」
祐一「な、何を言ってるんですか秋子さ…おぉっ!」
・
・
朝です。祐一とおつうは、布団の中でくっついています。
秋子「はふぅ…」
おつうは晴れ晴れとした表情で、祐一の胸に頬を寄せています。
祐一「………」
祐一は隈の浮いた顔で天井を見上げています。
秋子「祐一さん」
祐一「はぃ」
かすれた声で返事をする祐一。
秋子「私をここに置いて下さい」
祐一「はぃ」
虚ろに答える祐一。
秋子「それじゃあ…」
と、おつうはもぞもぞと身体を動かし、祐一の上に乗りました。
祐一「うっ…。もうだめです、無理ですよっ」
秋子「うふふ、何をおっしゃっているんですか。祐一さんは若いんですから…」
布団の中で、指を動かすおつう。
祐一「うぅっ!」
祐一が呻くと、おつうは祐一の耳に口を寄せ、
秋子「ほら、大丈夫じゃありませんか…うふふ」
おつうは少し身体の位置を動かすと、ゆっくり腰を揺すり始めました。
祐一「うぅぅっ」
秋子「はぁ…幸せ」
おつうはうっとりと呟き、動きを早めました。
〈第三幕〉
こうして、祐一はおつうと共に暮らすことになりました。
祐一は山に入り獲物をとり、おつうは家で畑仕事をして野菜や果物を作り、二人はそれなりに豊かに暮らしていきました。
夜は夜で、連日連夜、似たよーなことをしていました。
祐一「だめですよ、秋子さ…じゃなかった、おつうさん」
秋子「いいじゃありませんか。新婚生活はこういうものですよ」
祐一「そ、そうなんですか?」
秋子「ええ。ですから…」
ごそごそ。
祐一「あ、ちょっと…おぉっ。…あっ、秋子さんっ」
秋子「うふふ…あっ、はぁっ…祐一さん…」
・
・
おつうは毎朝早くから起きて、家事を丁寧にこなしました。
秋子「らららら、ららら〜♪ ああ、このお話、いつまでも続いてくれないかしら」
無茶を言わないで下さい。
祐一「…おはよーございます」
隈の浮いた顔で布団から出てくる祐一。
秋子「おはようございます」
祐一は窪んだ目で太陽を見上げ、
祐一「…太陽が黄色いを通り越して、白いんですけど。どうして秋子さ…じゃない、おつうさんは平気なんですか」
秋子「あら、私も疲れていますよ」
祐一「とてもそうは見えませんけど」
秋子「じゃあ、今晩は責任を持って、もっと私を疲れさせて下さいね」
嬉しそうに微笑むおつう。
祐一「………」
その夜。
秋子「うふふ…ゆ・う・い・ち・さん」
祐一「うぅ…もう、無理です…」
秋子「もう…。仕方がありませんね…」
祐一「あっ、ちょっと秋子さん、本当にもう…」
ごそごそ。
祐一「うぅあっ、おぉおっ!」
秋子「…ほら、まだ大丈夫じゃありませんか…うふふふふふ」
祐一「ヒィィー」
・
・
そんなある日。
秋子「祐一さん」
おつうはぐったりと布団の中に沈み込んでいる祐一を揺り起こしました。
祐一「……はぃ」
祐一は顔を上げました。祐一の顔に浮かぶ隈がひどくなっています。
祐一「ああ…そうか、そろそろはたを織るんですね」
秋子「いえ。子どもが出来ました」
硬直する祐一。
秋子「毎晩、そのままでしていましたから、当たり前ですね」
祐一「……」
硬直続行中の祐一。
秋子「子どもの名前は、男の子なら秋雄、女の子なら祐菜というのはどうでしょうか。あっ、双子ということもありますね」
祐一「………」
ようやく硬直が解けた祐一は、
祐一「…ま、マジですか? っつーか、それじゃ『鶴の恩返し』じゃないんじゃ…」
秋子「冗談です」
こける祐一。
秋子「実は、お願いがあります」
祐一「はぁ。はた織り機ですか」
秋子「いえ。大きな鍋を買ってきていただけないでしょうか」
祐一「鍋? なんで鍋…ハッ!」
イヤな予感がしました。
秋子「ジャムを作ります」
祐一「やっぱり…」
イヤな予感が的中し、布団に突っ伏す祐一。
とりあえず、祐一は街に行き、言われた通りに大きな鍋を幾つかと、ジャムの材料(らしき物)を買って帰りました。
おつうは納戸を片付けると、鍋とジャムの材料(らしき物)を持って入りました。そして、扉から顔を出し、
秋子「これからジャムを作りますけれど、私がこの部屋にいる間は決して部屋の中を覗かないで下さいね」
祐一「はぁ」
気のない返事をする祐一。
秋子「…覗かないで下さいね」
気迫を背負い、凄むおつう。
祐一「はっ、はいっ。誓います、覗きませんっ」
秋子「では」
おつうは扉を閉めました。
祐一「………」
祐一はおつうが怖かったので、素直に納戸から離れました。疲れていたので横になり、
祐一「原典でおつうはなんで鶴の姿ではたを織ってたんだろうな。羽だけ抜いて、人間の姿で織ってりゃよかったのに…」
ぶつぶつ言いながら、祐一は眠りに就きました。
祐一が眼を覚ますと、おつうが晩ご飯の用意をしていました。
祐一「おつうさん、ジャムは?」
秋子「ええ、一晩煮込めば完成です。祐一さん、明日街に行って、ジャムを売ってきて下さい」
祐一「はあ」
祐一は街で買ってきたジャムの材料(らしき物)を思い出し、この話題に触れないことにしました。
秋子「祐一さんも今日はお疲れでしょう」
祐一「ええ、まあ」
秋子「ですから、今日は三回でいいですよ」
祐一「え゛!?」
ガシィ! 腕を掴まれる祐一。そのまま布団に引きずり込まれました。
祐一「ちょ、ちょっと、秋子さんっ」
秋子「回数が少ない分、激しくお願いしますね♪」
祐一「ヒィー」
・
・
夜が明けました。祐一はジャムの小瓶を風呂敷に包み、ふらふらと街に向かいました。
秋子「行ってらっしゃいませ」
祐一「…はい。行ってきます」
街に着き、手頃な広さの場所を見付けた祐一は、ジャムの小瓶を並べました。
祐一「………」
小瓶を並べるときに眼に入った、『ハードスィートジャム』『お米ジャム』『ゲルルンジャム』などとゆーラベルは無視しました。
むしろを敷き、祐一がぼんやりと道行く人々を見ていると、お客さんが来ました。
名雪「いちごジャム、あるだけ全部下さい」
いきなり嫌がらせのよーなお客さんでした。
祐一「…いいけどな、別に」
栞 「バニラジャムはありますか」
祐一「ああ、秋子さんに不可能はない」
栞 「嬉しいです」
真琴「肉まんジャムちょうだい」
祐一「さすがにないな」
真琴「あぅー」
美汐「その抹茶ジャムをいただけませんか」
祐一「………。はい、毎度」
美汐「相沢さん、今なにか考えませんでしたか」
祐一「いや、何も」
舞 「…牛丼ジャム」
祐一「ないって。っつーか、それは牛肉の佃煮じゃないのか」
舞 「…残念」
瑞佳「あの、この牛乳ジャムって本当に牛乳で作ってあるんですか」
祐一「ここのジャムはメロンパンとかうぐいすパンみたいなバッタモンとは違います」
瑞佳「じゃあ、全部下さい」
茜 「…そちらのハードスィートジャム、試食してよろしいですか」
祐一「どうぞ」
ぱく。
茜 「…はぁっ…、私の求めていた味…。下さい、全部」
祐一「………」
観鈴「ええと、ゲルルンジャム下さいっ」
祐一「はいはい」
晴子「あほ、もっと普通のにしいっ」
観鈴「ええっ。でも…」
晴子「あかん」
観鈴「が、がぉ…」
晴子「……あーもう、しゃあないっ。好きなの買い」
観鈴「わぁい」
美凪「…お米ジャム、いただけませんか」
祐一「はい(これ、餅じゃないのか…?)」
みちる「これって、どうやって食べるの?」
美凪「…カレーに混ぜたり、ハンバーグに塗ったりして食べるの」
みちる「へえ、美凪もの知りっ」
美凪「…えへん」
祐一「……(米ジャムって、一般にあるのか…?)」
佳乃「あのっ、こ、これ…」
祐一「? ポテトジャムがどうかしましたか」
佳乃「…や、やっぱり…!」
祐一「?」
と、突然少女は小瓶を胸に抱き締め、
佳乃「ポテトッ! ポテト、こんな姿に…!」
聖 「違うぞ、それは」
ポテト「ぴこ」
なんだか別時空から来たお客さんまで現れ、ジャムはほとんど売れました。
祐一は新しいジャムの材料を買い込み、家に帰りました。
祐一「ただいま帰りました」
おつうは土間で晩ご飯の用意をしていました。
秋子「お帰りなさいませ、旦那様」
こける祐一。
祐一は身体を起こし、
祐一「…秋子さ、じゃない、おつうさん。その旦那様っつーのはなんなんですか」
秋子「若い女の子がたくさんいらしていたみたいですから、私も何か個性を主張しておいた方がいいかなと思いまして」
頬に手を当て、可愛く恥じらうおつう。祐一はおつうのその仕草と健気な心意気に感動しました。
祐一「いいんです。秋子さ…じゃない、おつうさんはそのままで十分魅力的です」
秋子「まあ、嬉しいです」
その晩、祐一はその言葉を証明するために、いつもより激しく求められました。
秋子「ふぅ、ふぅ…祐一さぁん」
祐一「うぅ…、もう無理です…」
秋子「ひどい…魅力的だっておっしゃったのに…。あれは嘘だったんですか?」
祐一「いえ、そういうわけじゃ…」
秋子「ほら旦那様、がんばって…んんっ」
もそもそ。
祐一「うっ! …あ、秋子さんっ」
秋子「あぁん」
・
・
〈第四幕〉
それからというもの、祐一は毎日おつうの作ったジャムを街に持っていきました。お得意さんも出来て、ジャムの売れ行きも良くなり、祐一はお金持ちになりました。
そんなある日のこと、祐一君の前に小さな女の子が現れました。
あゆ「ボク小さくないよっ!」
どこがですか。
あゆ「うっ、うぐ…。み、みちるちゃんよりかは…」
小学生と張り合ってどーするんですか。
あゆ「うぐぅ」
祐一「あゆ、さっさと話を進めろ」
あゆ「祐一君は黙ってて! 今ボクはボクの存在意義を賭けて戦っているんだよっ」
ぺち。
あゆ「うぐぅ、祐一君がはたいた…」
祐一「営業妨害しに来たのか、お前は」
あゆ「違うよぅ〜。…ええっと、あんこジャム下さい」
祐一「はいはい」
真っ黒いジャム(?)が詰まった小瓶を渡す祐一。
祐一「20銭になります」
あゆ「うんっ」
ごそごそと懐を探る女の子。
あゆ「あれっ…」
慌てた様子で懐や袂を探っています。
あゆ「あれれ…変だな、変だなぁ」
あゆ「………」
祐一「どうした」
女の子は上目遣いで祐一を見つめると、
あゆ「…ごっ、ごめんなさいっ」
ダッと走り出しました。
祐一「あっ、食い逃げ…いや、これは窃盗か!?」
祐一は残っていた小瓶を風呂敷に包み、慌てて女の子の後を追いました。
祐一「待てー」
あゆ「うぐぅ〜」
女の子はちょこまかと走り回り、なかなか捕まえることが出来ません。町外れに近付き、ようやく手が届く距離になりました。
祐一(よしっ、捕まえられる)
女の子の襟に指が引っ掛かった瞬間、
あゆ「あっ」
女の子はつまずき、転びました。
祐一「うわっ」
祐一は倒れた女の子の上に覆い被さるように倒れ込みました。
あゆ「うぎゅぅっ」
祐一の下で、小さく呻く女の子。
祐一「あ…。わ、悪い」
祐一が立ち上がると、女の子は目を回していました。
あゆ「うぐぅ…」
祐一「なんてことだ。胸もお尻も、潰れてこんなに真っ平らになっちまって…」
あゆ「…違う〜」
祐一が女の子を介抱しようとしていると、
名雪「…見たよ、祐一」
祐一「え?」
振り向くと、そこにはお得意さん達が立っていました。
栞 「…祐一さんが、祐一さんがそんな人だったなんて…」
ふるふると震えながら言う栞。
祐一「何の話だ」
真琴「しらばっくれないでよぅ。女の子を追いかけ回した挙げ句、人気のないところで地面に押し倒す! 完全に、…えっと、ス…ストー…」
舞 「…ストーカー」
真琴「そう、それよっ! 祐一、ついに本性を現したわねっ!」
祐一「なんだそりゃ! 違う、俺はただジャムを持って行かれたから、その代金を…」
名雪「身体で払わそうとしたんだね。祐一のケダモノッ!」
祐一「ちっがーう!」
栞 「どうして…どうしてあゆさんなんですかっ。わ、私だって、こんなに胸だってお尻だって小さいのに…、どうしてあゆさんなんですかっ! 祐一さん、嫌いですーっ!」
祐一「栞、その件に関しては後で話し合おう」
舞 「…女の敵」
祐一「待て舞、剣は仕舞ってくれ」
あゆ「…うぐ」
と、女の子が眼を開けました。
祐一「おっ、眼を覚ましたか。俺の無実を証明してくれ」
あゆ「……」
女の子はぼんやりとしてから、口を開きました。
あゆ「…ひどい…。ボク、初めてだったのに(←初犯という意味らしい)、あんなに…うぐっ」
祐一「ぐわぁぁぁっ」
女の子は黙って涙を流しています。
名雪「ひどいよ祐一。そんな小さな女の子を、無理矢理…」
真琴「秋子ママに飽きたから、小さい女の子を手込めにしようとしたのねっ」
あゆ「うぐぅ。二人とも、そんなに小さい小さい言わないで…」
栞 「祐一さん、私に言ってくれれば、こんなことにはならなかったんです。…でも、もう遅いんですね」
舞 「…祐一、覚悟して」
祐一「待てみんな、話を聞いてくれ」
後ずさりしながら、弁解を試みる祐一。
名雪「お母さんと毎晩毎晩、えっちえっちえっちえっちばっかりして…許せないよっ」
バキ!
栞 「そんなに大っきな胸がいいんですかっ。おっぱい星人なんて人類の敵です! 侵略者です、インベーダーです!」
ボガッ!
真琴「あぅーっ、どうせ真琴にはセックスアピールが欠落してるわよぅっ!」
ガツッ!
舞 「…どうせ私は愛想が悪い」
ズバッ!
祐一「うっ、ぐぁ――っ!」
弁明の余地なく、祐一は袋叩きに遭いました。
〈第五幕〉
陽が落ちて、あたりはまっ暗です。祐一はぼろぼろの身体を引きずり、家に向かっていました。
祐一「はぁ、はぁ…。クッ、四人ともまったく容赦がなかったな…」
重い身体で何とか家まで辿り着き、扉を開けました。小屋の中はまっ暗です。
祐一「ただいま」
いつもなら『お帰りなさいませ』と言って出てきてくれるおつうの姿がありません。
祐一「?」
祐一が目を凝らしてみてみると、
祐一「うわっ!」
座敷の奥に、おつうが壁を向き正座していました。
秋子「……」
祐一「あ、あのー…。た、ただいま帰りました」
秋子「…おかえりなさいませ」
重い声で答えるおつう。
祐一「………」
秋子「……祐一さん」
祐一「はっ、はいぃっ!?」
おつうは背を向けたまま、
秋子「……こんなに遅くまで、どこで何をしていらしたのですか」
祐一「えっ…。ええと、あらぬ疑いを掛けられて、袋叩きに」
正直に答える祐一。
秋子「……どこかの色宿にでも寄っていらしたのではないですか」
祐一「ええ!? ちっ、違いますよ!」
秋子「……よその若く瑞々しい女の子達と、愉しんでいたのではないですか」
事実はむしろ真逆ですが。
祐一「違います! 俺は不倫する甲斐性も度胸もありません! 信じて下さい!」
かなり怯えている祐一。
秋子「……」
おつうはスッと立ち上がり、
秋子「…分かりました。お夕飯の用意をしますから、少々お待ち下さい」
祐一「はぁ」
祐一は行燈を灯し、座って待ちました。
祐一「…この後、一体どうなるんだ…」
展開が読めず、恐怖する祐一。
土間で晩ご飯の準備をしていたおつうが、何かを思いだしたように、
秋子「あっ。隠し味に、アレを入れましょうか」
納戸に入っていくおつう。
祐一「………」
猛烈にイヤな予感がし始めました。納戸の方をうかがうと、
秋子「ほらっ、大人しくして」
? 「ピギャー、ピギャー」
秋子「えいっ」
ベリベリベリィッ。
? 「ピギーッ、ピギィーッ!」
ジュゥゥー。
秋子「あらあら、酸は吐かないで」
祐一「………」
やばすぎる会話(?)が聞こえました。
祐一「……ううっ」
ガラリ。祐一は恐怖に耐えきれず、ついに納戸の扉を開けてしまいました。
秋子「あっ」
祐一「!!!!!!!」
そこには、
……ビーガガガ、バリバリバリバリ…
【ただいま電波の受信状況が悪くなっております。少々お待ち下さい】
秋子「…とうとう、ばれてしまいましたね…」
祐一「あ、ああ…。おつうさん、あなたが鶴だったなんて…」
いったい納戸の中に何があったのか、どういう展開があってこうなったのかまったく不明です。
秋子「……そうです。私は、あなたに助けていただいた鶴です。あなたの温もりが忘れられなくて…じゃなくて、あなたにご恩返しをしたくて、人の姿を借りてここに参りました」
祐一「今、なんだかやばいことを口走ったよーな気がしますけど」
秋子「気のせいです」
おつうは哀しげに曇った瞳を伏せ、
秋子「ばれてしまった以上、もうここには居られません」
祐一「なんでですか」
秋子「えっ…」
きょとんとするおつう。
秋子「…そういえば、どうしてでしょうね。…ばれてしまったら、人の姿でいられなくなるのではないでしょうか」
祐一「人魚姫みたいに、山の神様とかに頼んで人の姿になったんですか」
秋子「いいえ、自力です」
それはそれですごいです。
祐一「って言うか、鶴の時も人の時も、同じ格好だったじゃないですか」
秋子「そうですね」
顔を見合わせる二人。
祐一「別に帰らなくていいんじゃないですか」
秋子「え…。で、でも…私は鶴ですよ」
祐一「俺は博愛主義ですから気にしません」
秋子「……私、鶴ですから子どもを産めません」
祐一「子どもが欲しくなったら、養子でも取りましょう」
おつうは潤んだ瞳で祐一を見つめています。
秋子「………いいんですか? 私でも…」
祐一「最初にも言いましたけど、俺はおつうさんじゃないとだめなんです」
秋子「祐一さんっ」
祐一「おつうさんっ」
抱き合い、布団になだれ込む二人。
・
・
秋子「うふふ…。祐一さん、昼間、本当は何をなさっていたんですか…」
祐一の胸に唇を這わせながら囁くおつう。
祐一「ううっ…だ、だから、ひどい目に…」
秋子「…何でもいいですけどね。もう私以外の女の子が目に入らないようにしてあげますから…」
祐一「ひぃ――」
こうして、おつうと祐一は、いつまでも幸せに暮らしました。
愛の劇場『鶴の恩返し』 おしまい
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愛の楽屋
秋子「お疲れ様でした♪」
名雪「…お母さん、本当に嬉しそうだね」
秋子「そうでもありませんよ。残念で仕方がありません。いつまでもこのお話が続いてくれればいいと思っていますから」
栞 「………。あの、お話の中で、何度も何度もあった、祐一さんとの、ら、ラブシーンは…」
秋子「うふふ、もちろんお芝居ですよ」
真琴「本当?」
秋子「ええ、本当よ真琴。快楽に夢中になるほど若くはありませんから」
一同「…ホッ」
秋子(…没頭し始めてしまうと、年齢なんか関係なく、本気になってしまうものですけれど…)
名雪「えっ…今なんて」
秋子「うふふ。なんでもありませんよ」
名雪「そう言えば、その祐一はどこ?」
秋子「うふふ。祐一さんはものすごーくお疲れになって、もうお帰りになりました」
栞 「そうですか。訊きたいこともあったんですけれど」
秋子「訊きたいことって何ですか、栞ちゃん」
栞 「い、いえ…。その…あ、秋子叔母様とのラブシーンの時、どうしていたのかなーって…」
秋子「あ、それでしたら、私が代わりにお答えできますよ」
栞 「え?」
秋子「全部、中で出していました」
一同「……。えええぇぇぇっっっ!!!???」
秋子「あ、時間ですね。それでは」 どひゅん。
名雪「あああっ、お母さん! 待って、中って…?」
栞 「も、もう見えませんっ」
真琴「…中って、何?」
舞 「……」
愛の楽屋 おしまい
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星牙でございます。
マキ「マネージャーの小原マキです」
秋子さんの暴走振りに拍車が掛かってきてますな。
マキ「だから、そなたが描いておるんじゃろーが」
うい。
『名雪女』のときもそうでしたが、最後が原典と変えてあるのは仕様です。好きな人と一緒にいられないと言うのは、この世の最も辛い不幸のうちの一つだからね。
お読みいただきありがとうございました。
マキ「それでは、ご機嫌よう」
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